「地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい。」椎名誠

 「SFマガジン」に2008年から2014年まで連載されていたエッセイからの抜粋。
 当然、SFっぽいのが主流ですが、マニアックな映像機器の話や、おなじみの「世界の辺境にいったら、わし、こんな大変な目にあったわ」みたいな紀行文もあります。
 面白いのは、やはりこの人の場合、酒のんでワイワイの旅日記ですね。
 SF小説もたくさん書いていますし、SFを好きなのは知っているんですが、私はどうも苦手だなあ。
 というかね、椎名誠のせいでって言ったら悪いですが、この人の書いたものにハマって、「酒さえ飲んでいたら人生はなんとかなる」と思って廃人路線を進んでしまった人間は、日本に5万人はいますよ。
 それくらい、面白かったですからねえ。
 でも最近になって思うのは、この人は実は神経質で繊細だったんじゃないかということです。
 世界の隅っこにまで旅して豪快に酒を飲むイメージとは、実像は違ったんじゃないかなあ。
 おそらくあれは、椎名誠がこうありたいと望んだ姿の投影だったんじゃないでしょうか。
 もちろん、腕っぷしが強くて酒も強いのはその通りなんでしょうけど、なんか食い違うんですよね。
 こう思うようになったのも、私も大人になって世の中が見えてきたということなんでしょうか。

 では、少し内容の紹介を。
 少し長めと言っても一編読むのに何十分もかかりませんが、エッセイがぜんぶで18篇。
 うれしいのは、参考にした本がたくさん明記されていること。
 この椎名誠の話を読んで、さらに興味が湧けばそれらの文献を読めばいいわけです。
 私がメモしたのは、
 「サイエンス・インポッシブル」ミチオ・カク  これは有名ですね。
 「リプレイ」ケン・グリムウッド タイムトラベラーSF。
 「ゾウの時間ネズミの時間」本川達雄 おそらく生物進化関係
 「絶対帰還」クリス・ジョーンズ 宇宙ステーション脱出の話みたいです。
 など。
 特にミチオ・カクのは数年前から気になっていたまま、忘れてました。

「こたつにあたって秋田犬は何を話すか。」
 20世紀初頭(おそらく1900年?)に、報知新聞(現讀賣新聞)が20世紀中に実現するものの未来予測をした。通信販売やエアコン、新幹線など当たっているものもたくさんあるが、外れたもののなかに、動物と会話できるようになるというのがあった。そこから作者の空想が広がる。
「回転する木、または逃げる木。」
 アマゾンのジャングルがどんどん消失しているように、地球の木はこのままでは早晩滅びる。しかし植物も絶滅しないように変化している。ライオンゴロシという、ライオンに寄生して種子をバラ撒く恐怖の植物の話は怖かった。
「世界三大獰猛蚊にヤマトナデシコ蚊は歯がたたないか。」
 著者が出会った世界三大蚊は、大群で襲撃するシベリアの煙幕蚊、音を立てないカナダのサイレント蚊、ハチのように大きいアマゾンの巨大蚊。日本の生物は、外来魚に勝てない湖の魚とかもそうだけど、弱いよね。
「人間とアリンコの本質的な違いをふたつあげてみなさい。」
 自分が死ぬことを意識しているかどうかが、人間と他の生き物の違いらしい。自分の死を意識してしまうことは、自分の未来を考えてしまうことである。ずっとエサを運び続ける働きアリが、もし自分の未来を考えたならば、そのまま死ぬまでエサを運び続ける自分の人生が嫌になって逐電するかもしれない。
「ほらホウキ星が氷を売りにきたよ。」
 地球を1メートルに喩えてみると・・・大気は1ミリ、一番深い海溝は0.9ミリ。淡水はわずか17CC。そのうち凍ってない循環している水は、5CC。たったスプーン1杯程度でしかない。しかもこの量は増えない。地球は脆弱な星である。
 ちなみに、アポロのいった月は直径1メートルの地球から30メートルほど離れたところを回っている。
「海浜自由生活者はいまどこをさすらうか。」
 かつて西表島の海浜には、たくさんのホームレスが住み着いていた。行政に追い払われた彼らは、どこに消えたのか。
「なぜ鼻がもげ、火は熱くなく、水を飲むと死ぬのか」
 北半球で一番寒いといわれるシベリアのオイミヤコンに行こうとしたが、飛行機が飛ばずに途中のウスチネラで缶詰になった。ここも寒い。マイナス52度。しかもホテルの便所は糞まみれである。
「カリブー丼屋をはじめたら1キロの行列ができるのだ。たぶん。」
 肉の中では牛が一番うまいなどと言っている日本は、完全な食肉後進国である。
 世界で一番うまいのは、たぶん、鹿の親戚であるカリブー。イヌイット(エスキモー)は、カリブーの生肉を食べ、生血を飲んでビタミンを得る。アザラシも脂が強いが、生で食べると噛みごたえがあってうまいらしい。世界の動物食の話。
 著者曰く、馬肉食(日本やフランスなど)と犬肉食(韓国)は、世界的にみてヤバイ? らしい。


 


 
 
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