酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

「電通の深層」大下英治

 業界世界一の単体売上高(1兆1600億円)を誇る広告代理店・電通。
 今、その巨艦「電通」が揺らいでいる。
 ネット広告不正取引事件、高橋まつりさんの過労自殺事件が明るみになり、社長退陣にまで追い込まれた。
 マスコミ・広告業界のガリバーは、どこに向かうのか。
 電通の悪しき習慣、謎の権力構造、そして日本の闇は電通の闇とまで云われる不都合な真実とは!?
 1981年にタブーに挑戦した問題作「小説電通」を著した怖いもの知らずの著者が、35年ぶりに電通の興亡と闇を追う。
 はたして電通問題の核心とは・・・

 電通の創業は明治34年にまでさかのぼります。
 当時は「日本電報通信社」といい、通信部門と広告部門の2本の柱をもつ会社でした。
 昭和11年に軍政の台頭で、通信部門が軍部の情報機関として独立(戦後、共同通信社と時事通信社となり現在に至る)。
 残った広告部門が、「電通」の前身です。
 戦後、軍部ファシズム政権に協力したとして公職追放指定会社とされましたが、カリスマ吉田秀雄第4代社長の獅子奮迅の活躍により、在野の優秀な人材を集め、先見の明によるテレビ・ラジオへの注力が功を奏して、瞬く間に他の追随を許さぬ巨大企業に成長しました。業界2位である博報堂との差はずいぶんあります。広告代理店というよりも商社のようです。
 国内のあらゆるメディアに隠然たる影響力を持ち、日本の“情報”を牛耳っています。
 
 本書は、著者が1981年に著した「小説電通」を併録しています。
 最近の世間をにぎわした電通に関わる事件を解説し、元電通関係者に取材した部分が3分の1、小説部分が3分の2。
 「小説電通」も、刊行に圧力がかかったというだけあって、おそらく事実に基づいた内容で、なかなか面白い。
 私のような国民の末端の底辺には、うかがい知ることすらできない世界ですが、スパイ小説のような業界ですね。
 クライアントに不祥事が起きれば、それを公表しようとするメディアに圧力をかける。
 メディアは、電通を介した広告料が利益ですから、おいそれと圧力を突っぱねることができない。
 結果、不祥事が揉み消されれば、やっぱり電通に広告を頼んでおいてよかったという図式になります。
 日本だけなんですってね、広告代理店の一業種多社制は。
 例えば、車でいうとトヨタ、日産、マツダ、スズキなどライバル会社すべてが電通を使っているということです。
 これがアメリカとかだと一業種一社制で、同じライバル同士が同じ広告代理店を使うことなどタブーです。
 どうしてここまで電通は巨大企業になり得たのか。
 それは事件で有名になった電通の鬼十則を創った、第4代社長吉田秀雄の力によるところが大きいかと思います。

 「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂するまでは・・・」の条文で有名な鬼十則。
 電通は、2017年度から社員の手帳からこの鬼十則を削りました。
 入社したエリートの鼻っ柱をへし折り、暴力も辞さない超体育会系体質が、電通という会社の伝統です。
 上司によるパワハラが直接の原因ですが、高橋まつりさんの過労自殺事件の遠因は電通という会社の体質でしょう。
 残業が100時間と云われていますが、実際には高橋さんの残業時間は200時間を超えていたのではないでしょうか。
 彼女が配属されていたのは、ダイレクトマーケティングビジネス局という、ネット広告の部門でした。
 最近急拡大しているネット広告ですが、電通は対応に立ち遅れていたそうです。
 そのために、部員に非常な負担がかかり、さらに高橋さんは新入社員だったために、あらゆる負荷がかかったのではないでしょうか。当然そこには、東大卒の女性社員に対するイジメの要素も大きかったはずです。
 実は、以前にも電通は過労で社員が自殺しています。
 高橋さんの事件の後で、電通は午後10時以降は本社消灯を義務付けるなど、変わろうとする姿勢を見せています。
 しかし、どうでしょうか。
 別に時間の問題ではないような気がします。働くことは悪いことではないのでね。
 まあ、これを機に電通の力が衰えることになれば、それが逆に一番望ましい形となって、電通を良くしていくと思うのですが、このまま権力にあぐらをかいたままだと、こんな外国ではちっとも儲けないくせに国内だけで偉そうに威張ってるような会社いらんと思いますわ。


 
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