第二級活字中毒者の遊読記

酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

Archive: 2016年03月  1/3

「塀の中の少年たち」斎藤充功

No image

 「少年法」を利用することによって、再生の人生において成功者になった人間はいる。 しかし、少年法に守られるといっても、彼が犯した過去の過ちがなかったことになるわけではない。 更生とは過去をすべて消し去ることではないのだ。 古い資料もありますし、元少年Aの「絶歌」出版に便乗した寄せ集めの少年犯罪ドキュメント本かと思いきや、中盤からは興味深い事実が載せられていたりします。 特に2つ。 ひとつは、わが国...

  •  0
  •  0

「死んでいない者」滝口悠生

No image

 第153回(平成27年下半期)芥川賞受賞作です。 作者は、滝口悠生(たきぐちゆうしょう)さん。 まあ、大衆小説ではない文芸作品を扱う芥川賞だから、そんな面白い読み物ではないわな。 ただどことなく私には映像観が強く伴う作品で、いい意味でクセのある作品ではないかと思いました。 こんな素人っぽい映画あるよね。 まったく客観的にお通夜の瞬間瞬間を切り貼りしてみました、みたいな。 で、本筋。 といっても、...

  •  0
  •  0

「あの日」小保方晴子

No image

 「私は不注意で、勉強不足であったけれども悪意を持って図表を作ったわけではありません」 一片の邪心もなかった、と本書では言い切られています。 一連の事件はテレビや報道で観ていましたし、小保方さんがその取材の姿勢を痛烈に批判している毎日新聞記者の須田桃子さんの本「捏造の科学者 STAP細胞事件」も読んでいましたから、私は本書を読まないわけにはいきません。 むしろ、待っていました。 言われっぱなしではいけ...

  •  0
  •  0

「死刑に直面する人たち」佐藤大介

No image

 日本は先進国の中では数少ない死刑存置国(死刑という刑罰があって執行している)です。 国連では、EU諸国などが主導した死刑反対決議に、中国や北朝鮮などと共に反対しています。 ちょっと異様な光景ですよね。 でも、日本国内では8割を超す人々が死刑を容認しているのです。極刑もやむを得ない、と。 客観的に見れば、世界の潮流からは、ずれてきているんですよね。 比較するのはおかしいかもしれませんが、これはちょっ...

  •  5
  •  0

「江戸参府旅行日記」エンゲルベルト・ケンペル

No image

 近世日本の風俗・文化が知れる大変貴重な試料です。 ドイツ人の博物学者エンゲルベルト・ケンペルの、2回にわたる長崎から江戸への往復旅行見聞録。 出島のオランダ商館長に付いて、参勤交代のように遠路はるばる江戸に参って時の将軍(綱吉)に拝謁しました。 1691年(元禄4年)と翌年1962年(元禄5年)のことです。 行程は長崎から小倉まで5日、下関から船で瀬戸内海を大坂まで1周間、大坂から東海道を江戸ま...

  •  0
  •  0