「通訳日記」矢野大輔

 前サッカー日本男子代表ザックジャパンの代表チーム通訳を務めた著者による、激闘の記録。
 副題は「ザックジャパン1397日の記録」とあるように、およそ4年間で著者は大学ノート19冊分の日記を書いていました。
 本書は、その中からの抜粋ですね。それでもだいぶ分厚い本になっています。
 内容は、プライベートにはあまり触れられていません。サッカーの中身中心。
 ザッケローニはワサビが好きになったように、それまで知らなかったこの極東の日本という国の文化をものすごく愛するようになり、いろんなエピソードが語られてきましたが、それらに触れられていないのは少し残念かな。
 でも、チームやスタッフミーティングの細かい内容であるとか、本田やキャプテンだった長谷部、香川真司らとの個別会談の詳細、親善試合含めザックジャパン全56戦の裏側、そして2014年5月12日W杯メンバー発表の真相など、興味深い事実が網羅されており、ページをめくる手が止まりません。
 今だからこそ言えるみたいな感じで。といってもまだそれほど時間は経っていないんですけどね。
 時間が経っていないからこそ、読みながらあの時々の光景がフラッシュバックしました。
 アジアカップでPKまでもつれ込んだ韓国との激闘。スタッフが下を向いて祈ってる中、ザックはまっすぐGKの川島を見ていました。覚えていますよ、私は。スーツのポケットに手を突っ込んでいたことまで覚えています。
 あるいは、W杯予選での北朝鮮アウェイのあの異様な雰囲気であるとか。
 この代表チームの活動中には、東日本大震災もありましたし。そしてブラジルでの涙の解散・・・
 結果は伴いませんでしたが、改めて本書を読んでみて思い返すと、いいチームだったと思います。
 今になって、「ザッケローニありがとう」と心から思うことができました。
 それは通訳という監督ともっとも密接な関係を持った著者の言葉によって、いかにザックが懸命に日本代表チームに心血を注いできたかということがわかったからです。

 著者の矢野大輔さんは、15歳でイタリアにサッカー留学。選手としては挫折したようですが、そのままイタリアに住み続け、名門トリノで大黒将志の通訳を務めていました。そのときの監督がザッケローニでした。
 その縁で、代表チームの通訳にザック自らからスカウトされたようです。2010年9月6日のことでした。
 監督がイタリア人に決まって、通訳どうするんだろ? というような話がテレビで言われていたことを私も覚えています。
 冗談ですが、中田英寿や、名前忘れましたがイタリア人のタレントなんかの声も上がっていましたね。

 ザックジャパンの成績は、4年間で全56戦31勝12分13敗でした。
 最大の目標であったW杯は1分2敗で予選敗退しましたが、アジアカップ優勝は誇っていいと思います。
 アギーレやらでドタバタした今回はベスト4にすら進めませんでしたからね。
 親善試合ですが、敵地でフランスとベルギーに勝ったことも痛快でした。
 しかし、W杯で失敗すれば、それまでの健闘も水の泡。それが今のサッカー男子代表の世界ですな。
 本書を読んだ限りにおいて、どうしてザックジャパンが結果を得られなかったということを推測すれば、一番の原因はザッケローニがクラブチームの監督歴しかなく、国の代表チームを率いた経験がなかったことにあるのではないでしょうか。
 クラブチームなら時間と情熱をかけて選手個別に指導できても、たまに招集される代表にはその時間はないのです。
 これを読んではじめてこの当たり前の事実を理解できたんですが、全然違うもんですねクラブと代表とは。
 選手は時間の大半をぞれぞれのクラブチームで過ごしているわけです。給料もそこから出ています。
 日本のJリーグと欧州リーグではスタイルも違えば、やっているシーズンの時期も違う。
 そこから国籍が日本であるという理由で世界中から選手が代表に集まってくるわけですから、疲れている選手もいて当たり前だし、それでもひとつのチームとして皆同じ方向を向いて同じ戦術で戦っていくのは大変ですよ。
 ザックは最後まで、自らの得意システムである3-4-3をやりたかったのです。
 「サッカーは新しいシステムを作ったものが勝ちだ。止め方がわからないからだ」というのがザックの持論だったそうですが、なるほど3-4-3はセンターバック3人を配置することで空中戦に強く、サイドMFは高い位置から攻撃が始められ、3トップがより攻撃に専念できるシステムです。多くのメリットがあります。
 しかし日本代表には馴染みませんでした。親善試合では何回も試していたのに、うまくいきませんでした。
 これは、日本人選手の能力のせいではなく、ザックがシステム戦術をチームに落とし込める時間がなかったからだと思います。
 そして、時間のない中で、クラブチームの監督がするような、多すぎる情報を選手たちに与えてしまった。
 そのことが、選手たちを頭でっかちにして、本来のプレーを制約してしまったのではないかと思います。
 日本はブラジルで予選を勝ち抜く力はありました。もう少し時間があったなら・・・
 Jリーグも大事なので難しいでしょうが、この前の前のチェアマンだっけ? が言っていた開催シーズン移行のような大胆な改革の姿勢が、日本代表に本当に結果を求めるならば必要なのではないでしょうかね。
 もちろん代表よりもおらがクラブチームというのも、真ですからね。
 あるいは、戦術を練る時間がないならば、無駄なポゼッションよりは、代表というのはカウンター一直線という守備的戦術が向いているかもしれませんし。


 
 
 
 

 
 
 
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