酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「エリア51」アニー・ジェイコブセン

これぞまさしく正真正銘のアンダーグラウンドでしょう。
冒頭で著者はこう書いています。「本書はノンフィクションである。ここに書かれているのはすべて実話であり、本書に登場するのもすべて実在の人物だ。本書を書くにあたってインタビューした74人はいずれもエリア51に関する稀少な情報――すべて自らの体験に基づいた情報――を持っており、そのうち32人は実際にこの秘密基地に住み、そこで働いた経験を持つ人々である」と。
これ以上ない精力的な取材で謎の秘密基地の歴史を調べあげた著者が、冒頭で読者にこうやって訴えかけねばならないほど、“エリア51”という固有名詞はマユツバものであり、どうしてもUFOやらエイリアンなどうさんくさいものを想起させてしまうのです。

それはどうしてなのでしょう?
サブタイトルで世界でもっとも有名な秘密基地の真実とあるように、アメリカ政府はこの基地の存在を公式に認めたことはありません。“エリア51”という名が世界に轟いたのは、1989年11月、エリア51で数ヶ月働いていた自称科学者であるスコット・ラザーが、自分の見たものと基地の存在をマスコミにリークしたからです。
彼が見たと言ったのは、いわゆる「空飛ぶ円盤状のもの」と「エイリアンを思わせる小さな生命体」ですね。
さらにこの件は、1947年7月、ニューメキシコ州ロズウェルに空飛ぶ円盤のようなものが墜落した事件(ロズウェル陸軍航空隊の広報は当初、空飛ぶ円盤の残骸を回収と発表するもすぐに観測用気球であったと訂正)と関連付けられて、本書ではそれがどうやって日本に伝わり、「ムー」や日本テレビにキャッチーに取り上げられ、私のような信じやすいバカがたくさん釣られたという舞台裏も書かれています。面白かったですね。
しかし、まったく嘘ではなかったというのが、本書の主張です。もちろんエイリアンなどは存在していません。
なんせエリア51という名称の由来は、ロズウェル事件の円盤状の残骸がライト・パターソン空軍基地で4年間保管され、それを研究するために極秘裏に開設されたのが、1951年だったためであるというのです。
さらにラストでは、円盤状のものがエイリアンじゃなければ何だったのかについて驚愕の推察が述べられていますが、信じるかどうかは別にして、それはここには書きません、はい。

あとはざっと90%信じられるような話ばかりですよ。分厚くて内容が複雑なので読むのに3日ほどかかりましたが、アメリカの軍事裏面史やアメリカとソ連の冷戦史の真相をこれほど詳しく知れる本もないかもしれません。
結局、ネバダ州の砂漠、ラスヴェガスの北120キロの地点にあってネバダ核実験場に隣接している、何十年もの間何をしているのか誰も知らなかった(大統領さえも)エリア51という秘密基地は何をしていたかというと、エイリアンやUFOを研究していたわけではなく、実際のところは、アメリカの軍事科学技術をどの国よりも迅速に発展させる目的で連邦政府によってつくられた施設でした。1956年には、砂漠の真ん中でトレーラーと格納庫、食堂くらいしかなかったこの基地の最初の住人は、CIA,空軍、ロッキード社の人間だったようです。
そして黒幕は原子力委員会。(エネルギー省、国家核安全保障庁などに名称変更)
ネバダ核実験場に隣接しているため、エリア51の近辺では1964年までに286発の核爆弾の爆発実験が行われています。そしてエリア51の敷地内にはエリア13というのがあって、そこではプロジェクト57と呼ばれる秘密の核実験が過去に行われ、現在でも半減期が2万4千年のプルトニウムに汚染されています。
言い方を変えれば、2万年放っておける土地に黒幕たちは秘密施設を作ったのです。
よくそんなところで最先端の軍事研究の仕事が出来たな、と思うのですが、CIAと空軍、そして防衛関連請負業者などの軍需産業の情報適格性の高い精鋭の技術者は、エリア51でU-2,SR-71(オックスカート)などの高高度秘密偵察機の開発、実験をしていたのです。もちろん実用化され、U-2はソ連上空で撃墜され大事件になりましたし、ベトナム戦争時には、エリア51のCIAオックスカート(空軍のSR-71)は沖縄嘉手納基地に配備され、実戦投入されています。さらにエリア51で特筆すべきは、1966年にイラク空軍のパイロットが亡命した事件で、そのときのソ連製戦闘機ミグ21はイスラエルからエリア51に運ばれ、逆行分析(リバース・エンジニアリング)されてベトナム戦争での空戦でアメリカの優位性を引き出すことに成功しました。
他にもステルスなどのアンチレーダー技術の開発はエリア51が開設されて以来引き継がれている研究であり、1980年以降のエリア51の研究内容は不明点だらけですが、どうやら最近の中東戦線で活躍している無人偵察機の動向にも一役買っているようです。

読み始めたときと、読み終わったときの感じ方がまったく違う本です。
最初のうち、エリア51とは、全65種類7万発の核兵器を製造してきたアメリカの裏面史そのものかな、と思いながら読んでいたのですが、どうも違ってきましたね。CIAと国防総省の黒幕に原子力委員会という構図がよくわかりません。ロズウェルのネタバレにしても、スターリンがそこまでやってアメリカのパニックを誘いながらどうして部品にロシア文字を使用するというバカな初歩的なミスを犯したのか理解できません。
50年前のほうが今より技術が進んでいたというような、妙な感覚が残りました。
これが全部真実ならアメリカは自由の国ではありませんよね。
いったいこの国を操っているのは誰ですか?



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