「爪と目」藤野可織

 第149回(平成25年度上半期)芥川賞受賞作です。
 受賞作で表題作の「爪と目」ふくむ3篇。「爪と目」が80ページ弱、他2篇が合わせて40ページ強。
 難解でしたね。芥川賞はだいたいが初めて読む作家だし、傾向がわからないので特に読解が難しく感じます。
 特にこの作家、藤野可織さん、パッと見た目がちょっとトロい保母さんみたいな感じでしょ。
 油断したなあ。
 私としては表題作はともかく、カップリングの2篇が特に気になりました。
 最後の「ちびっこ広場」なんて、独特の切れ味がある恐怖小説みたいな感じでしたよ。
 正直言って、「爪と目」はハッキリとは理解することができませんでしたがね。
 ハードコンタクトレンズは装着したことがあるので、あのゴロゴロ感はよくわかりましたけど。
 コンタクトで目にしょっちゅう傷もつけてましたし。けどそれは物語のキーポイントとはちょっと違うなあ。
 あと、装丁が綺麗だったです。エメラルドグリーンの栞のヒモとカバーの裏は爽やかでした。

「爪と目」
 これはよくわかりませんでした。なぜ「わたし」の母がベランダで死んだときに、鍵が閉まっていたのでしょう。
 クレセント錠だし、「わたし」が閉めたのでしょうね。ブログをしていたのに、古いパソコンを捨てて新しいのを買ってないということは、生活を持続する意思が弱い、つまり自殺だったのでしょうが、なぜ「わたし」は鍵を閉めたのか、その理由がわかりません。陽奈ちゃんはお母さんがベランダに出てることを知らなかったのでしょうか。
 結局、この一件が気になったために全体が霞んでしまいました。
 ラストは、「あなた」(麻衣)から、古本屋が来たときに「見ないようにすればいいの、目をつぶってごらん」と言われたことへの仕返しだと思います。コンタクト、ベランダの窓、それは「見えることと見えないこと」のしきりのメタファーであり、「わたし」と「あなた」の違いでもあるということなんでしょうね、たぶん。
 だから、「見える」ということは本当はこういうことだよ、とラストで「わたし」は「あなた」に教えたんでしょう。
 母から生活を整え、統治し、律せられていたおとなしい「わたし」が血のつながってない「あなた」から菓子やジュースを好きなだけ与えられ、ブクブク太っていく様はシュールでしたねえ。
 ま、そんなとこですか。細かいところでは、“古本屋の顔は、肌というより肉の色をしていた”というフレーズが気に入りました。そんな色したおっさんいますよね。物語全体はともかく、フレーズ的には他にもさすが芥川賞というべきものが多かったように思います。

「しょう子さんが忘れていること」
 これは難しいですね。気になりました。
 半年前から軽い脳梗塞で入院し、リハビリしているしょう子さん。見舞いにくる孫娘は37歳。
 夜になると、4人部屋のしょう子さんのベッドに男が忍んでくるという。
 これを夢か夢ではないか、と読むことで二通りの考え方ができると思います。
 まず、夢の場合。
 この場合は、自分の名前を夢のなかで間違わないでしょうから、しょう子という名前は孫娘のことではないでしょうか。おばあちゃんが、孫娘と川端の性交を夢で見ているのではないか、ということになります。
 次に夢ではない、真夜中の出来事が現実である場合。
 なぜ男は「しょう子」と呼ぶのか?読み方を知らないんですかね。そうすると、昼間おばあちゃんのことを「佐々木さん」と呼んでいる方が忍んでくる男なのではないでしょうか。川端は入院患者ではないのかもしれません。
 とすると長女や孫娘に近づかないでと言ったのは、夜中の微かな記憶から紡ぎだされた嫉妬なのかもしれません。
 しかしこの場合、どうして同室の入院患者が物音で起きないのかが不思議なんですけどね。

 それにしても「しょう子」さんの名前は何かな?祥子(さちこ)以外に考えられないんですがね・・・

「ちびっこ広場」
 これ、面白かったです。前の二作の後味が悪かっただけに。
 近所にある「ちびっこ広場」。ジャングルジムと連なって土中に半体が埋まったタイヤしかないんですが、近所の子どもたちはよく遊んでいます。美加の息子である大樹もそうです。
 しかし、このちびっこ広場には、ある秘密があったのですね。
 大学時代の友人の結婚パーティがあって、美加が外出する日、広場から帰ってきた大樹の様子がどうもおかしい。
 「お母さん、行かないで」とぐずる。
 結局、夫が帰宅してから大幅に遅刻してパーティに出席したのですが、二次会の前に家に電話すると誰も出ない。
 ようやく繋がると、夫が言うには大樹の様子がいよいよおかしい。
 慌てて美加が電車に乗って帰宅中、メールで夫から知らされたところによれば、どうも大樹はちびっこ広場の呪いがかかったといって怖がっているらしいのです。
 4時44分に広場にいると、髪の長い少女の霊が家に迎えにくるというのです。
 この日、大樹はジャングルジムから飛び降りたときに転び、逃げれないまま4時44分を迎えてしまいました。

 ラスト。「さ、一緒にちびっこ広場に行こう」と言った女が、髪が顔にかかって真っ暗になるシーン。
 怖かったですねー。これ、誰ですか?
 確か美加はパーティに行く前に髪をどうにかしてなかったか? ひとまとめにしてなかったか?
 帰ってきたまま、ワンピとかそのままの格好で大樹に付き添ったみたいに書かれていますから、髪が顔にかかるような女は美加ではない!?と思ったんですが、よく読んでみると、パーティに行く前、髪をひとまとめにしてねじ上げ、コームで留めようとしたがうまくいかずに諦めた、と書かれています。また、いつものバレッタを外しているので髪が顔の前に落ちてきた、とも書かれています。
 美加は、長い髪をとかしつけたままみたいな感じでパーティに出かけたのです。
 だから、この女は、美加つまり大樹のお母さん。よかったね。
 
 ・・・でも、なんでふたりは夜中にちびっこ広場に行かなければならないの?


 
 
 
 
 
 
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