酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「飛鳳 海軍中攻隊奮戦記」福田清治

 元中攻パイロットの著者が、経営する出版社で自前で刊行した非売品の戦記。1973年発行。
 巻頭の序文はあの淵田美津雄ですよ。海兵52期、真珠湾攻撃の現地指揮官ですね。
 戦後はアメリカやヨーロッパでキリスト教の伝道師をしていたという伝説の飛行隊長です。
 敗戦への転機となったミッドウェーのときは虫垂炎のために、現場指揮官ができませんでした。もしも淵田美津雄がミッドウェー島攻撃の指揮官だったならば、あんな惨敗はしていないと思いますね。
 敵機動部隊を発見することを考えて「島に二次攻撃の必要アリと認む」なんて司令部に打電していないでしょうから。
 そんな大人物に著者がなぜ序文を頼めたかというと、著者が大阪水交会の会員で淵田美津雄が会長であったためです。
 ざっくばらんながら格調高く深い漢文への教養を感じさせる序文でした。
 淵田美津雄が序文を寄せた本を他に私は知りません。

 で、本書の内容なのですが、ちょっとわかりにくいところがあるというか、古書ならではの雑な部分があります。
 まず、著者である福田清治さんの海軍時代の階級や出自がはっきりしていないこと。
 読む限りでは、第1航空隊(752空)の中攻操縦員で小隊長ということしかわかりません。
 写真を見る限りでは下士官ではないかと思うのですが、支那事変での爆撃の経験もあるようで古参だと思われるし、終戦間際のところで予備士官が敬語で喋っているので、飛曹長以上の特務士官の可能性もあります。予科練の何期出身とかいつどこの生まれであるとも書いていませんのでね。ちょっと不思議ですよね。
 それに、どうやら福田さんではないと思われる方の体験談も混じっているようです。
 途中で昭和19年2月17日のトラック大空襲で迎撃に上がった零式観測機の記事がありました。
 中攻のパイロットがまさか零観に乗るはずはないと思うのでね。
 この零観は結局撃墜されるのですが操縦員は生き残ったようで、大変貴重な記事だと思うのですが、誰が書いたのかわからないのは本当に残念だと思います。大阪水交会の誰かでしょうか。
 書いた方の名前が入っている記事も寄稿みたいな感じで少しありましたが、こちらも甲種予科練1期生(野口克己さん)であったり、4回も墜落した経験のある艦爆のパイロット(大西貞明さん)であったり、生半可ではありません。
 願わくば、非売品なので仕方ないのかもしれませんが、将来読まれるということにもっと考えを向けて、編集、構成をしっかりしてほしかったと思います。
 ただ写真類は不鮮明でありながらも、今まで見たこと無いのがありました。敵空母直上で撃墜される銀河などですね。

 結局、著者の実体験が書かれているのは、海戦劈頭のシンガポール爆撃、レパルス雷撃、マーシャル群島タロア基地での経験、そして戦争末期の台湾での体験かと思われます。
 中攻での雷撃は、いつ読んでもすさまじいですね。
 高角砲、機関砲の弾幕の真只中を、針路を変えることなく直進しなければならない雷撃のおきて。
 いかに操縦が上手でも弾はよけてくれません。被弾しないのが不思議なくらいだそうです。
 一式ライターと呼ばれるくらい脆弱な機体。著者ははっきりと欠陥機であったと書いています。
 昭和20年6月に台湾の新竹飛行場にいた著者は、螺旋爆弾による爆撃で多くの部下や同僚を失いました。
 螺旋爆弾とは、周囲に切型の入った小指関節程の鉄片が螺旋状に巻いている触発式の爆弾で、人馬殺傷弾と言われる新型爆弾でした。触発式なので下には入らないため土が一尺盛った防空壕であれば絶対大丈夫ですが、1キロの軽量で大量にばらまかれ、不発弾がなかったそうです。

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