「スカイ・クロラ」森博嗣

 ついに、ラスボスの「スカイ・クロラ」(The Sky Crawlers)を読みました。
 ついでに映画も少し観ました。ササクラが女性だったのに萎えましたが。
 シリーズの刊行順では最初ながら、時系列では最後になる作品。
 読むタイミングに悩みますが、約10年前のリアルタイムならともかく、今だったら物語の中の時系列の順でしょうね。
 ですから、私も「ナ・バ・テア」(カテゴリー冒険ロマン・ミステリー参照)から読み始めたわけですが・・・
 結論から言えば、シリーズを楽しむという点において、それは少し失敗だったかもしれませんね。
 本作は、シリーズの最初に読むか最後に読むかで、著しく感想が異なると思われます。
 私的には、本作を先に読む方が、想像が広がったんじゃないかと思いますねえ。
 もちろん、これを先に読めば、頭の中が「???」になったでしょうが、それでも良かったんじゃないかなあ。
 本作を後にもってくることによって、読み方が限定的になるんですよ。
 ネタバレを求めてしまう、ということです。前作の「クレィドゥ・ザ・スカイ」の謎がハンパじゃないだけに。
 たしかに、兎離州基地のゲストルームは、過去にサガラが住んでいたログハウスに違いないみたいな小ネタがわかるのはいいのですけども、本シリーズの最大の謎は、キルドレという不死の人間の存在に絡む、クサナギとクリタとカンナミの関係性の謎なんですね。そりゃ、この世界はいったいどこ? とか何と何が戦っているのか? というある意味ファンタジックな興味は尽きませんが、「クレィドゥ・ザ・スカイ」とはいったい何だったのか、がスカイ・クロラのツボなのです。
 本作を最初に読んだ方は、「クレィドゥ・ザ・スカイ」が最後になるということですからね。
 それを一冊前に読んだのか、最後になったのかで、ずいぶんと違いますよ、きっと。
 本作を最初に読んでから過去に遡って謎をゆっくり紐解いていくのか、本作ですべてを求めようとするかの違いです。
 もちろん短編集とはいえ刊行順では本当の最後となる「スカイ・エクリプス」を読めば、また違うかもしれません。
 シリーズ全体の感想は、「スカイ・エクリプス」を読んでからにするつもりですが、とりあえず本作「スカイ・クロラ」を読んでわかったことを書いておきます。

 まず、あらすじですが、主人公は戦闘機パイロットのカンナミ・ユーヒチです。
 カンナミが配属になったのは、兎離州基地。パイロットはたった4人。指揮官は草薙水素。
 草薙水素は、20代後半に見える女性。メガネをかけています。かつてはエース・パイロット。
 カンナミの機体は機銃が胴体についた散香マークB。腕利きの整備士である笹倉がいます。
 同室のパイロットは、土岐野。初めての出撃で、敵を撃墜したカンナミは、土岐野に連れられてカフェみたいな場所に行きますが、そこでピンクの髪をしたフーコに初めて出会います。
 フーコは意味深なことを言いました。「ということは、ジンロウは死んだってことだね」と。
 実は、カンナミの前任者のパイロットが、クリタ・ジンロウ(栗田仁朗)という人間でした。
 1週間くらい前に、ジンロウは死んだのです。
 噂によれば、草薙水素に銃で撃たれて・・・

 この後、いったん兎離州基地の面々(湯田川は戦死したので、草薙、カンナミ、土岐野、篠田)は、ある作戦のために違う基地の航空隊と合流します。山極麦朗をリーダー、三ツ矢碧をエースとするプッシャ双発戦闘機隊です。
 黒豹のペイントをしたティーチャを含む敵との大空戦を終え、今度は逆に消耗した三ツ矢らが兎離州基地に合流します。
 ここで、カンナミは、三ツ矢碧から衝撃的な告白を受け、衝撃的な行動を起こすことになります。

 以上が、草薙とカンナミのややこしい人間関係などを除いた、本作の大まかなあらすじです。
 ネタバレでもっとも重要だったのは、クリタがカンナミになったということ。
 クリタをもう一度再生して、新しい記憶を植えつけて、カンナミが作られました。
 なぜなら、腕の良いパイロットだったクリタの技術は惜しかったからです。
 本文中に、「撃とうと思ったときには、すでに次の目標を見たほうが良い」という言葉が出てきますが、これは聞き覚えのある言葉ですね。草薙が若いときに言っていた言葉と同じです。
 ということは、キルドレというのは、20年前に遺伝子制御剤の開発の過程で生まれた不死の人間とのことですが、記憶障害を持っているということを言い換えると、彼ら彼女らは記憶を操られているということなんだと思います。
 人工的に、エース・パイロットの記憶が引き継がれて、次のエースが作られているんじゃないかと。
 戦死しないかぎり死なないキルドレは、例えれば養殖された人間であり、戦争の道具として利用されているのです。
 そりゃいったいどんな世界でしょうか。書かれているところでは、ジェットエンジンが50年前の戦争でヨーロッパで開発された、とありますから西暦2000年前後の地球であることは間違いないでしょうが、そのジェットエンジンが何十年も前に、実用化が諦められて今だにレシプロ機が飛んでいるのですから、未来がどこかで枝分かれしたもうひとつの地球ということではないでしょうか。このへんは、いまだに確かなことはわかりません。
 キルドレに限ったことかもしれませんが、神に祈る(宗教法人)か、それとも殺し合い(戦闘法人)をするしかない、とも書かれてもいます。
 それはともかく、作者の狙いは本当なら、キルドレという永遠の生命を持った存在をメタファーとし、生とは死とは何かを追求した作品だったのでしょうね。
 本作を最初に読めば、それができたかもしれません。
 本作を最後に読んだために、ネタバレが気になって、それができませんでした。
 私の言いたかったのは、そういうことです。


 

 
 
 
 
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