酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「恋するソマリア」高野秀行

 アフリカの角(つの)・ソマリア。
 世界最後の秘境にしてイスラム過激派や海賊が跋扈する超無法地帯。米軍もビビるブラックホーク・ダウン。
 人呼んで「リアル北斗の拳」。
 しかし、北部には砂漠に咲く一輪の花の如き平和な独立国家があった。
 平和裏に武装解除が成功し、民主的政府が樹立されている「ソマリランド」である。
 建国約20年、ソマリランドに紛争は起きていない。隣国ジブチとナイロビではビザも取得できる。
 にもかかわらず、世界中のどの国も、ソマリランドを承認してない。
 ソマリ世界は現代における数少ない秘境であり、秘境であるがゆえの誤解が生まれているのだ。
 著者が初めてソマリの地を踏んだ2009年6月から、約3年。
 ソマリアに恋した男は、引き寄せられるように、再びソマリアを目指す。
 大好評の前作「謎の独立国家ソマリランド」の待望の続編。

 簡単に国の成り立ちをおさらいをしておきますと、
 1960年に北部がイギリスから、南部がイタリアから独立して合併し、ソマリア共和国が誕生しました。
 人口の95%はソマリ人です。人口は1千万あまり。
 しかしソマリアが国の体をなしていた1991年までで、独裁政権が倒れてからは無数の武装勢力や自称国家が跋扈し、ソマリアは20年以上無政府状態でした。一度アメリカが介入しようとしましたが、撤退しました。
 あとはもう、まさにリアル北斗の拳状態、アンタッチャブルな土地と化しました。
 その中に独自で内戦を終結させ、複数政党制による民主主義を達成したのが、ソマリア北部「ソマリランド」です。
 そんな国がホントにあるのか? と半信半疑で入国した著者のレポートが前作なわけです。
 謎の国家は実在しました。そしてプントランドや戦国都市モガディショへも潜入することができました。
 ソマリアは現在、この平和なソマリランドと東北部の海賊国家プントランド、イスラム過激派アル・シャバーブと暫定政府軍の戦闘が続く南部ソマリアの3つに分かれています。

 ソマリアとの人間関係も引き継いでいますから、なるだけ前作を読んでおいたほうがいいでしょう。
 モガディショの姫・ハムディには衝撃的な結末が待っていますが・・・
 ジャケットのモデルもハムディなのですが、301ページの写真の彼女は可愛すぎる(≧∇≦)/
 おっさん、これが目当てで行ったんじゃないかという気がしますよ。
 今回は、2012年3月と11月の旅の模様です。
 ソマリランドの中古車市場を開拓しようとしたり、外国人で喋るものはいないと云われるソマリ語の勉強をしたり、外国人が滅多に口にすることができないソマリアの家庭料理を食べたり、ついに南部ソマリアの戦国都市・モガディショの外に出ることができたり・・・
 しかしまあ、夢にまで見た南部ソマリアの素の姿に、あんなオチがついていようとはねえ。
 もうちょっとで、おっさん、イスラム過激派アル・シャバーブに殺されるところでしたね。
 やはりソマリアの危険度は筋金入りですよ。
 私があちこち行っていたときに、ここだけは絶対に行けないだろうな、と思っていたのがソマリアでした。
 いまだにそうだもんね。ソマリランドはともかく、モガディショはとてもじゃないですが、ムリ。
 著者がわざと書いてるのかもしれないけど、ソマリ人て性格悪そうだしねえ。
 ソマリの女性が世界で一番綺麗だと何回も聞いたことがありますが、この本の写真見ると審議ランプだなあ。
 なんだかんだで、度胸ありますよ高野さん。世界最後の秘境を開拓したもんねえ。
 でも、ハムディがいなくなったからモガディショ行くのは、これが最後になったかもしれません。
 いや、しばらくは行かないほうがいいと思います・・・

 小ネタ。
 20年間無政府状態の戦闘が続くソマリアの首都モガディショですが、驚くべきことに、電気や水道などのライフラインはおろか学校、病院まであり、そして携帯電話やインターネットも使えます。
 各氏族の長たちが金を出して整備しているのです。まさに完全民営化社会なのですね。
 モガディショでテロや戦争の次に問題になっていることは、ゴミ処理の問題だそうです。


 
 
 
 
 
 
 
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