「偉大なる、しゅららぼん」万城目学

万城目学(まきめまなぶ)、初めて読みました。後味の爽やかな青春ファンタジーです。
読み始めはなかなか馴染みにくく、紙質も薄いのでページがめくりにくく、100ページくらいで、なんだこれえ、面白いのかこれ?、もう読むのやめるかあ、と投げ出しかけていたのですが、だんだんと引き込まれ、ところどころに洒落が効いているのも心地よくなってきて半分くらいから一気読みしてしまいました

日出涼介は、高校入学のため、琵琶湖の湖東と湖北のちょうど境目にある小さな街、石走(いわばしり)にある日出家の本家に居候をすることになります。
なんと日出本家は、日本で唯一、江戸時代から現存する本丸御殿“石走城”で実際に生活しています。
涼介にとって親戚のおじさんである、当主の日出淡九郎は、日出グループを率いる財閥のリーダーです。
同い年である本家の御曹司、淡十郎と同じクラスで新しい高校生活をスタートした涼介ですが、入学式の日にいきなり棗(なつめ)広海という男子のクラスメイトに殴られるはめになります。
実は、日出家と棗家は琵琶湖沿いのこの地で千年以上の間、いがみあってきた宿敵同士の間柄であったのです。
日出家と棗家の間でいったいどのような確執の歴史があったのか?
それがファンタジーなのですが、涼介もただ高校進学のために本家のある石走にやってきただけではありませんでした。十歳の誕生日に、日出家の秘められた真実を知らされた彼は、家系に宿る不思議な“力”を修養するため、石走城内にある不念堂で日出家六代目師範藤宮濤子(通称パタ子、パティー)による訓練を受けていたのでした。
それを持つ日出家の人間の名前の一字に「さんずい」が与えられるという、その“力”とは何か。
日出家の力ある人間は、人の体の6割を占める水を動かすことにより、他人の心に入り込み相手の精神を操る力があるのです。対する棗家の人間は同じように水を操り、他人の心に入り込み相手の肉体を操る力があるのでした。
いずれの力も聖なる琵琶湖から授かったものであり、両者とも「湖の民」と自称しているのです。
ところが、両家の対立で物語が進行するかと思いきや、予想ならぬ第三者が介在してきます。
それは、新しく高校に転任してきた校長でした。そして彼の出自は、かつて日出家に城を乗っ取られた石走藩藩主速瀬家の子孫だったのです。
琵琶湖を巡る壮大なサイコキネッシス・スペクタクルが展開され――

滋賀県琵琶湖。ものすごく特殊な土地なのに地味ですよね。石走は架空の地名らしいですが。
はじめて琵琶湖が舞台の小説を読みました。なんでも、琵琶湖ができたのは40万年前であり、通常、湖の寿命が何千年か何万年であることから考えると、琵琶湖は世界でも特殊な湖であるらしいです。
民俗的にも、もっと馴染まれていていいはずですし、もっと何かの題材になってもいいはずでしょう。
万城目学は、「プリンセス・トヨトミ」「鹿男あをによし」など関西を舞台にした小説が自身得意のラインですが、さすが琵琶湖も上手にファンタジーにまとめあげた、ということですね。
クライマックスからラストにかけてのミステリーもよかったです。
映像になるでしょうね。ただ、淡十郎とグレート清子のキャスティングは難しいかなあ。


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この記事へのコメント

- 藍色 - 2015年10月30日 15:51:50

奈良県の次にお気に入りの作品になりました。
滋賀県の情景が浮かんでくるようなストーリーでした。
登場人物のキャラがみんなよかったです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

トラックバック

粋な提案 - 2015年10月30日 15:34

「偉大なる、しゅららぼん」万城目学

高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやって来た日出涼介。本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。実は、日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族。日出家のライバルで、同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海と、涼介、淡十郎が同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がる…! これまで京都、奈良、大阪が...

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