「JA解体 1000万組合員の命運」飯田康道

 岐路に立つ日本の農業。
 農業生産額は1984年から比べると約3兆円減少し、耕地面積は50年間で26%減少、2014年の農業就業人口は2009年から63万人減って226万6千人だが、このうち65歳以上が144万3千人を占め、平均年齢は66.7歳である。
 この状態で、TPP(環太平洋連携協定)が始まれば、どうなってしまうのか。
 今は食料が過剰であり、付加価値のない農産物は安くしか売れない。農家の所得を増やすためには、高品質の農産物を作る技術の指導や新たな売り先の開拓が欠かせなくなっている。
 はたして日本の農業は生き残れるのか?
 2015年はじめ、政府主導いや官邸主導というべき農協改革が新聞紙面をにぎわした。
 JAグループの頂点に立ち、農業関連はもちろん信用や共済、病院の経営など農協の行う様々な事業に影響を及ぼしてきたJA全中(全国農業協同組合中央会)の解体である。
 手厚い補助金行政で過保護に育った日本農業が、荒海に旅立つ今、どうしてこのタイミングで政府は強硬に農協改革を実行したのだろうか? 農協の司令塔であるJA全中をなぜ解体しようとしたのだろうか?
 JAを取り巻く問題、さらには日本農業の理解を深めながら、官邸VS農協の裏側を暴露したノンフィクション。

 身近でありながら実態のよくわからないJAについて深く知ることのできる良本。
 著者は共同通信の記者の方です。
 田舎の徳島が初任地であったことが、農業を考えるきっかけになったとか。
 徳島選挙区の後藤田正純が農協改革派であったことは知りませんでした。地盤のJAアグリあなんは怒らないのかな?
 おそらく、ふたりは知っている仲でしょうね。
 さて、農協。JA、ちょきんぎょ。リスのCMがかわいい。
 私は農家ではありませんが、准組合員というやつで、共済やJAバンクを利用しています。
 農協というのは、本来、小さい日本の農家が寄り合うことで高く米を売れたり安く肥料を仕入れたりすることを可能にした“組合”であり、あくまでも正規の組合員は農家なのですが、現実では農協の農業関連事業は赤字であり、その赤字を信用と共済などの金融事業で補っている状態です。JAバンク、JA共済の規模はメガバンクや大手生保と比較しても引けをとりません。これを可能にしているのは、農家ではない准組合員が農協を利用しているためです。実際には、准組合員の数が組合員を逆転しています。農協はつまり、我家の外での商売に依存しているのです。
 政府に突かれたのは、ここです。農協の突かれたら一番痛いところね。
 つまり、JA全中を解体(農協改革)しなければ、准組合員の利用を規制するよ? とやったのです、官邸は。
 地域農協にとって生命線である准組合員の金融利用規制は、JAグループにとって死活問題です。
 その前に、どうして農協の司令塔であるJA全中を政府が目の敵にしたかというと、TPPに絡んでやたらうるさい農政活動をするからです。実際、本書に書かれていることが真実でしょうが、このJA全中は、農家を考えるよりも自己の組織の維持に固執していました。本来ならば農林族を巻き込んだきな臭い政治活動よりも、この時代にどうやったら農産物を多く、高い価格で売れるかを考えなければならない組織のはずです。
 JA全中は、全国679の地域農協の業務、会計監査権を握っており、農協から賦課金という上納金を受領しています。
 大したことはしてなくても、農協法上、地域農協は頭が上がらない存在です。政治力もあります。
 政府は、地域農協の経営を支える准組合員の利用規制を取引材料に使って農協内部を揺さぶり、TPP、EPA批判の急先鋒であるJA全中の統制力を削ぎ、中央会制度ができてから60年間、多くの組合員を背景にした強大な政治力によって永田町や霞が関に影響力を持ち続けたJAグループに、誰も開けることのできなかった風穴を開けたのです。
 ひょっとしたら、郵政改革よりもすごい快挙かもしれません。善悪はともかくとしてね。

 著者は、おそらくゆくゆくは農林中央金庫やJA全農が株式会社化するだろうと書いていますが、その通りでしょうね。
 もはや時代は、そういう流れです。郵便局だって、保険や金融やってたんだから。
 これからの農協は、金融の貯金があるうちに、本業である農業に活路を見出して死力を尽くす以外にありません。
 郵便局だってゆうパックがなんとかなりそうなんだから、農協だってきっとやれる。
 そのためには、早く株式会社になって海外の農業生産法人を買収していくべきです。
 日本の農業と考えるから縮こまるのです。世界のJAを目指してください。


 
 

 
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