「サイタ✕サイタ」森博嗣

 Xシリーズ第5弾です。
 S&Mからの一連の流れは、いまのところGとこのXのシリーズが続いているわけですがね。
 まあ、刊行間隔が長いので、ほぼ前作の記憶がなくなっていますが、これは仕方ありません。
 だから偉そうなことは言えないわけですけども。覚えてないんだからね。
 でも、私の感じとしては、一連の大河的な流れはすべて「真賀田四季」を巡るものであって、その点、Gシリーズのほうは彼女の影が濃厚に感じられ、以前からのシリーズキャラクターも頻繁に登場するのに対し、このXシリーズは独立しているというか、「真賀田四季」を辿るにしてはずいぶん遠回りしているような気がしますね。
 もちろん、椙田泰男こと保呂草(下の名前なんだっけ)が経営する探偵事務所SYアート&リサーチ(東京のW大に就職した西之園萌絵に見つかりそうになったために名称を変更した)に関する面々がメインキャラですし、椙田は滅多に事務所にいないし、たまに小川令子が電話しても忙しそうだし、この物語が独自に進んでいる裏で密かに何かが進行しているのは感じられるんですけどね。ただ泥棒してるだけだったら別ですが。
 でも本作もそうですが、表で発生する事件に関しては、独立してるっぽいと思うなあ。一概には言えませんが、それが率直な感想です。もちろん、佐曾利隆夫がマンションでどう生活していたのか謎だったし、国会議員の島純一郎を尾けて発進したクルマは何だったのか、などの疑問も残るんですけど、それらが後に繋がっていくとはなかなか思えません。
 ただ、独立してるにしても、このシリーズの話は特徴としてちょっと気色悪いのが多いんですよね。
 これも、ストーカーだし、火付けだし、なんだかドロッとして嫌な話ではありました。

 では、少しだけあらすじ。
 爆弾魔チューリップによる謎の連続発火事件“サイタ サイタ”で、この1ヶ月のあいだ不穏な都内。
 椙田の探偵事務所に妙な依頼がメールで届いた。もちろん、事務所には小川令子しかいない。
 その依頼とは、「ある人物の行動を1週間見張ってほしい」というもの。
 言われた通りのお金は支払うが、依頼人は、自分の名前や身分は明かせないという。
 行動調査の対象となる人物は、佐曾利隆夫という、三十代の男である。
 佐曾利は、東大出のインテリだが今は無職で、2年前に離婚し、マンションでひとり暮らしをしていた。
 しばらく仕事がなかった小川は、椙田に了解をとってこの依頼を引き受けた。
 といっても、ひとりの人間を見張るには、ひとりでは無理である。
 バイトの真鍋瞬市と、彼と同じ芸大の永田絵里子に応援を頼んだ。
 さらに、この後、探偵の鷹知祐一朗も引っ張り込むことになる。つまり、いつものメンバーである。
 でもまさか,これが大事件に発展して、自分も炎に巻かれて死にかけるとは、そのときの小川は思ってもみなかったのである・・・
 当初は元妻へのストーカーふぜいと思われていた佐曾利隆夫への調査は、やがて都内連続発火事件との関連が怪しまれ、さらに思わぬ連続殺人事件へと繋がっていく。

 人によって色々でしょうが、私はまずまず面白いお話だったと思います。
 特に、依頼人はいったい誰なのかというミステリーが上手な牽引役になっていたので、サクッと読めました。
 やっぱ、ミステリーにはそういうページを捲らせる牽引役というものが必要だと思いました。
 あいかわらず、会話はとても巧いし、楽しいし。
 少し、内容はわかりにくかったけどね。
 殺人はともかく、佐曾利隆夫の火付けの理由というか、動機がはっきりしません。
 ただのストーカー被害者だと思われていた野田優花の、売春宿的な変転もしっくりきません。
 つまり、作者はそういった、「動機なき犯罪」の怖さが言いたかったのかな。
 表の顔と裏の顔というか。
 裏の顔しかないとかね。
 できれば、裏表なく生きていきたいものです。

 さて、森博嗣といえば、「クーラ」とか「ティーチャ」とか「エレベータ」「クローラ」「フューチャ」など、最後の「ー」を表記しないことが特徴的なんですが、本作で例外を見つけました。
 「コーヒー」。これって、犀川創平はコーヒー好きだったような気がしたし、私が今まで気付かなかっただけなんでしょうね。今頃になって・・・(笑)


 
 
 
 
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