「旧石器捏造事件の研究」角張淳一

 2000年11月5日に発覚した旧石器捏造事件の真相を探る考古学ノンフィクション。
 著者である石器分析会社代表取締役・角張氏は2012年に52歳で亡くなっています。
 捏造犯である門馬新一(旧姓・藤村新一)とは20年来の付き合いであったというだけに、苦しかったことでしょう。
 遺書のつもりで読みました。
 その結果、驚くべきことが書いてありました。
 もう、藤村新一のことなんて木っ端に吹き飛ぶほど、とんでもない推測が書いてありました。
 どうして、この事件は誰も告訴しなかったのでしょうか。
 私たち日本民族のルーツをいたずらにこねくり回した、重大な裏切り行為であるのに。
 まあ確かに事件発覚当時は私もそれほど気にはならず鼻くそをほじくって「ふーん」状態でしたが、仮に、いやおそらく高い確率で著者の言うとおりなのでしょうけど、こんな真相が隠されていたかもしれないなんて、とんでもないことです。
 それこそ、藤村新一の単独捏造説なんて氷山の、表層の一角みたいなもんです。
 地層の表土から、土器片がわずかに頭を覗かせているみたいなもんです。
 考古学とは、いかめしい学問というよりも山師の集うファンタジックアドベンチャーだったのでしょうか?
 ただのロマンチックなオナニーストの集まりですか?
 本当に、腹が立って仕方がありません。
 もう原人や旧人の分野であり我々ホモ・サピエンスに直接繋がらない前期・中期旧石器の猿の跡形は、これ以上学術としてやるのならば考古学関係者には触らせず生物学者にでも任せたらどうでしょうか。
 どうでもいいでしょうよ、猿の石ころなんだから。猿の石ころがホンモノかニセモノかなんてほんとバカらしいよ。
 前期旧石器(原人・10数万年~30万年以上前)→中期旧石器(旧人・3万年~16万年前)→ときてやっと後期旧石器(新人・3万年前~1万年前)→そして縄文期の土器文化ですから。
 意味ある? 考古学にとって、前期旧石器は意味ある? 私はないと思うし、このような考古学の信用をまったく失墜させる事件が起きたのは、分不相応な時代に頭を突っ込んだからだと思いますよ。
 
 考古学とは、発掘調査をし、発掘調査報告書を作り、歴史の基礎的な事実を調べる経験科学のはずです。
 つまり、発掘された事実を根拠として直接見ることの出来ない歴史を推測することが本来の役割です。
 それが、いつのまにか分析のともなわない解釈が進行し、一部の学者の学説を裏付けるために発掘が捏造されたとしたら、どうでしょうか? 物語が先に作られ、データが後から出てきたら?
 その学者の学説通りにならないといけないから、そうなるように石器を埋めたとしたら?
 プソイドサイエンス(ニセ科学)。ここに書いてあるのはそういうことですよね。
 藤村新一という人間は、地層を読んだ石器の発見のみの人で、石器の実測図を書くこともできず石器の説明もできないド素人でした。これもなんだかおかしいですけどね、25年間も発掘を捏造していた人間が石器のド素人というのも。
 このような石器に興味のない人間が、旧石器を専門にする考古学者が見抜けない石器を捏造できるでしょうか。
 素人ではできないですよ。現に、1990年代半ばを境に捏造石器はガラッと趣を変えているのです。プロ仕様から素人へと。
 ですから、1975年から1990年代半ばまで藤村には共犯者がいたというのが著者の推測です。
 この共犯者らしき人間は、本書に書かれています。東北の雑魚から文化庁の主任技官だったビッグネームまでいます。
 藤村新一はただのピエロであった、というのが著者の主張です。
 事件後、精神病ということで世の中から身をくらませたのも、後ろにいる真犯人の仕業だそうです。
 藤村は再婚で姓が変わっているので、新しい名前を宮城県議会で突き止めることからこの本の感想を書くことは始まったのですが、「石の虚塔」(カテゴリー・アンダーグラウンド参照)の参考文献的な気持ちで読んでみた本書が、まさかこんな爆弾だったとはもう、ビックリですよ。

 2004年、事件を検証した日本考古学特別検証委員会は、藤村個人の単独犯行であり、一過性の事件であると結論づけました。発覚より前にネット上に疑惑の論文を公表した著者は、自薦で検証委員会に入りますが相手にされなかったそうです。
 委員長である戸沢充則元明治大学学長は唯一、藤村と面会し、大部分が黒に塗りつぶされたCIAの機密文書のような告白文を作ったそうです。
 本当の黒幕はいったい誰なんでしょうか。
 ただ、猿の石ころの真偽は見抜けないですよ。学者だから見抜けるという前提がおかしいです。
 ここには美術史の贋作との戦いが例に出されていましたが、著者はあまり知らなかったのでしょうが、権威ある欧州の美術財団でもコロッと騙されているのが実情です。美術品だから鑑定方法がしっかりしていて石器の型式学的研究が幼稚な考古学とは違うという見識は成り立ちません。
 フェルメールが見抜けないのに、猿の石ころが見抜けるわけないでしょう。
 これはプラダやヴィトンのニセモノが見抜けても、ミラ・ショーンやイヴ・サンローランは「はいスルー」であるのと同じなんです。


 
 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
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