「ふちなしのかがみ」辻村深月

学校もの、都市伝説もの、青春ファンタジーを含めたホラー短篇集です。
基本的にデビュー作から順番に読んできたつもりですが、ホラー系統のものはこれが初めてじゃないでしょうか。
この作家は学園・青春・少年という舞台設定が得意で、後味が悪いものを書かないという印象がありましたが、本作に収められているものには、ちょっと気色悪いというか辻村深月らしくない謎っぽい作品もあります。
2作目の「ブランコをこぐ足」ね。3作目の「おとうさん、したいがあるよ」もそうかな。
一方で、ラストの「八月の天変地異」なんてありふれたテーマなんですけど、この作家らしい爽やかな青春性に包まれることによって、感動的な余韻を残すファンタジーになっていますね。

「踊り場の花子」
階段の花子ではなく、踊り場としたところがニクい。花子さんはふつう、トイレに出るのですが、若草南小学校の場合は階段に出るのです。今の校舎ができてすぐに女生徒が1人階段から落ちて大怪我をしたとか、昔、音楽室の窓から飛び降り自殺した少女の霊だとか云われています。相川英樹は31歳、南小に赴任して4年目。夏休みを目前にした日曜日、3年2組の彼のクラスの青井さゆりがとある渓谷で遺体で発見されました。高所から転落したらしく即死でした。相川が夏休みの日直をしているとき、教育実習できていた小谷チサ子が忘れ物をとりに訪ねてきます。
そして、青井さゆりの死の真相について思いがけぬ真相を語りだすのです。
ラスト。あーあ、言っちゃったの意味は、相川が言った「聞けよ、頼むから聞いてくれ!」というセリフが、『花子さんにお願いごとをする時は、花子さんが望むものを与えること』という決まり事に抵触したからではないでしょうか。
自業自得とはいえ、無限階段って超コワイんですけど。

「ブランコをこぐ足」
ブランコ事故で亡くなった倉崎みのり(11)。彼女は、「コックリ様」とは違う「キューピッド様」というオカルティックな遊びで、シャーマンの役目、つまり10円玉を動かしていました。クラスの中でもパッとしなかったみのりはその役目を果たすことで有力な友だちの中に入ることができたのですが……
イマイチ読みきれません。彼女の背を押したものは何なのか。2人乗りだったとすると、ブランコをこぐ足というタイトルの意味もわかるのですが、それだと証言している子たちは嘘をついてることになるし、霊に憑依されたことよりも非常に恐ろしい結末になるので、どうかなとは思いますが。10円玉をみのり自身が動かしていたということになると……(ー_ー;)

「おとうさん、したいがあるよ」
母方の祖父母の家は田舎の山の中にある。限界集落みたいな感じ。祖母が認知症になり、家内は掃除もされず足の踏み場もない。大学生の私は、両親に頼まれ祖父母宅の掃除に向かうのだが、なんと犬小屋から近所に住んでいた女の子の死体が出てきた。行方不明となり、捜索されていた少女である。世話をされずほったらかしにされていた犬が少女を喰っていたのだ。他にも祖父母宅からは、押入れ、風呂場などから合計8体の死体が出てきた。
両親と私は、ひそかに死体を燃やそうとするのだが……
限界集落という異次元な世界だから、そこから離れると死体のことなどなかったことにしてしまえる。現実のことじゃなくなるという感覚ですね。そして日付は冒頭もラストもゴールデンウィーク中でした。私はおそらく夢だったというのではなく、この世界の隣の世界を垣間見てしまったのだと思いますが、どうでしょうか。

「ふちなしのかがみ」
表題作です。歳の数だけの赤いろうそくを灯して、鏡の間で、午前零時に振り返る、すると自分の未来の姿が見える……という都市伝説。ジャズ・クラブでサックス奏者をしている高校生、高幡冬也に惚れてしまった加奈子は、自分と彼の将来を占うため、真夜中の鏡の都市伝説を試してみました。すると、自分と彼にそっくりな少女が鏡に映り込んだのです。有頂天になった加奈子でしたが、それも束の間でした。ジャズ・クラブに恋人同伴で現れるようになった冬也の言動とともに、彼女と彼の恋愛は夢のなかでも破綻していきます。あるとき、未来を変えるには鏡に映り込んだ未来を殺す必要があると聞き、加奈子は鏡の中の少女を殺そうとするのですが……
これはまだわかりやすいかな。つまり、加奈子は高校生とかではなく、高幡優一郎の別居している正妻ですね。
鏡の中の少女は、優香、加奈子の娘ですから、彼女に似ているのは当たり前だし、冬也は優香にとって腹違いの兄ですから、これも似ているのは当然です。サイコですな。

「八月の天変地異」
小学校に入る前に知り合ったキョウスケのせいで、シンジはクラスに友達がいない。彼の母親に頼まれ、体が弱い彼と遊んでいるうちに、かつての友達には相手にされなくなったのだ。
キョウスケとともに爪はじきにされているうちに、シンジは“見えない友達”を生み出す。その見えない、ゆうちゃんはブラジルまでサッカーしに行ってたり、バレンタインにはチョコをたくさんもらったり、麓の小学校のヒーローなのだ。最初は羨ましがっていたクラスメイトたちだったが、しだいにシンジが嘘をついているのではないかと疑う。そしてそれが確信に変わり、シンジが夏休みを引きこもって過ごしているとき、天変地異は起こった。
なんと、シンジが空想で生み出した“ゆうちゃん”が本当に現れたのである。
こういうネタはありふれているのですが、この作家が書くとやはりハマっているような気がします。
一瞬、ゆうちゃんはセミだったのだなと思わせといて、実は実在していた、しかし3人の秘密基地が火事になり、キョウスケが炎に包まれたとき彼をかばっていたものはゆうちゃんの魂だった、という三段論法ですね。
心を素直にして、子供の頃に還った気分で読んでみる、辻村深月を楽しく読むにはこうした心構えが必要ですね。



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