「首無の如き祟るもの」三津田信三

 民俗ホラーミステリー・刀城言耶シリーズの第3作ですね。
 相変わらず、コッテリとしてますな。5千キロカロリー脂肪過多、みたいな感じの本ですが、まあ、面白いか面白くないかと聞かれれば、間違いなく面白いミステリーですよ。ちょっと濃ゆいですけどね。
 前作の「凶鳥の~」は、非常に私好みでしたが、完成度シリーズ1とも評価される本作はどうかな?
 マジで怖いかな(?_?)、それとも・・・

 これまでの2作と違うところは、最初から刀城言耶がいないこと。
 日本全国の怪異譚を収集し民俗採訪の旅をしている、怪奇幻想作家の刀城言耶が赴く先で必ず奇っ怪な事件に巻き込まれて、一瞬、呪いや祟りかとも思われる不可思議な出来事の謎を解くという趣向でしたがね。
 今回は、先輩で京都の神社の跡取り息子・阿武隈川烏とふたりで旅をしているのですが、本作の舞台である奥多摩の媛首村で逗留するはずが、山魔(やまんま)の伝承が気になって違うところに行ってしまいます。
 これは少々ネタバレになるのですが、ラストで出てきたのは、私はおそらく「違う」と思うので、彼の出番は唯一ここだけでしたね。汽車の中で、村の駐在であり本作のメインキャラクターでもある高屋敷元と喋った場面だけです。
 じゃあ、「あれ」は誰だったのか? それはまた覚えていましたならば、のちほど・・・
 では、簡単にあらすじ。
 物語の焦点となる事件は、10年の間隔をおいて戦中と戦後の2回起こっています。その2回とも関連性があります。
 事件の舞台は、東京の奥多摩は深山幽谷のただ中、媛首村。
 この村には筆頭地主である有力な秘守家という名家があります。秘守一族は当主を一守家と呼び、分家は二守家、三守家と呼ばれていて、一守家の長男が秘守一族の長になるという不文律がありました。
 ところが、今まで一守家はかろうじて家督を守ってはいるのですが、なかなか男児が生育せず、ほとんどが幼児のころに死亡してしまったり、長じても病弱だったり、怪我が絶えなかったりするのです。
 村では、これを淡首様の祟りだと信じていました。
 淡首様とは、非業の死を遂げたふたりの女性をまとめて称したもので、ひとりは天正18年(1590)に媛神城が豊臣勢に攻められたときに首を斬られた城主の妻・淡媛。もうひとりは、宝暦年間(1751~1763)に秘守家の当主の後妻に入って使用人と駈落し、後に当主に騙されて呼び寄せられ首を斬られたお淡。
 以来怪異が続いた村では、中央の媛首山に媛神堂を建てて祀ったわけですが、この二祀神こそ代々に亘って秘守家を護りながら、また同時に祟り続けているというわけなのです。
 よく聞くセリフに「末代まで呪ってやる・・・」というのがありますが、これ、よく咀嚼すると、家は絶えることなく末代まで続くということですよね? 怨霊がいつまでも祟り続けるためには、その家筋が続いていなくてはならないのです。
 大変だよ怨霊も。加減しなくてはなりませんし。もちろん祟られる方もたまりません。
 で、実際にこの物語で取り上げられることになる事件はというと、太平洋戦争中、「十三参り」といって一守家の子息の健やかな生育を願う儀礼があるのですが、この儀式の途中で一守家の嫡子・長寿郎の双子の妹が井戸に落ちて死にました。村の駐在の高屋敷は不審を覚えますが、戦時中とはいえ死因も調べずにすぐさま葬儀が執り行われ、あっという間に荼毘に付されました。現場は密室状態で、容疑者がいない上に、相手が長寿郎ならともかく妹とは動機が見えず、かといって事故とするには不審な点が多すぎる事件でした。
 そしてそれから10年後。今度は、前回とは比較にならないほどの惨劇が媛首村を襲いました。
 23歳になった一守家の長寿郎に複数の花嫁候補を引き合わせる婚舎の集いで、秘守家の遠戚である古里家の毬子が殺され、あろうことか肝心要の長寿郎まで続いて殺されてしまったのです。何者かに・・・
 しかも、ふたりの死体には“首”がありませんでした。
 事件はこれで終わらず、一守家に次ぐ地位である二守家の嫡子も無残に首無し屍体となって見つかりました。
 もはや村の駐在では両手に余る難事となった事態に、それでも高屋敷は懸命の捜査を行いますが、町のほうで大事件が起こったために終下町警察署の捜査陣が割かれ、力及ばず事件は迷宮入りとなってしまったのです。
 
 で、物語はすでに亡くなった高屋敷の妻であり作家である高屋敷妙子の書き語りで進んでいきます。
 視点は、夫の高屋敷巡査と、5歳のときにもらわれて一守家の使用人になった幾多斧高。
 ラスト、最後の事件から20年後(ということは昭和40年代後半くらいか)に謎が解かれます。
 ほぼすべての謎が、ね。
 というのは、斧高が5歳のときに家に来た中性ぽい人は誰だったのか、わかりません。
 普通に考えれば家庭教師の僉鳥郁子なのでしょうが、違いますね。
 ヒントは「ぞっとするほど綺麗な、まるで小姓のような・・・」という言葉で、あくまでもミステリアスに考えればこれは男装して城から落ちたあとに首を斬られた淡媛ではないかということになります。
 そしてそう考えれば、ラストに妙子のところにやって来たのも、同じモノではないかと想像することも可能です。
 斧高は、このとき50歳近くになっているはずですからね。たぶん違うでしょうよ。
 首無し含むふたつの事件の謎は解けても、肝心要が残されましたが、これはこれで楽しいですよね。
 さあ、あなたの推理は如何に。


 
 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示