「猟犬」ヨルン・リーエル・ホルスト

 北欧ミステリ三冠を受賞したノルウェー発傑作警察ミステリー小説ということで読んでみました。
 簡単にあらすじ。
 舞台は、ノルウェーの首都オスロ南西部にあるラルヴィクという街。
 外国ミステリーで困るのは、どんな場所なのかまったくわからないことですが、最初に地図が載せれらています。
 主人公のヴィリアム・ヴィスティングは、ラルヴィク警察のベテラン捜査官。警察官歴31年、地元テレビのトークショーに出演したり、警察学校で講義をしたり、内外で尊敬されている警察幹部です。
 しかし、思わぬところから彼の輝かしい経歴に大きな疑問が持たれることになります。
 それは17年前の困難を極めた、痛々しい事件が発端でした。
 その事件とは、セシリア事件。当時20歳の女性セシリア・リンデが、別荘でジョギングに出たまま行方不明になり、約1週間後全裸遺体となって発見されたのです。セシリアの父はノルウェーきっての実業家であり、世間から非常な注目を浴びた事件でした。
 この事件の責任捜査官が、まだ若手であったヴィスティングだったのです。
 捜査は難航しましたが、性的犯罪の前科があったリュードルフ・ハーグレンという30歳の男が逮捕され、被害者死亡ながらも一応の解決を見ました。裁判でも揉めることはありませんでした。ところが、死刑制度のないノルウェーの最高刑は懲役21年であり、17年の服役後釈放されたハーグレンが、なんと冤罪を訴えたのです。
 逮捕の決め手となったタバコの吸い殻のDNA鑑定は、警察の捏造であるというのがハーグレンとその弁護士の主張でした。
 有罪を確定させた証拠は、事件解決のプレッシャーを受けた警察が意図的に操作したものであり、その科学的確証も得ているというのです。
 申請書が再審委員会に提出され、マスコミも騒ぎだしてヴィスティングは副署長から停職を命じられます。
 セシリア事件の捜査責任者はヴィスティングであり、仮に証拠捏造が事実だとすると、彼は警察を追われるどころか懲役刑に服せられる可能性がありました。
 ヴィスティングの娘であり、大手タブロイド紙事件記者のリーネは、父の身柄を心配し、ちょうどフィヨルド対岸のフレドリクスタで起こった不可解な殺人事件に果敢に挑み、世間の目を父の疑惑から少しでも逸らせようと試みます。
 実際に、リーネが殺人犯にあと一歩まで迫ったフレドリクスタの事件は深い闇を抱えるものでした。
 そして、警察手帳を取り上げられたヴィスティングは、ひとりコテージに籠もり、当時の捜査陣の誰かが実際に証拠を捏造したという可能性も考慮しながら、17年間の経験と新たなる目でもって、セシリア事件をもう一度見直す決意を固めるのですが・・・

 北欧ミステリーは最近、調子いいですな。
 ノルウェーかあ。行ってみたいね、一度は。
 ノルウェーとえいば、銃の乱射事件が何年か前に起こりまして、そのときに市民の方が「犯人を生んだのは我々の社会なんだ。我々にも責任があるんだ」と言っていたのを見て、とてもビックリした覚えがあります。
 死刑がないのもわかります、ものすごく、成熟した社会なのですね。
 こういう考えは、多くの日本人にはあまり真似できません。私なんかもっとはよ死刑やれやと思うくらいです。
 この小説にも、その片鱗というか、雰囲気があるように思いました。
 ここ最近は大阪の事件があったので別ですが、新聞の一面に刑事事件があまり載らなくなったのは、ノルウェーも日本も同じですね。刑事事件の場合は、動きが早いので、今の時代ではオンライン報道に勝てないようです。朝刊の一面の記事が出たころにはもう古くなっているという。
 事件の証拠を捏造するというのも、日本でも問題になりました。
 世間の注目が集まる大事件というのは、どこの国でも警察に圧力を与えるものなのでしょう。
 その結果、真犯人を間違えてしまっては元も子もないのですが・・・

 今となって本筋を振り返れば、間違った証拠が提出されていたことを知っていたハーグレンが、なぜ裁判で黙ってそのまま服役したのかということを考えてみれば、この結論は当たり前であったとわかります。
 真犯人が彼であったからこそ、黙っていたのですね。それ以外考えられませんから。
 途中で、元刑事のフランク・ロベックが怪しいと感じていた人は多いと思います。
 ミスリードですよね。しかし、どうやってラストでロベックがこの事件の核心にまで迫ってこれたのか、わかりませんでした。
 ひょっとしたら、彼は刑事をやめたときから、姪の事件に対して、時間が止まっていたのかもしれません。
 退職後仕事が出来なかったのは、ひとりでずっと捜査をしていたからなのかもしれませんね。
 猟犬とは、彼のことだったりして・・・


 
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