「昨日の海は」近藤史恵

 四国の片田舎の高校生が、東京から従姉妹母娘が引っ越してきたことをきっかけに、生まれる前にこの世を去った祖父母にまつわる事件の謎を解き明かす青春小説系ミステリー。
 何の変哲もない田舎の16歳の男子の日常と、成長の様が眩しく感じられます。
 小説としての主眼点は、ミステリー部分ではなくてこっちのほうだと思います。
 ミステリーを期待して読めば、物足りないかもしれないですね。登場人物も少ないですしね。
 なんて言いながら、まあ、私は最後まで事件の真相に気づきませんでした。
 あとから考えると簡単そうなんですが。作者の腕かもしれません。
 まあ、それはともかく、主人公の男子がほんとどこにでもいそうといいますか、まんま読み手が田舎者ならば、速攻で感情移入しそうなキャラクターの設定でして、そこが良かったと思います。どこにでもいる、目立たない男子。
 磯ノ森はたぶん高知だろうね、安芸のほうのイメージかなあ。いや、土佐清水方向かもしれません。
 なんとなく、続きが読みたいと思いました。
 光介と双葉の成長が気になります。
 ということは、やはりミステリーというより青春小説ですね。

 少しあらすじ。
 四国の南側。海と山以外は何もない、さびれた片田舎の磯ノ森。
 大江光介は、県内一の進学校に通うも、勉強がそこそこできる以外はなにひとつパッとしない16歳の高校生である。
 自分でも平凡だと思っている。背は低いし、スポーツもできないし、芸術の才能もない。人気者でもない。
 漠然と、大学に進学すれば磯ノ森から出られる、そんなことしか考えていない、高1の夏休みのことだった。
 母の姉である伯母が、8歳になる従姉妹を連れて東京からこっちに帰ってきたのだ。
 帰省ではない、引っ越しである。しかも、住む家は光介の家で同居だ。
 伯母の芹(せり)とは、光介が7歳のときに法事で会ったきりであり、従姉妹の双葉とは会ったこともなかった。
 旅館で働く父、専業主婦の母、そして光介の3人家族に、新たに他人に近い母娘ふたりが加わったのだ。
 はたして、母に似ているが2歳上の芹は都会ぐらしで垢抜けており、双葉は8歳と思えぬくらい大人びた少女だった。
 しかし、当初の不安は思いの外はやく消え去り、光介は芹や双葉と仲良くやれるようになる。
 そんなとき、光介は突然芹から思いがけぬ話を聞いてしまう。
 それは、25年前に事故で亡くなったと思ってばかりいた祖父母が、実は海で心中していたというばかりではなく、どちらかがどちらかを殺した無理心中だった可能性があるというのだ。
 この家で写真館を営んでいた祖父はマニアックな人気を誇る写真家で、息を呑むほど美しかったという祖母は祖父の写真のモデルだった。
 借金が事件の原因らしいが、詳しいことは芹にもわからないらしい。
 ただ、光介にはひとつわかったことがあった。それは芹が時間を25年前に巻き戻すために帰ってきたということである。
 そして芹は、長い間祖父母が死んだときのままになっていた家の店舗部分をリフォームし、カメラ店を再開しようとする。
 写真家だった祖父とモデルだった祖母。生まれるはるか以前に亡くなったふたりの間にはいったい何があったのか。
 光介は、自らの家族の歴史を知るべく、25年前の祖父母の事件の真相を追う。

 うーん。
 あらすじを思い出して書いているうちに、どうも回収されていない伏線があったような気がしてきました。
 祖父の弟子だった水嶋葉の撮る作品の傾向が変わった理由と、シングルマザーである芹の背景、ですね。
 水嶋のは作者が意図して置いたミスリードトラップかあるいは葉が祖父にその気があったという示唆ですかね。
 あるいは・・・彼女は芹がモデルになっていたことを知っていたのかもしれません。
 そして、葉もまたヌードを撮られていたという可能性があります。
 わからないのは、芹の背景が語られていない点です。作品のボリュームの関係でしょうか。
 必要な部分だったと思うのですが・・・双葉の父親はどんな人間だったのか。
 ひょっとしたら、作者は途中で軌道修正した可能性もあると思います。
 まあ、青春部分で満足なら、こだわる必要はまったくないですけどね。
 続編があるのなら、納得。


 
 
 
 
 
 
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