「ずっとあなたが好きでした」歌野晶午

 清少納言によると春はあけぼのだそうだが、恋もはじまりの時が一番だ。
 ステージに上がる時のような緊張感と高揚感がたまらない。
 恋なんて、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。
 うまくいかなかったからといって、嘆くことも涙にくれることもない。
 新しい恋を見つければ、はじまりの時の格別さをまた味わえる。


 よいですなあ。いくつになっても、人間は色気がなくてはなりません。
 人気ミステリー作家歌野晶午による、青春・恋愛ミステリー。分厚いですよ、590ページくらいある。
 表向き(!?)は13篇の物語から出来ておりましてね。10歳から60歳くらいまでの恋バナ。
 短編はそれぞれ頭からまったく新しい話になりますから、とっつきにくいんですよ。
 いくら歌野晶午が筆力抜群、会話が巧くて、キャラクター設定の天才といえどもね。
 12月は色々とまあ、酒とか飲み会とか忘年会とかひとり酒とかで忙しいから、読みきれないかと思いました。
 本作に秘められた衝撃の事実に気づくまでは・・・(≧∇≦)
 そういうことだったのか! やられたあ~、なんてね。ページが進むし、前の話も気になるし。
 これ、最初から計画的にやったのか、それとも後付けなんでしょうか。
 最期から二つ目の「錦の袋はタイムカプセル」でネタバレされるんですが、この作品は書き下ろしなんですよね。
 だから・・・どうかなあ。私は後付けだと思うけどねえ。
 タイトルの「ずっとあなたが好きでした」は冒頭の話のタイトルですが、結局、全編通して一番ふさわしいタイトルは、これですよね? 主人公がずっと好きだったあなたの、イニシャルはMKです。
 最初から計画されていたネタならば、最初の話にこのタイトルを付けていないと思います。
 まあ、こういう趣向はよかったですわ。それぞれの話も、独立した短編としても面白かったですし。
 ネタがバレてからは、もっと面白く感じられました。

「ずっとあなたが好きでした」
 夏休み。中学3年ながら、黙って神戸のスーパーマーケットでアルバイトを始めた大和。ふたつ年上の七瀬三千穂という高2の女の子と仲良くなり、恋をしてしまうが、売り場の主任が二人の仲を引き裂こうとする。
 恋とは想像の賜物である。相手のことをあれこれ考え、気分が高まったり落ち込んだりする心象風景が恋である。
「黄泉路より」
 波瀾万丈の人生。大手企業で取締役、独立して没落、離婚した55歳の五十嵐は、自殺サイトで知り合った3人の男女と、富士の樹海で練炭自殺を試みる。しかし、ひとりの女性に対して恋愛感情が湧いてしまう・・・
 ほとんどは第一印象で決まるのです。恋愛に限らず何事も。
「遠い初恋」
 小樽第二小学校。東京から転校してきた美少女の名前は有坂弥生。美人で勉強ができて大邸宅に住んでいる。貧乏な弓木は、我が家との格差を感じながらも、弥生に憧れる。そして弥生のネックレスが盗まれる事件が起きた。
 夢というものが、目覚めるとあれよあれよという間に色あせていくように、恋もいつのまにか消えていく。
「別れの刃」
 大学の演劇サークル。たった一人の1年生である板橋継世は、憧れの女先輩からは相手にしてもらえず、妄想のシナリオを膨らませていたが、飲み会でなんと12年生という古株の女先輩と知り合い、恋に落ちてしまう。
 男女の関係を神聖視するのは欺瞞である。
「ドレスと留袖」
 永嶌(ながしま)は、総合アパレルメーカー・グロウシスの名古屋支社副支社長。社長の御曹司の結婚式に夫婦で招待されたことから、支社内でやっかまれ、妻の佐和子が何者かにつけられる事態に・・・
「マドンナと王子とキューピット」
 母の再婚で高1の6月に広島に越してきてから1年。孤独をラジオで紛らわせてきたDJマイケルは、ラジオ番組の常連投稿者になった。ある日、クラスメイトから、通勤通学の途中で見初めた名も知らぬ彼や彼女の仲を取り持つラジオ番組への投稿を頼まれる。
 美しい花は、時に、自分には手が届くわけがないと遠巻きに眺められ、誰にも摘まれずに咲き続けるものである。
「まどろみ」
 大輔と友里。大4の大輔は、就職が決まっていないことを理由に、友里の将来設計から逃げる。
 生理が来ないと言われて動揺し、来たと告げられて平穏が戻ったときに意識した。自分はこの女性を愛していない。
「幻の女」
 娘は二児の母であるという馬渡は、仕事帰りに公園で一杯やっているとき警察官に職質されるような人生だ。今は熊本の広告会社でチラシ配りのアルバイトをしているが、生活はカツカツだ。そのくせ嫌なことがあればすぐ酒に逃げる。チラシがはけなかったときなど・・・あるとき、馬渡の配るチラシを大量に引き取ってくれる謎の女に出会う。その正体は・・・
 トラブルに巻き込まれないためには、まず自分を正さないと。だらしなさは信用のなさに通じる。
「匿名で恋をして」
 インターネットの掲示板で交流していたハンドルネーム、パイ(π)とロレッタは、オフラインで会おうと決めた。通常の恋愛とは正反対のアプローチの結末は・・・!?
 女は何でもかんでも「かわいい」と言う。脊髄反射的に口から出ているだけなのだ。
「舞姫」
 青年は荒野をめざす、に憧れてパリにやってきて4ヶ月になるジョジョこと十條。恋人であるストリップダンサーのフランソワーズと一緒に住み、彼女に紹介してもらったブラッスリーで皿洗いをしている。ところが、そのレストランで事件が起きる。
 フランソワーズは、黒人だったのですね。
「女!」
 世之介こと十條大輔は、コンパで知り合った丸の内のOLと同衾中、旅行していたはずの友里が帰ってくる。
「錦の袋はタイムカプセル」
 小樽に帰ってきた馬渡こと弓木大輔は、老人デイサービスセンターで職を得、50年ぶりに樺島美由紀に出会う。樺島は、20年前に夫と死別し、認知症になった舅の介護をしていた。60歳になった大輔は樺島に対して今までの自分の人生を振り返る。大和は母親の旧姓で、今度は十條になり、4年間で姓が3回変わったこと。新しく父親になった人が広島に転勤し、大学で演劇サークルに入り、パイ(π)こと永嶌一葉と結婚し、大手企業のグロウシスで45歳で取締役になったものの、独立してからは下り一直線、五十嵐と名乗って集団自殺に参加したことなど・・・
「散る花、咲く花」
 樺島美由紀の舅が、病院に入院した。認知症の舅が死んだ息子の名を呼ぶため、大輔はその息子、樺島の元夫に成りきって病院についていく。いつも病院の近くにある花屋で一輪の花を買うのだが、病室で挿したとたんになくなってしまう。誰の嫌がらせか? 舅の腕に傷を発見した樺島と大輔は、患者虐待を疑うが・・・

 しかしまあ、振り返ってみると、大輔の人生は恋の連続ですね! 火野正平かよ。
 今度の苗字は、佐久間かな(笑)


 

 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示