「光」道尾秀介

全然期待せずに読んだからでしょうか、面白かったです(・∀・)
物語は7つの章で構成されており、冒頭と終章ではまったく雰囲気の違う、後にいくほど作者も読者もノッてくる、締りのいい青春冒険小説です。第1章を読んだときは、だるくてもう読むのやめようかと思ったんですけど……
最後まで読んでよかったです☆そして、道尾秀介の作品で笑ったのは初めてかもしれません。利一が悦子にアンモナイトのネックレスを作ろうとしているところで、不覚にも爆笑してしまいました。この作家の作品は常に沈鬱な雰囲気に満ちており(それが魅力でもあるのですが)、たまに軽いミステリーを書いても子供嫌いの秀才君が親戚の赤ん坊を無理にあやしているようなギクシャクとしたものを感じていたので、本作のバランスはよかったと私個人的には思いました。最後で、各章の終わりに太字で書かれた回想が誰のものであるのか気付かされるのですが、効いてましたね。結局、原稿を送ってきた彼のペンネームは、自分の名前とペットの亀の名前をもじった、市里修太(目次前に記載)ということでしょう。

第1章「夏の光」利一と慎司は小学校4年生。これから夏休みという終業式の日、帰り道でクラスメイトの宏樹が清孝を問い詰めているのを見かける。最近、目にしなくなった野良犬のワンダを清孝が殺したんじゃないかというのだ。写真家である宏樹の父が早朝に丘から降りてくる清孝を見かけ、その後撮った写真に丘から流れ落ちてくる赤い水のようなものが写っていたのである。清孝に両親はおらず、子供たちからキュウリー夫人と呼ばれている祖母と二人きりで住んでいる。キュウリー夫人は激しく清孝を擁護する。そして、利一は写真に写った赤い水の謎を解く。あまりにもしょぼい物語の冒頭であるが、ここからだんだんと面白くなる。
第2章「女恋湖の人魚」夏休み終了寸前。女恋湖(めごいこ)には伝説がある。しかも、教頭先生の話してくれた伝説は、この地に伝わっている民話の続きというものでとても怖い。「しかしこの怪談には続きがあって……」と云われるとドキッとする。それは髪の長い人魚の生首が自分の身体を探してさまよっているというものだった。そして利一と慎司、慎司の姉の悦子、宏樹と清孝の5人は水不足で水位の下がった湖で謎の洞窟を発見する。そこには、プレデターの血のような光るミドリゴケがあり、その奥には……
第3章「ウィ・ワァ・アンモナイツ」二学期、秋。土砂崩れのために通学不能となった慎司と姉の悦子が利一の家に泊まりに来る。翌日、いつものメンバーは土砂崩れの現場で学校の用務員のガニーさんからアンモナイトの化石をもらう。小金持ちの宏樹はそれよりいい化石を持っている、という。しゃくにさわった利一と慎司は宏樹の持っている化石よりいい化石を自分らで作ろうとする。
第4章「冬の光」クリスマス1週間前。清孝の祖母であるキュウリー夫人が山に連れて行ってくれと言う。景色のいい丘で夫人は、利一や慎司に、清孝や花火大会やホタルの話しをする。2年前、最愛の母を亡くした清孝は大泣きしたあと、川でホタルの舞う姿を見、悲しみを吹っ切ったという。夫人の謎の行動のわけは?
第5章「アンモナイツ・アゲイン」1月4日。5人に新たなメンバーが加わった。3年生の鷺之宮劉生。キュウリー夫人が遠い病院に入院することになり、親戚のおじさんと暮らし始めた清孝は3学期から転校することになった。彼らは清孝への餞別としてかつて作ったアンモナイトの化石がいいのではないかと考える。しかし劉生はそれならすごいものがあるという。清孝を除く5人は特急に乗って都会の百貨店を目指す。目当ては大理石!?その理由は……一ヵ月後、大事件を引き起こす鷺之宮劉生の鮮烈なデビュー。
第6章「夢の入り口と監禁」晩冬。空き家になった清孝の家をたまり場にした、いうものメンバー。宏樹の持ってきたアポロ11号の月面着陸の肉声が録音されたテープを聴きながら、互いの夢を刺激される。そのとき突如怪しいおっさんが現れ、ワンダを蹴飛ばす事件が起こった。あくる日、ワンダを捜索するため森に入ったメンバーは、行方不明になっていた劉生を発見する。しかし、彼を追っていた謎の男たちに連れられ、なんと女恋湖の人魚の洞窟に監禁されてしまうのである……なぜ!?
終章「夢の途中と脱出」人魚の洞窟に監禁された、利一、慎司、悦子、宏樹、清孝、そして劉生。6人を見張る3人の男たちの素性は?そして市の倉庫から盗み出された大量の花火の謎。すべては悪童・鷺之宮劉生の仕組んだ企みなのか。洞窟の奥で寒さと恐怖に震える6人に助けは現れるのか。彼らの立てた起死回生の奇策ははたして!?光へ、夢の光へ、時の光へ……ラストで語られる驚愕の真実。今まで読んできてよかったと心底思える、スリルに手に汗握る終章。そしてちょっぴりセンチメンタルな最後。


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この記事へのコメント

- 藍色 - 2013年10月08日 11:58:33

少年少女の人間関係が濃密でしたね。
決して大きなどんでん返しではありませんでしたが、
よく練られた物語の仕掛けは絶妙で楽しめる作品になっていました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

Re: - 焼酎太郎 - 2013年10月08日 21:15:51

あー、どうもどうも。
了解です。
ありがとうございました☆

トラックバック

粋な提案 - 2013年10月08日 11:50

「光」道尾秀介

あのころ、わたしたちは包まれていた。まぶしくて、涙が出る――。 都会から少し離れた山間の町。小学四年生の利一は、仲間たちとともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を体験する。 さらなる進境を示す、道尾秀介、充実の最新作! 真っ赤に染まった小川の水。湖から魚がいなくなった本当の理由と、人魚伝説。洞窟の中、不意に襲いかかる怪異。ホタルを、大切な人にもう一度見...

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