「アパリション」前川裕

 現役の大学教授、前川裕(まえかわゆたか)の「アパリション」を読みました。
 アパリション=悪霊。
 この方はいつも作品のタイトルに、私程度の学力では辞書を引かなければわからない英語を使われます。
 アトロシティとか、クリーピーとか。まだ何かあったね、私は全部読んでいるはずです。
 その都度、勉強になっておるのですが、いつのまにかアトロシティーもクリーピーも意味を忘れています\(^o^)/
 まあ、タイトルに作者の個性が出ることはいいことだと思います。
 だいたいハードサスペンスというか、禍々しい系統の作品を書かれる方ですからね。
 そっちのほうはアメリカが本場だと思いますから、作者の専攻が国際比較文学であることも関係あるのかもねえ。
 
 で、本作ですが、今までで一番ミステリー色が強かったような気がします。
 気がしますというのは、どれも似たような雰囲気の作品なので、ほとんど内容を覚えていないのですね(笑)
 でも今回は、複数の事件がどう絡まっているのか、真犯人が誰であるのか、非常に気になりました。
 ハッキリ言って、174ページ(ハードカバー)の表情の暗い女が登場するまで、バラバラに展開されている事象というか事件の輪郭がまったくつかめず、それはそれで面白かったのですが、いかにも不気味というか、暗やみの廊下を手さぐりで歩いているような感じで恐かったです。出だし、のっけから気味悪くて不穏なスタートですしね。
 そう、導入はいつもながら巧いんですよ。
 ぽっと始まらない。いきなり読者の心をわしづかみにする、不穏で不気味な興味津々の冒頭。
 そしてバラバラに展開される事件。174ページにしてやっと、突破口というか、事件の真相の端っこだけが見えてきます。これも予想もしなかった展開でしたから、本当にびっくりしました。残念ながらその後の展開は、ちょっとわかりやす過ぎましたけど。ああ、やっぱりみたいな感じで。コイツか、と。
 174ページまでは85点、その後は65点かな。結局、いつもの前川さん(≧∇≦)/
 今回は主舞台が予備校ということで、それも珍しくてよかったです。
 講師の移り変わりが激しく、講師同士が足を引っ張り合う予備校業界の裏側なんてなかなか読めないですからね。
 あとは・・・そうそう、猥談をしゃべる人間に、性的倒錯者や変態性欲者はいないというのは、私もどこかで、たぶんキャバクラとかで聞いたことあります。つまり、人前で猥談なんてしそうにないインテリのムッツリ型が、性行為において変態性を発揮する確率は多いそうです。なんか、だいぶ前に朝のフジテレビに出てた手鏡の教授を思い出してしまいましたが・・・
 でも、本当に怖いのは、猥談を喋りながらも本当に性的に倒錯している人間。私の話したキャバ嬢は、見るだけでわかるそうです。このタイプの人間はかなりヤバイそうです。本作と思い切りリンクする話ですよねえ。

 では、最後におまけであらすじを。
 主人公は、矢崎という45歳の予備校英語講師。39歳の妻と高1の娘の3人家族。
 矢崎は、3年前にエンタメ系の公募小説新人賞を受賞。以来、講師と作家の二足のわらじを履いており、羨ましそうに見えるが、講師としての人気も、作家としての売れ行きも、けっして芳しくない。
 20年近く勤めている上洛ゼミナールも、数万の生徒を抱える大手予備校だが、少子化による先細りは避けられない。よって、講師はいつ首を切られるかと戦々恐々としている。
 しかし、矢崎の周りの講師でも、生徒からの絶対的な人気を誇るイケメンスーパー英語講師の越野や、父親は暴力団組長で自身も派手な身なりながら、東工大出身の型破り人気物理講師・黛(まゆずみ)などは、予備校側がけっして放さない。ようは、予備校教師とは人気商売なのである。生徒を500人集まる講師と100人しか集められない講師では給料は全然違うのは、もっともな話なのだ。
 で、以上が主人公を含むだいたいの背景。
 ひと月前から、矢崎の兄、精神を病んだ小説家志望の無職の48歳が、行方不明になっている。
 兄は家族の鼻つまみ者で、矢崎も「ひょっとしたらどこかで死んだかも」と思いつつ積極的には探していない。
 冒頭(2007年5月11日)、宝石商の夫を持つ主婦が、「夫が窃盗容疑で身柄を拘束された」と新宿署の刑事を名乗る男から接触を受け、そのまま夫婦とも行方不明になった。このとき相談を受けた主婦の姉は、自宅のマンションに尋ねてきた刑事は、東北弁をしゃべる小柄な男で、左耳が潰れた、いかにも刑事には見えない男だったと聞いている。
 矢崎は、予備校の同僚である人気講師・越野の妹夫婦が行方不明になっていることを聞く。
 大手証券会社に務める夫をもつ越野の妹は、刑事から夫が外為法違反で拘束されていると聞いて動揺していたという。
 矢崎は、小説を書く上で取材をしたことのある警視庁捜査一課の林田警部補に相談を持ちかける。
 林田は、すぐに宝石商の事件と越野の妹夫婦の事件の関連に気づき、特別捜査本部が立ち上がる。
 そして・・・なんと、一般向けに公開された、行方不明者宅の留守電に残された偽刑事の声が、矢崎の兄の声にそっくりだった。しかし、目撃された左耳のつぶれた偽刑事の風体は、矢崎の兄とはまったく異なっていた。
 このことは何を物語るのか。実行犯は矢崎の兄を含む複数なのか、あるいは・・・


 
 
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