酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「陰陽師」夢枕獏

 夏だし、何か長い伝奇系のシリーズを読もうと思いましてね。選んだのがこれ。
 映画にもなりましたし、陰陽師・安倍晴明という名前をメジャーにしたロングセラーです。
 現在もまだ進行形でしたっけ、、長いシリーズはハマれば楽しさ倍増ですからね。
 ひょっとしたら第一巻である本作だけは、昔に読んだかもしれませんけど。
 うっすら、記憶がだぶっているような箇所がありましたから。
 まあ、第一巻ということで、作者も手さぐり状態なのがわかりました、今読んでみれば。
 それほど面白いわけではありません。
 陰陽師の説明を兼ねて、連作の短編が6篇。
 文字数は極めて少ないです。サッと読める。反面、奥行きが浅い。
 会話も現代語だから読みやすいです。反面、1千年前の時代を感じる雰囲気が壊れています。
 伝奇小説の醍醐味である不可思議さ、怖さはどうでしょうか。
 前5篇はそうでもないと思いますけど、主人公の安倍晴明と対峙する物の怪の正体には意外なモノもありました。
 そして最終作の「白比丘尼」は、気色悪さにおいて申し分ない伝奇短編小説の傑作であると思います。
 また、伝奇系にありがちなトッピング「怪奇エロ」は、少なめながらも、爺さんの目の前で孫娘がカワウソの化け物と毎夜痴態を繰り広げるという強烈なのがトッピングされていました。

 では、登場人物の説明と各篇の簡単な概略。
 時は闇が闇として残っていた、平安時代。
 主人公・安倍晴明は、陰陽師です。陰陽師とは朝廷の役職であり、星の相を観、人の相を観、方位を観、占いもし、呪術によって人を呪い殺すこともでき、幻術を使ったりします。鬼や物の怪などのあやかしを支配する力を持っています。
 安倍晴明の師匠の賀茂忠行は、惜しげもなく己のすべての技を晴明に引き継ぎました。
 若いときから、晴明には陰陽師としての天賦の才能があり、数百年いや数千年にひとりの天才だったそうです。
 晴明の家屋敷は、内裏の中心にある紫禁殿から見て北東、すなわち鬼門に配されていました。
 安倍晴明は、目に見えないあやかしや怪異から都を護る、霊的な守護者だったのです。
 そしてもうひとり、重要なキャラクターが源博雅。
 彼は30歳代後半の武士で、晴明の友人です。ということは、晴明も同じくらいの年頃であると思われます。
 シャーロック・ホームズが晴明とするなら、博雅はワトソンくん。
 博雅が清明の屋敷を訪れて、最近の都で起こっている怪異譚を話すことから大体の物語は始まります。
 その前に、晴明の屋敷を訪れた博雅が、清明の使う式神(普通は目に見えない精霊)に驚いたり、身構えたりすることがお約束になっています。ネズミや猫が喋ったり。これは今度はどんな仕掛けがと、読んでいる方もなかなか楽しいものです。

「玄像といふ琵琶鬼のために盗らるること」
 醍醐天皇の秘蔵の舶来品である琵琶「玄像」が、盗まれた。以来、毎夜羅城門の上から、異国の旋律と思われる哀切極まりない調べが聴かれるようになった。その恐るべき正体とは・・・
「梔子の女」
 くちなし、と読みます。妙安寺に、毎夜あやかしの女が現れるという。その女には口がない。
 奇妙奇天烈な女の正体を清明が解明する。
「黒川主」
 鴨川の鵜匠の前に現れた、謎の黒狩衣の男。やがて彼は黒い尻尾を生やしたまま、鵜匠の屋敷に入り込んで孫娘を犯すようになり、孫娘は妊娠する。人の因果と獣の因果の間に生まれた子の行方は・・・
「蟇」
 ひき。ひきがえるのことです。応天門に、あやかしが出たという。それは100年前、いたずらで子供が蟇を殺めてしまったことに端を発していた。呪われた一家。悲劇の行方は・・・
「鬼のみちゆき」
 夜の都路で、牛がいないのに道を進む牛車が目撃された。中には鬼が乗っており、行く手を阻む者を食い殺すという。牛車はどうやら帝に用事があり、内裏を目指しているようだ。清明と博雅はこの怪異を食い止めようとするが・・・
「白比丘尼」
 珍しく、清明のほうから博雅に連絡があった。人を殺したことのある太刀を持って屋敷まで来てくれという。
 博雅は父が盗賊を退治したときの太刀をもって、清明の元へ急ぐ。
 そこでは、ひとりの見目麗しい比丘尼が庭に端座していた。これから、30年に一度の、禍蛇追いの法をやるという。
 比丘尼の体内から出てきたおぞましき異物の正体とは・・・


 
 


 
 
 
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