「笑うハーレキン」道尾秀介

東口太一、40歳。父も祖父も家具職人だった。
最初に作ったのは筆箱だった。彼が小学校2年生のときである。
やがて筆箱が本棚に、本棚が背もたれ付きの椅子に、椅子が机に、机がタンスになっていった。
大学を卒業すると大手家具メーカーに就職し、デザイナー兼家具職人となった。
社内でのデザインコンペで大賞をとり、業界全体で顔を知ってもらえるようになった彼は、独立し、トウロ・ファーニチャーという家具製造会社を起業した。
こだわりの職人家具は評判を呼び、社員は百人を数えた。

そして、そこから転落した。
一人息子の笙太の事故死。妻である智江との離婚。会社の倒産。
彼が疫病神に取り憑かれて5年。
いま、太一は家具修理の注文を取りながらトラックの荷台で暮らしているホームレス家具職人である。
2年前から川べりのスクラップ置き場で、他のホームレス仲間とともにつましく生活している。
社会の上澄みの部分から、最下層の沈殿した淀みへの極端な急降下であった。
仲間は4人。最年長で海外旅行が夢のジジタキさん。川で食材を釣るのが得意なチュウさんとぬか床名人トキコさん夫婦。サンタという犬を飼っているロマンチストのモクさん。
ところが、西木奈々恵という太一に弟子入りを希望する放浪の女性が現れ、彼らの世界はちょっとずつおかしくなっていく。彼女がいなくなったかと思えばサンタが泡を吹いて死に、荷台にあった家具のシミ取りに使う劇薬シュウ酸が減っている。彼女が戻って一夜明けたらジジタキさんが死体になって川に――
やがて生き残った彼らを襲う驚くべき陰謀。彼らは監視されて利用されていたのだ!
人は誰しも仮面を被って生きている。ホームレスの彼らも同様である。
お面には何かの役割を演じるのと本当の顔を隠すという両方の役割があるという。
太一は封印した過去を正視し、再び“なくすことがこわくなるもの”をつくることができるだろうか。
それは仮面を外し、本当の自分の目で未来に光る道程を見つめることに他ならないのだ。

ハーレキン(Harlequin)とは道化師のことです。
ピエロとは違うみたいですね。
作中にも顔は笑っているのに化粧の下はシリアスと書かれていましたが、私もどうも道化師やピエロ系統は不気味というか嫌いですね。前にマクドナルドにそんなのがいたじゃないですか。名前は知りませんけども。他人には言いませんでしたが、けっこう、あいつ怖かったです。
まあ、それはさておき、ホームレスという設定も非常に面白く、何より文章が読みやすい!そして、不気味なミステリー・サスペンスの味付けもされているということで、まずまずの作品ではないでしょうか。
特にやっぱりホームレスかなあ。読みながら、元バックパッカーだった私は郷愁をおぼえました。
いいなあと思ったり。背負うものもなく気の合う仲間と気楽に過ごせたらね、そりゃうらやましいですよ。
でも水のこととか、トイレとかね、夏は暑くて冬は凍えたり、結局は憧れるだけで真実は大変ですよ、きっと。
「世の中にある苦しみや哀しみや怒りのほとんどは、求めるものと持っているものとの差から生まれる。自分には何もできないのだということを、はじめからわかっていれば余計な感情など一切抱え込まずにすむのだ」
と書かれていましたが、まさにその通りで、心だけ自由に生きておればいいのです。
そんなかんじに、ちょっぴり人生の勉強もできる本でしたね。

そうそう、本作を読んでたしかマネーの虎?に出演していた元ホームレスの社長(良品倉庫だったかな?)を思い出したのは、私だけではないはずです( ・∀・)




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この記事へのコメント

- 藍色 - 2014年05月30日 14:31:45

本当の自分を受け入れられるかどうかがこの作品のテーマなのではないかと思います。
最初に期待しすぎた感じはありますが、トータルの読後感は満足のいくものでした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

Re - 焼酎太郎 - 2014年05月30日 20:56:33

こういう、ホームレスとか貧乏とか書かせたらこの作者は上手ですね。
不況作家なんですよね、この方。
最近、久しぶりにミステリーが出たようなので、近々読んでみるつもりです。

コメントありがとうございました☆

トラックバック

粋な提案 - 2014年05月30日 14:16

「笑うハーレキン」道尾秀介

経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地に住みついた家具職人・東口。仲間と肩を寄せ合い、日銭を嫁ぐ生活。そこへ飛び込んでくる、謎の女・奈々恵。川底の哀しい人影。そして、奇妙な修理依頼と、迫りくる危険―!たくらみとエールに満ちた、エンターテインメント長篇。 読売新聞夕刊連載。物語の前半は仲間たちとの交流をほのぼのとしたタッチで描きます。 ホームレスという社会の底辺の共同体の中での人と人の...

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