「灰色の虹」貫井徳郎

冤罪。
想像するだに身の毛がよだちませんか。
たまに現実でも起こったりしてるじゃないですか。無実なのに有罪とされて刑期まで終えてしまった人とか。
その裏で真犯人がのうのうと世間を泳いでいるのかと思うとなんともやりきれない思いがします。
同時にもしも自分が冤罪という濡れ衣をきせられて、届かぬ叫びを響かせることを想像しただけで苦しい思いがします。
本作「灰色の虹」はそんな冤罪の絶望的な思いをしっかりと知らしめてくれる一冊です。

貫井徳郎(ぬくいとくろう)は地味ですが、いぶし銀のような重厚な作品を書いているイメージがあります。
私の中では、特に捜査本部の雰囲気、刑事捜査の過程を描くのが抜群にうまいという印象があります。
もちろん警察小説の枠にとどまらず「明日の空」みたいな青春ミステリーも守備範囲ですし、要は何でも書ける、と。
本作を書くにあたっても「冤罪」が発生する道程をしっかり取材しているのでしょう、読んでいて構成に安心感がありました。
もちろん中の物語は腹の立つ苦しい話なのですがね。
刑事、検事、弁護士、裁判官、目撃者。
彼らが冤罪を発生させ、あるいはそれを助け、そして復讐の標的となることには是でも非でもありませんが、私の読んだ感じでは、目撃者(雨宮)に対して一番腹が立ちました。次に刑事(伊佐山)ですね。
どうして作者が目撃者だけ助けてしまったのか理由はわかりませんが、一番先に死んでもらいたかったですね。
たぶん読者の大半はそう思うでしょうから、逆に作者がそうすることによってますます絶望的な作品に仕上がっており、それはたぶん意図されたことなのでしょう。
そしてラストに「PAST0 2002」があることによって救いようのなさにダメをおされていますね。
本当にこれは小説であって良かった、と思える物語です。
読み終えて見上げた春空は何色だったでしょうか。私はまさしく灰色でした。

関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示