「残穢」小野不由美

「鬼談百景」(カテゴリーSF・FT・ホラー短編集参照)と本作「残穢」のコンボがこんなに恐ろしいものとは……
これはちょっと、やばいかもしれませんね。尋常ではありませんよ。
正直、こうやって記事書くのも嫌です。フィクションではないでしょ、これ。登場する知り合いのホラー作家とかも実在の人物ですしね。夫も同業の小説家であり、「幽」のことだろうと思われる怪談雑誌の話もあり、どうみても語り手は小野不由美自身ですよ。巻末にこの物語はフィクションですとも何も書いてくれていません。
幽霊なんて見たことないし信じていませんが、脳というハードディスクはそういう現象を起こすかもしれません。
本作がフィクション、ノンフィクションに関わらず、これを読んで恐怖を感じたという事実が、脳に克明に記録され、実生活に何らかの影響を及ぼす可能性はあります。
残穢(ざんえ)、という言葉は「時間の流れや呪術的な清めでも浄化しきれなかった残余の穢れ(けがれ)」という意味で使われており、穢れとは、尋常ではない「死」による怨念の汚染ということだと思います。
人間が住んでいる土地には確実に過去の住人がいたはずであり、前住者の前にはさらに前の住人がおり、その前にはさらに以前の住人がいました。もちろんどこかで何もない原野に行き着くはずですが、そこに至るまでどれだけの人間がそこに住み、どんな生活をしていたのでしょうか。多くの人間が住んでいた以上、時には不幸な死、無念を残す死もあったかもしれません。もしもそうした無念な想いが未来に影響を及ぼすとするなら……
穢れは穢れの連鎖をよび、残穢の根元がどこにあるのかわからないときに、いったい何ができるのでしょうか。

きっかけは久保(仮名)という女性読者からの手紙でした。
ライターである彼女が自宅のマンションで仕事しているときに背後の和室で何かが畳を擦る音がするというのです。
そしてあるとき、彼女はその音の原因が、現実に存在しない垂れ下がった着物の帯であることを見てしまいます。
そして、誰かが昔にこの部屋で縊死したのではないかと疑うのです。
作者はここである一致に気づきます。それは久保さんの住所でした。作者は何年か前に同じマンションの住人からの怪異が書かれた手紙を受け取っていたのです。久保さんは204号室、その手紙の主は401号室でした。
その手紙の書き手は屋嶋さんといい、内容は「鬼談百景」の第34話『お気に入り』と同じものです。怖いので書きません。いよいよ、このマンションは怪しいと思った作者と久保さんは調査を開始するのです。
そのマンション、仮に岡谷マンションは首都近郊のベッドタウンにあり、駅から徒歩15分、築8年、鉄骨コンクリート4階建て1フロア5室。やがて、久保さんの前住者は何かがあって204号室を退去したあと自殺していたことがわかりました。しかし、それは久保さんが部屋の怪異に気づいてから後のことでした。
さらに久保さんの調査によって、岡谷マンションに隣接している、木造3階建ての狭小住宅6棟で構成される岡谷団地でも5年7ヶ月で8人も居住者が入れ替わるなど、何らかの怪異が発生していることがわかったのです。
岡谷マンションと岡谷団地の土地には過去に何があったのか?時間をかけ気の長い調査によると、岡谷マンションが建つ前には小井戸というゴミ屋敷、松坂家、藤原家、根本家(藤原家の土地分譲)があったことがわかりました。一方、岡谷団地のほうは後藤家(のちに村瀬家)、川原家(最後に稲葉家)、政春家がありました。
うちマンションのほうの小井戸家、松坂家の2軒の土地はかつては高野家でした。そしてそれは昭和30年ごろ、高野家の奥さんが娘の結婚式の直後に自殺していたのです。高野家は一周忌をすますと転出していました。
この自殺が現代の怪異の原因か?違うのです、自殺した奥さんも原因不明の怪異に悩まされていたのです。
調査はさらにこの土地の時代を遡り、大正11年創業で終戦の翌年全焼した金属工場とその従業員の長屋での事件、さらにはその工場が建つ前にあった吉兼家という家の謎にまで迫るのですが……
これ以上は書けません。やばいです。具体的な事象のひとつは「鬼談百景」の第90話『欄間』もそのままの内容で出てきます。

年を重ねるごとに逆の意味で便利になるのは、すぐ忘れてしまうという脳機能の劣化です。
はやく次の本を手にとって、脳をフォーマットしたいと思っています。




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