「怪談」柳広司

 ラフカディオ・ハーンの「怪談」をモチーフに、現代風にアレンジされたミステリー集。
 ホラーではありませんが、ちょっとだけオカルトっぽい。
 原典であるラフカディオ・ハーンの「怪談」は、話は知っているのですが、私は読んだことはありません。
 読んだことないのに話を知っているというのはおかしな話ですが、そういう方もたくさんいるのでは。
 「雪おんな」「耳なし芳一」「ろくろ首」なんて有名ですよね。
 「むじな」だって、深夜に樹の下でしゃがみこんで泣いている女、という情景を想い浮かべれば思い当たるでしょう。
 ただ「ろくろ首」というのは、首がニョロリと長い女の人というのはわかりますが、ストーリーは出てきません。
 本作で読んでそういえばと思い出したのですが、ろくろ首には首が伸びるのと、「抜け首」といって生首が飛んでいくのがあるんですよ。ちょっとゾッとするでしょう?
 「鏡と鐘」だけは、まったく知りませんでした。ですからどういう風にアレンジされているのかわかりません。
 まあ冒頭の「雪おんな」も、ストーリーをアレンジしたというより雰囲気だけですけどね。
 ほぼ原典の内容に沿っているのは「耳なし芳一」だけですが、これは主人公の属するビジュアル系バンドの代表曲が「HEIKE」で新曲が「ダンノウラ」という、バカバカしさがあったので微妙な出来です。
 「食人鬼」も、あのオチではなくて、もっと意味深なオチもあり得たと思います。室田が、完全犯罪のために殺した人間の肉をあそこに混ぜていた、とかね。
 軽く読めてなかなかに楽しい6篇の物語ですが、飛び抜けて面白い作品はありません。

「雪おんな」
 父が創業した建設会社の副社長をしている蓑輪健太郎(36歳)は、都内で開かれた建設業界のパーティで、白いドレスを着たひとりのコンパニオンに目を惹きつけられる。由紀子という22歳の彼女と健太郎は、月に1,2回会うようになるが、健太郎にはなぜ彼女に惹かれるのか自分でも理由がわからない。
 やがて健太郎は、10年前に会社の金を横領して自殺した叔父の話を由紀子にしてしまうのだが・・・

「ろくろ首」
 32歳の外科医・磯貝平太は、捜査協力の名のもと、警察の取調室に連行される。
 磯貝は昨日まで勤めていた病院を辞職したが、その病院の院長が行方不明だという。
 磯貝は院長に会った最後の人物だった。失踪者は全国で約8万5千人。死体が発見されなければ、警察が本気で動くことはない。外科医の腕で、完璧に証拠を隠滅したという自身を持っていた磯貝だったが・・・

「むじな」
 年度末の決算期。経理部主任の赤坂俊一は、繁忙を極め、終電に飛び乗る毎日だった。
 32歳独身一人暮らしの赤坂は、新興住宅地のマンションに住んでいる。
 ある日の帰り道、赤坂はマンションの近所での桜の樹の下で、小柄な若い女がしゃがみこんで泣いているのを見つけた。彼女はたまに目にする女性だった。なだめて話を聞くと、夫から家庭内暴力を受けたという。
 頼まれて彼女の自宅に様子を見に行った赤坂は、そこで男の死体を発見する。

「食人鬼」
 交番に勤務する作庭邦男巡査と定年間近の室田勝巡査長は、通報を受けて駆けつけた場所に、冷凍コンテナを発見する。中を検めると、アムールトラやマウンテンゴリラなど、絶滅危惧種や希少動物の肉や内臓が保管されていた。
 2ヶ月ほど前、六本木の高級マンションの最上階の一室で、天才と呼ばれたシェフが自殺しているのが発見されたが、それをきっかけに、都内で絶滅危惧種の動物を食材にした会員制の“美食倶楽部”が存在したことが明らかになっていた。
 作庭と室田は、コンテナの中に“ヒト ♀ 20歳 モモ肉(生)”と書かれたダンボールを発見する。

「鏡と鐘」
 62歳になる遠江聡美は、1年ばかり前のある日突然、見知らぬ人物から貧困国への援助物質を自宅に届けられた。
 そして、それから毎日のように続々と同じような荷物が届くようになる。それはすべてアフリカの子供たちへのボランティア物質だった。聡美に思い当たることはまったくない。
 パソコンに詳しいニートの甥っ子によると、聡美の名前でホームページが開かれ、そこで援助物質の募集をしているという。虚偽記載で削除を依頼しても、イタチごっこのように新しいホームページが開かれてしまう。
 はたして、このミステリーの真相は?

「耳なし芳一」
 インディーズのビジュアル系ロックバンド「鬼火」のリードギター兼ヴォーカル、ヨシカズこと枇杷木芳一は、ある日のライヴがはねた後、執事のような上品な老人に促され、黒塗りの高級車に乗せられる。老人曰く、あなたの熱烈なファンであるさるお方が待っているという。目隠しをされて連れて行かれた場所は、大邸宅の中にあるライブステージだった。
 ヨシカズはそこで、6日間ライブを続けてくれれば何でも望みを叶えてやると聞かされる。
 バンドが出入りしていたライヴハウスのオーナーで、元僧侶という変わり種の赤間元了は、その話にある種の危惧を抱くと同時に、最近のロックバンドが何者かに拉致されては才能を失っていくという都市伝説を思い起こす。


 
 
 

 
 
 
 
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