酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「艦隊戦闘機隊」早川英治郎・島野嘉吉・原進ほか

 太平洋戦争ドキュメンタリー(今日の話題社)第15巻。
 昭和44年初版の古書です。
 著者自らの戦争体験を著した記事が海軍関連4、陸軍関連4の計8篇。
 小さい文字の三段組で読みづらいのが難点なのですが、内容はボリュームとも申し分なし。
 終戦後まだ20年を経ていない時期の記事ですので、執筆陣の記憶も生々しいことでしょう。
 陸軍関連は、私はまだ勉強不足なのですが、海軍関連は興味深く読ませていただきました。
 特に、終戦まで生き抜いた歴戦の特設掃海艇の活躍を描いた一篇は非常に珍しく、楽しく読みました。
 初めて読みましたからね、掃海艇の戦記なんて。
 あと、謎もありましたよ。
 表題作であるベテランの母艦航空隊パイロットの手記「艦隊戦闘機隊」を、著者である早川英治郎なる人物は初めて聞いたなと思いながらも読み終えると、編集部注記として著者の名前はペンネームと書いてるじゃありませんか!
 何か差し障りがあるのだろうと想像しましたが、編集部注記には「誰であるかは推測できるでしょうが」みたいなことが書いてる。なるほど昭和40年代だとそうかもしれませんが、現在はそれから40年以上経っていますからねえ。
 でもこの謎を解きたい。早川英治郎とは誰なのか?
 鬼のように調べた結果、99%間違いないと思われる方に行き当たりました。
 愛媛県出身、本山航空隊に在籍経験があり、マリアナ沖海戦で空母瑞鶴戦闘機隊として出撃後単機で帰投した経験を持つパイロットということから鑑みて、この経歴に当てはまるのは、池田(藤本)速雄飛曹長その人ではないかと思います。
 複数の撃墜記録を持つ歴戦の零戦搭乗員である池田速雄さんが、なぜどこに出しても恥ずかしくない貴重な自身の体験を公表するのにペンネームを用いたのか、それは謎です。
 
 謎の早川英治郎氏(601空310戦闘機隊)の表題作「艦隊戦闘機隊」のほかの海軍関連は3篇。
「掃海艇かく戦えり」(島野嘉吉・第3関丸乗組・海軍中尉)
 トン数わずか300トン。捕鯨船を改造した特設掃海艇「第3関丸」(乗組士官4名・下士官兵46名)の戦記。
 著者は艇唯一の現役士官(艇長、水雷長、機関長ともに予備役)で、運用、航海、主計などを兼ねた先任士官。
 グァム攻略作戦を皮切りに、ポートモレスビー攻略作戦など激戦のソロモン海域で1カ年余しぶとく生き残り、ついに終戦まで活躍し続けた武勲の掃海艇「第3関丸」の航跡。南方の攻略作戦では機雷掃海のために先陣を切る任務を受け持ち、また海軍の護衛艦不足から船団護衛も務めました。300トンの小さな体に、8センチ水平砲、7・7ミリ機銃、爆雷、掃海具を積んだこの小艦が南方の第一線で生き残った軌跡を読めたことは、非常によかったです。
「駆逐艦と護衛艦」(原進・駆逐艦春雨乗組・海軍工作兵曹長)
 昭和18年1月にウエワク湾で敵潜水艦の雷撃を受け、艦首が切断されながらも不屈の闘志で生き抜いた第27駆逐隊旗艦「春雨」の戦記。健闘むなしく昭和19年6月にビアク島沖で航空雷撃により沈没するまでの生涯。
「不運の駆逐艦夏潮」(大西喬・夏潮水雷科員)
 昭和17年2月8日、マカッサル湾口で被雷沈没した不運の駆逐艦「夏潮」。著者は戦前に艦隊練習中、駆逐艦峯雲が夏潮に衝突破損したことが遠因ではないかと書いています。夏潮が雷撃を受けた中部機械室は、奇しくも峯雲に体当たりされた箇所と同じだったそうです。

 次に、陸軍篇4篇。
「ラバウルの石松」(瀧利郎・第38師団参謀付・陸軍准尉)
 著者は支隊司令部の暗号手。ガダルカナル島での死闘。激戦の903高地。自決用と特攻用の2発の手榴弾が唯一の武器だったそうです。ソロモンで激闘を続けながら、海軍の苦戦を横目で見、早い段階から「海軍の捲土重来はない」と見切っていたそうです。
「ネグロス島攻防戦」(弓削伊三郎・第6航空地区司令官・陸軍大佐)
 レイテ決戦前後の在フィリピン陸軍航空隊の動きについてよくわかる手記です。陸軍特攻隊についても。
 著者は昭和21年3月に復員しましたが、奥さんは終戦後の昭和20年9月に自決していました。
「盗賊山砲隊奮戦記」(志摩辰郎・祭兵団独立山砲隊・見習士官)
 昭和19年3月、日本軍の敗色が濃くなってきてからの大作戦・インパール作戦の光と影。
 著者はインパール作戦捕虜第一号となったが、後に脱出して本隊に合流した驚くべき経験の持ち主。
「さらば天門」(森金千秋・第132師団602大隊・陸軍兵長)
 連戦連勝敗け知らずの支那派遣軍に訪れた、終戦。負けた気がしない。一ヶ月後の昭和20年9月になってやっと占拠地を撤退しました。それから昭和21年5月にLSTで復員するまでの日々。珍しいことが色々と書いてあります。

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