「厭魅の如き憑くもの」三津田信三

 (とうとう着いたか・・・)
 ある種の感慨を覚えながら前方を見遣った言耶の眼に、神々櫛村の入り口の両脇に立つ二体のカカシ様の何とも不気味な姿が、いきなり飛び込んできた。
 この瞬間、彼の心に広がったのは、たった今覚えたばかりの感慨とは裏腹な、すぐに方向転換をして帰るべきかもしれないという底知れぬ恐れだった。なぜなら組笠と蓑で作られた文字通り案山子のような代物にしか過ぎない二体の道祖神に、得体の知れぬ何かが宿っているように思えたからだ。
 それが山神様なのか厭魅なのかは分からないが、とても木偶の坊の案山子などではなく、まるで今にも動き出しそうな・・・


 閉鎖的で因習に満ちた、神々櫛村。
 朱雀、蛇骨連山という地名や、住人が関西弁のようなものを喋っていることから、おそらく場所は京阪神の山奥。
 時代は、昭和28年から数年後ということから、おそらく昭和30年代前半~中頃でしょうか。
 ここに、当時非常に珍しかったジーンズを無造作に履きこなした、ひとりの風来坊がやって来ました。
 彼の名は、刀城言耶。又の名を東城雅哉という怪奇小説家であり、日本各地に伝わる怪異伝承を研究しています。
 今回、彼は民間の研究者が戦前に著した「朱雀と蛇骨の憑きもの信仰 神々櫛の厭魅を巡って」という民俗学の書物に触発され、村の有力者への紹介状を持って、神々櫛村へと足を踏み入れたのです。
 ところが・・・彼の訪れと同時に、村には惨事が続発することになります。
 憑き物村、神隠し村、案山子村と呼ばれる極めて特殊で閉鎖的な村の最も曰くある家を舞台にして起こった、一連の怪死事件。その裏には、村独特の憑きもの信仰の歴史と民俗が、深く関わっていました。
 憑き物筋の谺呀治(かがち)家と非憑き物筋の神櫛家という対立する2つの旧家、神隠しに遭ったとしか思えない不可思議な状況で消える子供たち、因習の儀礼で逝くと山神様になると説く老婆、生霊を見て憑かれたと病む少女、厭魅(まじもの)が出たと噂する村人たち、死んだ姉が還って来たと怯える妹、忌み山を侵し恐怖の体験をした少年、得体の知れぬ何かに尾けられる巫女――
 連続する怪異の真相を、刀城言耶は解くことができるのでしょうか!?
 カバーデザインがとってもコワい(>_<)民俗ホラー・ミステリー「刀城言耶シリーズ」第1弾。

 昔、この本を読もうとしていたのですが、途中で断念しました。
 ちょっと目を離すと、もうどこを読んでいたのかわからなくなるような字数の多い本でしてねえ。
 導入というか、読者を引き込む力は凄いものがあると思いますが、ある程度著者に関しても、このシリーズに関しても知識がない状態で取り掛かるべきであるかと思います(どの本も結局はそうなのですが)。
 というのは、私は読む前から知っていたのですが、ホラー調で進んでて最後にミステリーでひっくり返る、という筋なんですよね。これは知らないのが花、です。だから、この本はホラーだと思って読まなければ、最後で驚けません。
 といっても、どうかなあ。
 こじつけというか、あるよね。漣三郎と聯太郎の兄弟が忌まわしい九供山の冒険に出かけたじゃないですか。
 あれって、刀城言耶は兄弟が山に入るのを村人が見つけたのだろうって言ってましたが、いかにビビり気味の子供でも、大人の人間をまるでこの世のものではない異形のモノと見間違えますかね?
 あそこは納得できませんわなあ。大人だったら「コラァ!」って言いながら追いかけてくるでしょうよ。
 タールマンみたいにジワリジワリと気色悪く這いずってきませんわな。
 とすると、その村人って本当に神隠しを偽装した連続子供誘拐殺人鬼だったのかもしれません。
 本筋のサギリがどうたらとかより、こっちのほうが怖いよ。

 私ごとですが、私は消防団というものに入っており、行方不明の人間を山狩りしたことが度々あります。
 ですけどね、素人が思うほど、山というのは狩れません(笑)
 最近は、不法投棄されたゴミが色とりどりなので、ヘリからの捜索もままならないのです。すでに死んでいた場合ね。
 一番頼りになるのは、警察犬ですわ。あいつらが頼りです。
 何百人体制で山に入ったところで、どれだけも捜索はできないものです。ご飯のお金だってバカにならないよ。
 ですから、人間というのはある程度は簡単に行方不明になれるものなんです。生きている場合は特にね。
 あるいは、何者かに連れ去られた場合も、追手の側がどうしても後手を踏みます。
 未解決事件というのがあるでしょう、子供が突然パッと消えたりするようなやつ。
 あれは必ずしもパッと消えたわけではないのでしょうが、とてつもない何者かの“悪意”を感じますよね。
 ちょっとスズキが茂ってたり、日陰で暗い場所があったりすると、1メートル横に何かがいても気づかないものなんですよ、山の中というのは、そんなもんです。
 「見つからない」と「見えない」の差は実は、別次元ほども大きいです。


 
 
 
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