「最後の零戦」白浜芳次郎

白浜芳次郎(しらはまよしじろう)は、大正10年東京都に生まれ、昭和15年第56期操縦練習生。
本作では、昭和18年12月8日に第1航空戦隊(正規空母大鳳・翔鶴・瑞鶴)に配属され、翔鶴乗組みの零戦戦闘機隊パイロットとして活躍するところから始まりますが、元は開戦以降フィリピンにも進出した経験のある水上機パイロットです。
珍しいですよね。水上機から陸上機に転科して、なおかつ敵機を多く撃墜したエースパイロットは、白浜芳次郎以外にいないんではないでしょうか。
本書には、あ号作戦開始時(マリアナ沖海戦)、長官訓示で艦隊の艦上機、水上機のパイロットたちが空母大鳳に一堂に会したとき、かつての水上機時代の戦友が、白浜が戦闘機に転科したことを不思議がっていたという記述があります。操縦がへただったのに、というんですね。謙遜でしょうが、よほど零戦が向いていたのかもしれませんね。

承知のとおり、昭和19年6月19日のマリアナ沖海戦は、日本側の惨敗に終わりました。
日本海軍の科学の粋をつくした空母大鳳は、ただ一度の戦いに参加しただけで、その威力を発揮することなく、たった1本の潜水艦の魚雷攻撃と艦内ガソリンの引火誘爆で沈没しました。著者の母艦である、歴戦の空母・翔鶴もまたマリアナの海底深く散華しました。
著者は、第1次攻撃隊の直掩隊として出撃し、グラマン8機と戦闘、多勢に無勢ながら零戦の高い格闘性能を活かし、数機を撃墜します。しかし、燃料ギリギリで予定空域に帰還した著者の帰るべき母艦・翔鶴はすでになく、第2戦隊の飛鷹に着艦後、瑞鶴に乗り移ります。その後、上空直掩中に瑞鶴の甲板も被害を受け、命により不時着水、駆逐艦に収容され、そのまま内地へ帰還しました。
帰還後、大分基地で編成された653空・戦闘166飛行隊の先任搭乗員として務めます。
フィリピンのクラーク基地群に進出後は、宿敵であるグラマンと激しいつばぜり合いを繰り返しながら、上官、戦友を亡くしていきました。
11月7日にフィリピンの激しい前線から、再び大分へ帰還、最後の艦隊航空隊である松山の601空になかば志願して配属されます。艦隊航空隊は解散されますが、最後まで、著者には母艦航空隊としてのプライドと意地があったのではないでしょうか。艦隊パイロットは一目おかれていますからね。
関東防空、沖縄攻撃を遂行し、終戦。
関東防空では、P-51のスピードに度肝を抜かれますが、その前の沖縄攻撃では、グラマンを3機撃墜しています。
私が白浜芳次郎の名前を拝見したのは、「空母零戦隊」(カテゴリー海軍戦史・戦記参照)に書かれていたこのときの戦闘調書です。そこには6機撃墜し、ただひとり大活躍していたような印象でしたね。
もちろん、「空母零戦隊」の岩井勉と白浜芳次郎には面識があったでしょうが、どちらの著作にも、直接お互いの名前が述べられているところはありません。
が、長一飛曹(二飛曹)については珍しい名前でもあり、同一人物だろうと思います。
「空母零戦隊」では、長は白木の箱になっていましたが、本作を読むと特攻隊の直掩として硫黄島に出撃したことがわかりました。

なお、著者は戦闘時、絞りの絹で水色のマフラーを愛用していたとのこと。
珍しかったと思います。腕に自信があったのでしょう。
撃墜マークも愛機にはペイントされていたとの記述もありました。
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (16)
スポーツ小説・ミステリー (11)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (28)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (32)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (24)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (31)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (154)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (26)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示