「百年文庫 駅」ヨーゼフ・ロート/戸板康二/プーシキン

 百年文庫ナンバー37は『駅』。
 収められた3篇の「駅」に関する物語の面白さはまずまず。
 中でも、演劇評論家から推理小説家になって直木賞を受賞した戸板康二の作品「グリーン車の子供」は、新幹線の車内と演劇界という無機質と有機質が融合されたような、一風変わった仕立てのミステリー小説で、古い作品とはいえその新鮮さに驚きながら興味深く読むことができました。
 戸板康二は、かの江戸川乱歩から「探偵小説は小説家志望青年よりも、かえって多方面で一家をなした人が、余技として書いた場合に成功率が多い」と白羽の矢を立てられたそうです。
 これを読んで、なるほどと思いましたわ。
 最近だと、お医者さんの書くミステリーが専門性が高くて人気ですよね。
 専門性という意味からはずれますが、東野圭吾や森博嗣は理系の人間だし。
 他にもたとえば、考古学者とか気象学者、宇宙飛行士、潜水艦乗組員、漁師さんなんかがミステリーを書かれると、小説というものの幅が広がって面白くなると思います、私は。
 その仕事をしている人でなくてはできない発想って必ずありますよね。

「駅長ファルメライアー」ヨーゼフ・ロースト(1894~1939)
 ウィーンから2時間とかからぬちっぽけな駅で、1908年から駅長をしていたアーダム・ファルメライアーの奇妙な運命。
 双子の女の子の父親であり、律儀な官吏であったファルメライアーの身に何が起こったのか。
 それは、1914年3月のある日の惨事に端を発する。駅で急行列車が待機中の貨物列車と衝突したのだ。
 混乱する事故現場で、ファルメライアーは担架に乗せられたひとりの異郷の女性に目を奪われた。
 彼女はロシアの伯爵夫人であり、夫の待つイタリアのメラーノまで行く途中だった。
 怪我の癒えた彼女はしばらくして旅立っていったが、ファルメライアーは彼女を忘れることができなかった。
 やがてヨーロッパを戦火が襲う。第一次世界大戦の勃発だ。軍事総動員令で軍務についたファルメライアーは勇敢な兵士となった。、ロシア語を勉強し、ロシア方面に配属にされた彼が追う影は・・・

「グリーン車の子供」戸板康二(1915~1993)
 老優の中村雅楽に付き合って大阪まで付いてきた竹野は、神経痛で7年間舞台から遠ざかっていた80歳の彼が、復帰の話を持ちかけられて悩んでいると聞いて驚愕する。ぜひとも我楽の舞台をもう一度見てみたい。しかし我楽は、一緒になる7歳の子役の男の子が気に食わないという。
 結論が出ないまま、東京に帰る新幹線「こだま」に乗り込んだふたり。なぜか大阪の支配人の用意した席は別々だった。新大阪で我楽の横にはお人形のようなおとなしい女の子が座り、竹野の横には京都から和服を着た40歳くらいの女性が乗り込んでくる。
 名作です。1976年日本推理作家協会賞受賞作(短編部門)。
 どうしてオモチャに関心を示したのか。なるほどね・・・


「駅長」プーシキン(1799~1837)
 19世紀初頭ロシア。駅と駅は汽車ではなく、馬で結ばれている。
 レールは駅馬路、運転士は御者。そして駅長は十四等官という低い階級だった。当然、苦労も多い。
 1816年の5月、語り手はある駅でそこの駅長とその娘ドゥーニャに出会い、楽しいひとときを過ごした。
 それから3,4年後、再び語り手が駅を訪れたとき、かつては元気だった駅長のシメオン・ヴイリンが、弱々しい老人に変わってしまっていた。聞けば3年前、騎兵隊の士官がヴィーニャを見初めて仮病まで使い、奪い取るように連れ去ってしまったのだという。駅長は諦めずにふたりの行方をたどり、ペテルブルグに向かうのだが・・・
 今から200年くらい前の小説です。
 インフラは大きく変わりましたが、変わらないのは人間です。これは200年後も同じことでしょう。



 
 
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