「続・暴力団」溝口敦

暴力団という組織犯罪集団を合法としている国は日本以外にないそうです。
本書を読むまでは一顧だにしなかった考え方でした。そういわれてみりゃそうだな、と。
暴対法(暴力団対策法)は、これこれの経済的要求(シノギ)はするな、抗争になれば事務所を使用禁止にするぞといっていますが、これは逆にいえば暴力団を合法の存在として指定し、認めていることになります。
警察庁は結社の自由という憲法上の理由から犯罪組織の完全非合法化は困難であるとしていますが、つくづくおかしな国だなと思いますね。結社の自由が重要なのはわかりますけど、それだけですか?

2011年9月に出版された前作「暴力団」はベストセラーになったそうです。
私は前作を読んでいませんが、本書は二匹目のどじょうを狙ったわけではなく、暴排条例(暴力団排除条例)の全国的な施行を含め、吉本興業の芸能人引退問題や12年4月に起きた福岡での元警察官銃撃事件など、急激に展開する国内暴力団問題をふまえ、今後暴力団はどうなっていくのかというテーマに新しく書かれたもので、けして前作の知識を必要としていないと思います。冒頭に書かれているように「昨日の暴力団は今日の暴力団ではない」のです。

暴排条例の施行は、ただでさえ不景気な時代に暴力団を経済的に締め上げることになりました。
暴力団の周辺には、企業舎弟、フロント企業、暴力団関係企業、共生者、密接交際者、資金提供者などがいますが、暴排条例とは、暴力団の周辺層を浄化する、つまり縁切りさせることで暴力団を社会的に孤立させ、経済的なダメージを与える条例です。ところが、福岡では暴排活動に暴力団が逆ギレし、住民殺しや業者殺しが起きる事態になりました。11年、福岡県内で発生した暴力団がらみと見られる発砲事件は18件ありましたが、犯人検挙に至ったのはわずか2件だけです。暴排条例は暴力団排除活動の最前線に市民が立たされるものであり、逆ギレされて殺されるかもしれないのに間抜けな福岡県警がいったいどこまで市民の安全を守れるのでしょうか。

福岡で起きている対住民、対警察への実力行使は全国へ広がるのでしょうか。
一方で暴力団のマフィア化も懸念されています。外国の犯罪組織のように地下へどんどん潜るのですね。
あるいは半グレ集団と呼ばれる新しい形態の組織犯罪集団の存在も最近の事件でクローズアップされてきました。
彼らは多人数で襲撃します。たとえば20人で鉄パイプによってひとりを殴り殺したとすると、集団中の誰の打棒が致命傷となったのか検証は非常に難しくなり、傷害致死という比較的軽い刑期の懲役になってしまいます。
これは暴力団直接の攻撃に比べ、量刑が軽くて済み、ある意味有利な攻撃法なのです。

2011年末の暴力団員人数(準構成員含む)は約7万3百人で、2010年より約8千人減っています。
これに対し、警察関係人員の総数は約29万人。行政改革の中で右肩上がりに増え続けています。
著者は、結論として警察の暴力団対策を信じることは危険であるとしています。
だいたい、法律で暴力団の存在を違法であるとしさえすれば、ハナから暴排条例など必要がないのです
警察という一大権力組織の自家繁栄のために、暴力団は必要な存在であるというのですね。
企業や行政が暴力団対策をどんどん進めている現状ならば、警察の天下り先もまたどんどん増えているのです。
著者の言うことをすべて鵜呑みにするわけではありませんが、一理あると思います。
本書を読んでどっちも大嫌いになりました。








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この記事へのコメント

日本の暴力団の特殊性 - タケゾウ - 2012年12月19日 12:30:25

 外国で暴力団に近いものとすればマフィアがまず思い浮かびますが、義理や人情ではなくあくまでも利害関係で成立しているところが、暴力団とは異なるようなきがします。
 かといって、テロ組織のような大儀名分があるというイメージもないので日本の暴力団というのは異質な物だという気がしました。

Re - 焼酎太郎 - 2012年12月19日 18:12:52

タケゾウさん、こんにちは☆

暴力団はどうなっていくのでしょうね。
日本の宗教法人格を取得するのは極めて困難なので、外国の宗教団体の日本支部になろうとする方々もいるようです。そうすると、宗教儀式と称して客船を借り乱交パーティを主催したりその横でカジノなり開いたりするやもしれません。
警察にとっては、地下に潜られて今よりも見えなくなるより、世界的には異例でもヤクザという看板を出して市民の前にふんぞり返っていてくれたほうが御しやすいのは間違いないところでしょう。

コメントありがとうございました☆彡

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