「土漠の花」月村了衛

 ソマリアでの海賊対処活動を続けている日本の自衛隊。
 実際に海に出て海賊とやり合うのは海自だが、ジブチにある活動拠点の警護と管理は、警衛隊として陸自の空挺部隊が請け負っている。猛訓練を積んだ習志野空挺団だ。
 その日、CRF(有志連合海上部隊)の連絡ヘリが墜落し、警衛隊(空挺)に救助要請が入った。
 場所は、ジブチのエチオピア、ソマリア国境に近い土漠である。
 ソマリア国境地帯は、無政府状態が続き氏族間の抗争が絶えない。ソマリアでは、6つの大きな氏族が無数の小氏族に細かく枝分かれして際限ない内紛を何十年も続けているのである。
 通常ならば、米軍のレンジャーが向かう事態だが、米軍はソマリア最大のイスラム武装勢力アル・シャバブへの掃討作戦で人手が足りず、自衛隊にお鉢が回ってきたのである。
 捜索隊長吉松三尉以下緊急救命陸曹一名を含む12名の空挺隊員が、軽装甲機動車2台、高機動車1台に分乗して現場に向かった。 拠点から約70キロ、岩山に激突したヘリの乗員はすべて死亡していたが、遺体回収のために明朝まで現場で野営することになった。
 そして、事件は起こった。
 深夜、捜索隊の野営地に地元氏族のスルタンの娘を名乗る女性が逃げ込んできた。そして、彼女を追ってきた別氏族の民兵たちが、彼女を匿おうとした捜索隊を問答無用に銃撃してきたのである。虚を突かれた捜索隊員はたちまちのうち吉松隊長以下5名が無惨に射殺された。
 荒涼としたアフリカの土漠で、自衛隊全体にとって間違いなく初めての経験であり、陸上幕僚監部や防衛省ばかりか海外派遣を決めた日本政府にとっても、まったくの想定外の事態が突如、勃発したのだ。
 危機一髪のところで敵民兵を反撃掃討した友永、新開両曹長以下7名の生き残り隊員は、氏族の姫君であるアスキラを連れて拠点に帰り着くばくアフリカの土漠を漂流するが、石油を巡る氏族間の抗争に巻き込まれていく・・・
 砂塵嵐をともなった高温風であるハムシンなどの東アフリカ土漠特有の自然災害、ソマリア民兵による執拗な追跡、そして隊員間の思わぬ不仲。はたして、彼らのうち何人が無事に土漠を抜け出すことができるのか!?

 土漠とは、砂漠ではなくてゴツゴツした岩石が広がる東アフリカ独特の乾燥地帯のことみたいです。
 砂の代わりに、石礫なのでしょう。
 当然ながら、集落やブッシュ以外に身を隠す場所などありません。
 そこで追いつ追われつの戦闘が起きるとどうなるか。
 ソマリアはマジでリアル北斗の拳の無法地帯ですからね。
 自衛隊の活動拠点である隣国ジブチや、1990年代に国際的にほぼ非承認ながら独立した西部のソマリランド(本作の参考文献として高野秀行の書籍あり)は比較的安全ですが、それ以外はいつ殺されてもおかしくありません。
 本作は小説ですけども、あの程度の武装の捜索隊では出動できないでしょう、実際ならね。
 まあしかし、いい意味でエンタメといいますか、自衛隊とソマリア民兵の戦闘という現場のアクションだけでほぼ90%完結している小説ですから、難しいごちゃごちゃしたこと考えないですむのがいいかもしれないですね。
 悪い意味では浅いんですけどね、物語が。首相が真っ青になってひっくり返るとか政治的なものが出てきませんからね。
 最後に少しだけ後始末というか政治的な処理が出てくるんですけど、現実的でブラックでした。
 ひょっとしたら、こんなことが昔にもあって国民に知らされてないだけなんじゃないの? と思えたり・・・まさかね。
 アクションシーンは、この方、前にも思ったことありますが、うまいのかうまくないのかわかりません。
 ひとつだけ良かったところは、RPGという有名な対戦車擲弾砲の後方噴射(バックブラスト)で後ろに迫っていた敵兵が瞬時に焼け死に、弾頭は発射後15メートル以内では爆発しないために前にいた敵兵の頭をもぎ取ったシーン。
 それくらいかな。土漠で元族の自衛隊員がバイクを乗り回すのは陳腐でした。
 あとひとつ。
 自衛隊員は公務員のなかで一番自殺が多いらしいです。
 本作に書かれているようなことが実際にあるのならば、本当にアイデンティティのない職業なんだろうなと思います。
 偶然ですが今日、安保法案が可決されましたね。
 さて、どうなる?


 
 
 
 
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