「チア男子!!」朝井リョウ

 まず、この本を読み始める前に、動画かなんかでチアリーディングを観たほうが絶対いいと思います。
 そうしなきゃ、専門的な技の名前とかいっぱい出てきますしね、作中の説明だけではイメージわかないですね。
 実際にチアリーディングを観ることによって、どれだけこの物語の登場人物たちが無謀で危険なことにチャレンジしているのか理解できると思いますし。
 また、ラインダンスをしますが組体操みたいなのはしない“チアダンス”との違いもわかることでしょう。
 まあ、 本当にこれはすごいというか・・・体操の床運動とですね、ピラミッドとかの組体操の凄いのが合体したような、思わず見入ってしまうような、アクロバティックな競技です。
 全国選手権のような大会もあって、選手は8人以上16人以下、競技時間は2分20秒以上2分30秒以内。
 そのうち1分30秒間は音楽を使ってもいいのです。あとの1分は、選手たちのかけ声ですわ。
 「GO! FIGHT! WIN!」とか、なんとなく聞いたことあるでしょ。
 しかも、これ実は“応援”なんですよね。当然なんですけど。
 応援することが主役になり、誰かの背中を押すことがスポーツになっているのです。
 チアとは、戦うスポーツではなく、世界でたったひとつだけ、人の関わりの中で生まれた競技であり、誰かを応援するという姿勢が評価されるスポーツなのです。
 チアリーダーとは観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のことです。
 チアリーダーの笑顔の裏には、涙も凍りつくような努力があります。しかし、観ているものを不安にさせてしまうのなら、それはチアリーディングとは言えません。チアは一般人からすると危険なスタントに思えますが、ハラハラドキドキさせたのならそれは“サーカス”なのです。上手なグループのチアを観てください。どれだけ危ないことをしていても、どこか安心して楽しみながら観ていられると思います。
 敵も味方も観客も関係なく、全員が笑う、応援して、応援される。
 ある意味、生き方の基本といいますかね。これまでに団体競技など精神的にキツいスポーツ経験のある方は、本作をうまく読めたならば、価値観が広がるかもしれません。
 決して筆力があるというよりどちらかというと下手くそな小説なんですけど、これを読んで何か残るとしたら、それでしょうね。うん、何かは残ると思いますよ。

 簡単ですが、あらすじ。
 命志院大学柔道部1年生60キロ以下級の晴希と一馬は、小さい頃から仲の良いコンビだった。
 柔道一家で大学の公式柔道練習場「坂東道場」の息子である晴希。姉の春子はインターハイ準優勝の強豪選手だ。
 一馬は、両親は昔に事故死し、唯一の肉親である祖母も高1のとき入院してから、彼は築何十年の風呂なしアパートで一人暮らしをしている。彼はインターハイにも出場したが、大学には一般入試でトップクラスの成績で合格し、特別給費生の資格を得ている。
 入学して3ヶ月。肩の怪我をして練習できなくなった晴希は、どこかホッとしていた。
 彼はインターハイにも出場できず、姉のように取り立てて才能に恵まれた柔道選手ではなかった。
 公式道場の息子だからもらったスポーツ推薦で入学できたのではないか、ということにも疑念があった。
 そして、はるかに及ばない姉の背中を追いかけていることは、重荷だった。
 晴希は柔道部を退部することを決める。
 しかし、いざ部長室に向かうと、驚いたことに一馬が先に来て退部していたのである。
 一馬には一馬の事情があったのだが・・・
 「・・・一発おもしろいことしようぜ、ハル」
 一馬はそう言って、出会ったころのように白い歯を出して笑った。そう言う一馬の声が少年だったころの声に重なり、一馬の姿が真夏の太陽に重なった。
 あのとき確かに聞こえた。何かが始まる音。夏が始まる合図。晴希にはっきりと聞こえた気がした。
 一発おもしろいことしようぜ。それは、二人が出会ったころからの永遠の合言葉だった。

 二人がやろうとしたこと、それは男子のみのチアリーディング。男子チア。
 人を応援することに性別なんて関係ない。
 掲示板にチラシを貼ったり、なじみの食堂に協力してもらって集めた7人のチームは10月の学園祭でデビューした。
 そして、反響から選手は16人に増え、専門のコーチもついて3月の全国選手権を目指すのだが・・・

 あとがきによれば、早稲田大学の男子チアチームが紹介されているように、男子チームや男女混成チームはけっこうあるようです。そこがウォーターボーイズとは違うよね。
 まあ、小説の題材にするのは初めてだろうとは思いますが。
 スポーツ小説と言っていいと思いますが、こういうのに付き物なのが、選手の中に必ずいる、劣等感の塊みたいな肥満型の男と、メガネをかけて運動音痴な秀才タイプ。本作もご多分に漏れず、いますよ(笑)
 バック転とかバク宙が、数ヶ月の訓練で簡単にできるとは思えないけどなあ。
 それ以前に、何もできないのに、チアリーディングをしようとする神経も理解できない。危ないでしょ。
 笑いながら演技してますけど、一歩間違えば大怪我ですからね。
 個人的には、男子チアのユニフォームは短パンなんですが、すね毛をどうしたのかが非常に気になるところでした。


 
 
 
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