「グリード」真山仁

 キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
 ハゲタカシリーズ最新作第4弾「グリード」(Greed=強欲)は、間違いなくシリーズ最高傑作。
 もう、ヤバいくらい面白い。直木賞無理だったかな、これ。
 前作「レッドゾーン」は、これ以上大きいのないよという中国国家ファンドとの死闘でしたから、シリーズは今後どんなライバルが出現してどう展開していくのか気になっていましたが、案ずるより産むが易しでしたなあ。
 1作目の「ハゲタカ」と比べると、作者の筆力も段違いで、回を追うごとに腕は上がっています。
 あの頃は、新聞記者上がりらしいカクカクした筆致とプロットでしたが、今は超一流の経済小説家です。
 逆に今までのシリーズを知らなくても、じゅうぶん面白いです。
 池井戸潤とはまた一風違う、金融冒険小説の金字塔だと思いますね。スケールも圧倒的です。

 米国発の金融恐慌、リーマン・ショック。
 2008年9月15日午前零時過ぎ、帝王ディック・ファルド率いるウォール街きっての投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんしました。そして、それに続いて破たんするのではと見られていたのが、このシリーズ始まって以来存在感に満ち溢れ、リンが以前に所属していたことでも知られるアメリカ屈指の投資銀行ゴールドバーグ・コールズ(GC)だったのです。
 これらアメリカの投資銀行がなぜ潰れそうになったかというと、主たる原因はサブプライムローン債のデフォルトです。
 アメリカ政府が低所得者にもアメリカンドリームを実現させようと施策を打ち出したのが、サブプライムローンという低所得者向けの住宅ローンでした。しかし実際は失業者にまで貸し出されたこのローンは、とんでもない爆弾だったのです。
 失業者にまで貸し出すなんて潰れて当たり前だと思われるでしょうが、戦後60年間アメリカの住宅価格は下がったことはありませんでした。つまりローンが払えなくなれば居住者を追い出しても十分元は取れるという計算があったのです。
 しかし現実には住宅バブルは弾け、サブプライムローンを債権化し組成された証券化商品を大量に購入していた、ウォール街の投資銀行が軒並み、大打撃を受けました。莫大な不良債権です。これが世界恐慌の危機の発端でした。
 俗にリーマン・ショックと呼ばれるこの危機で、日経平均株価が6千円台にまで急降下したことは記憶に新しいです。
 しかし、この世界経済最大のピンチを、チャンスに変えるべくニューヨークで息を潜めている男がいました。
 そう、日本最強の企業買収者である鷲津政彦。そしてリンや前島、サム・キャンベルなどのサムライ・キャピタルのそうそうたるメンバー。今回はアンソニー・ケネディという死んだアランを思わせるWASPのナイスガイも加入します。
 彼らが狙っているのは、創業百年、生みの親は発明王トーマス・エジソンという、時価総額30兆円のアメリカを代表する巨大コングロマリット、アメリカンドリーム社。ベビークリームから原子力まで作る総合メーカーです。
 鷲津政彦は、サブプライム危機で混乱するウォール街の間隙をぬって、アメリカのシンボルであるAD社を買収する気でした。
 かつて1990年代後半、バブル崩壊で瀕死の状態だった日本から資産を貪った強欲なアメリカに一矢報いる所存でした。
 アメリカは自由の国を標榜していますが、自由だからこそ、生き抜くためには他人を蹴り落とし、貪欲に突っ走らなければなりません。しかしGreed is good、強欲は善であるという価値観を世界中に広めようという根性は我慢できません。
 世界を欲望の坩堝にしたアメリカに、その報いを受けてもらわねばならない。
 しかし、もちろん簡単にはいきません。アメリカ人の誇りを黄色いハゲタカが買収するのですから、幾重にも障害が待ち受けていました。中でも、全米屈指の投資家で、市場の守り神と呼ばれる傲岸不遜なサミュエル・ストラスバーグ。
 彼はFBIを動かし、アメリカの国家機密を入手して外為市場で巨額の利益を得たとして鷲津政彦を拘束しようとしました。
 さらに破たんしかけているGCの支援を鷲津に約束させたり、AD社の買収を絶対に許すことはありませんでした。
 さらには、白人主義者であるAD社のお膝元ニュージャージー州知事や、死んでもジャップの救済は受けないというゴールドバーグ・コールズの経営陣らが、サムライ・キャピタルの野望の前に立ちはだかるのです。
 特にGCの役員であり、ウィール街で伝説的なトレーダーだったジミー・クランシーの、生ける屍になってなお強引な生き様は、描き方に迫力がありました。今回、キャラクターの造形も素晴らしかったと思います。
 刻一刻と迫る、リーマン、GC破たんの“Xデー”。
 アメリカにとっては大惨事となるであろうそのとき、はたして鷲津にとっては感謝祭となるのでしょうか・・・
 大統領まで登場する、サムライ鷲津政彦VSプライド高き全米金融界の仁義なき戦いの幕が開く!!

 「お金をたくさん持っている人がうらやましい」という人は、私は信用しないようにしています。
 「いい家に住んでいるからうらやましい」「いいクルマに乗っているからうらやましい」「いい服を着ているからうらやましい」という考えが正常だと思うからです。
 「お金」は欲しい物を手に入れるための手段であって、それそのものは尻ふき紙と変わりありません。
 経済が成立しているから日本銀行券に価値があるように見えるのであって、この世が破滅して自分ひとりしかいなくなれば、ウンコを拭くのさえ紙幣は紙質が硬くて難儀なので、全部捨てるかもしれませんよ。
 だから「お金がたくさんあること」を好きな人は、結局この世の価値がわかってない人だと思うので、いつかは人を裏切るエゴイストです。私個人の考えですけど、こういう人にはけっして後ろを見せないようにしています。
 こういうお金に対する考え方もそうですが、人種差別に対する考え方も本作では勉強になりました。
 極東の小国の黄色いハゲタカと言われながら、なんのこともなく聞き流す鷲津政彦は、このシリーズで一番恰好良かったと思いますねえ。
 私も何度も白人から人種差別は受けたことがありますが、ムッとしますから。
 その点、世界中でモテる大和撫子とは、性別違えば扱いがまったく異なります。
 そういう後暗いカタルシスっての? やや情けないですが、この小説で少しスッと気が晴れましたね。


 
 
 
 
 
 
 
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