「リバース」湊かなえ

 「深瀬和久は人殺しだ」
 3ヶ月前に付き合ったばかりの、人生初めての彼女のもとに届いた告発文。
 社会人3年目、事務器の営業マンである深瀬和久は、その瞬間、息を呑んだ。
 同じ手紙は、かつての大学のゼミ仲間にも届けられていた。
 高校教師である浅見に対しては、駐車場の車の窓ガラスに、目立つように「浅見康介は人殺しだ」。
 大手商社マンの谷原には、総務部宛の匿名の手紙で「谷原康生は人殺しだ」。
 父親が県会議員である村井には、父の選挙事務所の窓に「村井隆明は人殺しだ」。
 4人が人殺しと言われて思い当たることは、ただひとつ。
 3年前の夏、ゼミのメンバー5人で長野と新潟の境にある村井の別荘へ旅行することになった。
 前日、村井が交通事故に遭い、とりあえず谷原、浅見、深瀬、広沢由樹の4人で車で別荘に向かった。
 バーベキューを楽しみ、夜になったところで、最寄りの駅までやってきた村井が迎えに来いという。
 車が運転できるのは浅見と広沢のふたりだが、ふたりとも酒を飲んでいた。
 谷原がタクシーで来いと村井に言うと、携帯の向こうで村井がキレた。
 「ど田舎の無人駅にタクシーなんていない。誰の別荘だと思ってんだ! すぐ迎えに来い!」
 教師を目指していた浅見は頑なに運転を拒んだ、結局、広沢がひとりで迎えに行くことになった。
 そして、彼は帰ってこなかった。車が谷に転落したのである――
 愛媛から一人息子の遺体を引き取りに来た両親に4人は土下座して、村井はタクシーでくればよかったと、谷原は村井に強くタクシーを勧めればよかったと、浅見は村井が来る可能性はあったのだから自分が酒を飲まないでいればよかったと、深瀬は一緒に行けばよかったと、それぞれ後悔の言葉を口にした。
 しかし、警察にも、両親にも、広沢が酒を飲んでいたことだけは言わなかった。
 車中で黒焦げになっていた広沢の遺体から、アルコールは発見されなかったようだった。
 酒を飲んで、運転に慣れていない走りにくい山道を走って、死んだ広沢。
 深く後悔しながら、後ろめたさから事件の真相を隠した4人。
 今になって、それぞれを人殺しと告発する人物の正体と目的とは・・・
 死んだ広沢は、どんな人生を歩んでどんな人間関係を持っていたのか。
 深瀬は、広沢の地元愛媛で彼の人生をたぐり寄せた結果、ひとりの人物にたどり着く。その人物とは・・・

 最後の最後、抜群だったような気がします。
 久しぶりに読んだ湊かなえですが、なかなか読みやすくてよかったですね。
 ちょっとインパクトにかけるというか、やたらコーヒーの話が多いですし(なんで??)、ミステリーでありながらサスペンス感がまるでないため、読み手の嗜好によっては物足りないかもしれませんが。
 こういう、ヒューマニズムというか、深瀬や古川のような集団のなかの空気人間の苦悩を扱うのは、前から湊かなえってこんなでしたっけ? なにかこう、辻村深月みたいでしたね。久しぶりだからそう思っただけかなあ。
 ああそうか、コーヒーは、深瀬というキャラクターのために用意されていたものか。生きるよすがですよね。
 小学校、中学校、高校、大学、社会人と人間は様々な環境のもとで集団として別の人格と接していくわけですが、誰もがうまくいくわけでもなく、誰もがうまくいかないわけでもありません。
 どんな人間でも気が合わない奴はいるし、逆に気が合う人間もきっとどこかに存在しています。
 集団のなかの孤独というのは、確かに人にとっては辛いものでしょうが、それも結局は自我に負けてるんですよね。
 ひとりで飯を食うのは寂しい、友達がいないと思われるのは辛い、誰も自分のことをわかってくれない。
 環境が変わったタイミングで、親友と呼べる人間に出会うことができたとしても、彼には彼の人生があります。
 人間というのは、結局は“ひとり”なんです。孤独な存在なんです。
 なぜなら、いつの日にか絶対に死ぬからですね。
 自意識過剰になる必要はありません、自分のことを他人が気にしている時間は些少です。
 それを理解して、適当な“間”を人とのあいだに保っておかなくてはなりません。
 そうすれば、人間関係で悩んだりする前に、諦観もできるし逆に感情を爆発させることもできると思うのですよ。
 素直に生きること。これが一番です。深瀬、おまえが殺したんだとしても、頑張れ。


 
 
 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示