「百年文庫 湖」フィッツジェラルド・木々高太郎・小沼丹

 百年文庫29作目のテーマは『湖』ときた(・∀・)
 海でも川でもない、もちろん沼でもありません、湖が作品の背景にどう影響しますかね。
 なんとなく箱庭的である、というのは多くの方が感じるところでしょう。
 憧憬的でもありますね。ロマンティックな雰囲気。池や沼とは格が違う。
 有名な湖は観光地でもあります。すなわち、土地のシンボルで風光明媚な景勝地ということも云えます。
 また湖には海でも川でもない、独特の魚がいたりしますわな。日本ではワカサギとか。
 私が思いつくのはこんなところですが、本作に編まれた3篇の物語ではどのように湖が関係しているのでしょうか。
 ひとつ、驚いたのは、今回初めて探偵小説が入っていたことです。
 なるほど、湖といえば殺人事件の舞台でもあるなあ、と。
 そして百年文庫初の探偵小説を含むこのナンバー29は、異例のボリュームで200ページ近くあります。
 変わったこと尽くし。
 さらに、忘れてはならないのが栞の色。これまで栞の色はテーマに直に沿っていましたが、本作の「湖」の栞は、水色でも白でもありません、金色。これは何を意味しているのか? そう、これはおそらく湖面に映える夕陽の色!
 と、思います。なかなか今回のポプラ社の編集さんは味なことを。

「冬の夢」フィッツジェラルド(1896~1940)
 「グレート・ギャツビー」で有名な20世紀初頭アメリカの代表的作家フィッツジェラルドの作です。
 うーん、簡単にいうと大河的恋愛小説とでも云えますかね。舞台はミネソタのブラックベア湖付近。
 主人公のデクスター・グリーンは14歳のとき、小遣い稼ぎをしていたゴルフ場で、当時11歳の女の子に出会う。
 そして若くして地元の名士となったデクスターは、この女の子、ジューディ・ジョーンズと23歳のときに再会するのです。ジューディは、見違えるばかりに美しくなっており、デクスターはあっという間に恋に落ちます。
 しかしジューディは、誰よりも率直で放恣な個性を持った魔性の女であり、デクスターは彼女の1ダースばかりの取り巻きに過ぎませんでした。献身的に彼女に尽くしたデクスターですが、やがて自分のものにするのは無理と思うようになります。そして、物語は彼が32歳になったとき、驚きの結末を迎えるのです。
 湖、それは幻想と青春に彩られた、冬の夢が咲き誇る故郷。そして冬の夢が永遠に凍りついたパンドラの箱。

「新月」木々高太郎(1897~1969)
 百年文庫シリーズ初の探偵小説になります。
 また、1946年に発表された本作は、第1回探偵作家クラブ短編賞を受賞しています。
 30歳ほども年上の男に嫁いだ娘が夜の湖で溺死しました。ボートに乗っていた55歳の夫は泳げなかったのです。
 夫妻は結婚して2年。もとより正常な結婚ではなく、実業家で金満である53歳の夫は再婚であり、22歳の妻は経済的に困窮している実家への援助を当て込んで嫁いだのです。
 妻には、当時親しく交際をしていた同世代の男がいました。
 しかし2年間共に生活するうちに、この夫婦にはすでに愛情が芽生えていたのです。
 湖で行方不明になった妻は翌日の午後、湖底で発見されました。
 当初事故死と考えられていましたが、ボートに乗った夫が溺れる妻を置き去りにしたのを岸から見たという男が現れます。事件の真相ははたして・・・
 生きているうちは心配でたまらない。おそらく、物集の合図が原因で心臓が悪かったということもあり妻は溺れたのでしょう。A氏が殺人に関与したわけではりませんが、後から振り返ると心理的に加担したのも同然ではなかったか、と考えたんでしょうね、たぶん。

「白孔雀のいるホテル」小沼丹(1918~1996)
 大学生になったばかりのころ、僕はひと夏、湖畔の宿屋の管理人を勤めたことがある――
 宿屋の経営者であるコンさんは、その宿屋で一儲けしていずれは湖畔に真っ白なホテルを経営するつもりでした。
 が・・・肝心の宿屋「白樺荘」はどう見ても一儲けの元手になりそうな旅館ではありません。
 二軒長屋を改造して作られたこの宿屋は、1階は過去に首吊りもあった四畳半が二間。2階には六畳が四間。
 陰気で古臭く、窓から首を伸ばさないと肝心の湖も見えません。従業員というか管理人は僕だけ。
 食事はそのたびにコンさんの山の上の店に行かなければならず、風呂場ももちろんありません。
 この夏に客がどれだけ来るかで、僕とコンさんは賭けをしました。
 案の定、客は1人もこないまま日が過ぎていきますが、15,6日目になんと客がやってきたのです。
 客第1号は、試験勉強をできるだけ静かな環境でしたいという学生さんでした。
 客第2号は、お節介な女性と影の薄い男性の二人連れ。これはズバリ駈落。
 そして客第3号の坊主頭のずんぐりした男は農夫とは言いながら実は!?
 あとひとり客が来ると、賭けは僕の負けになってしまうのですが・・・
 ああ、白孔雀のいるホテルの夢や如何に。
 私的は、「猫と女は呼ばぬときにくる」という言葉を久しぶりに見かけてニンマリ。


 
 
 
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