「外事警察 CODE:ジャスミン」麻生幾


「まず、明確に申し上げなければなりませんが、当該の我が国民が、日本の法律を犯していることが明らかでない以上、ご協力はいたしかねます」
しばらく倉田を見つめていたカンは、「本国と話す時間を少しください」と言って部屋から出て行った。
ドアが閉まるのを見届けてから、陽菜が口を開いた。
「嘘をついています」 
「奴らは、嘘をつくことが仕事だ」

嘘をつくことが仕事である人間たちの群像を描いた諜報サスペンスが本作です。
前作「外事警察」(カテゴリー警察・諜報サスペンス参照)のラストでは、住本が有賀警備局長(本作では内閣官房副長官補)の弱みを握るシーンで終わりましたが、なるほど、本作を読み終えてみると、あんがいそのことも辻褄が合っていることに気づきました。
前作の事件から何年経っているのか明らかにされていませんが、ずいぶんと環境が変わっています。
まず、松沢陽菜はかつてのNHKドラマ版のように、三重県警から異例の人事で警視庁外事3課へ、さらに倉田(ZERO=警察庁協力者獲得工作本部指揮官)の指揮下にある公安総務課「第6担当部門」に抜擢されて1年。
このへんは、原作がドラマに逆影響された部分であると言えるでしょう。
さらに、驚くべき変化は、かつての泣く子も黙る外事3課作業班“住本班”が解散してしまっていること。
前作の南千住のテロ事件の責任をとらされて、ということらしいですが、金沢は犯罪被害者支援センターへ左遷、五十嵐彩音は運転免許試験センターへ、久野は警察学校教官へと飛ばされてしまっているのです。
そして、住本健司はといえば、多摩地区の警察署の警務課の閑職に飛ばされたあげく、前作ではあれほど登場した妻の絵美と離婚、さらに精神疾患を発祥したらしく、鉄格子つきの病室に収容されているという驚くべき始末。
いったいどうなっているのか……
物語は、高度な機密情報を扱う外事3課から膨大な内部資料がインターネットに流出するという(現実にありましたよね?)事件から始まります。
警察幹部に衝撃を与えたのは、内部の者による確信犯であることが明白なことでした。
つまり、よくある、ウィルスなどによる卑猥な画像データ流出、みたいな過失ではなかったのです。
そして、この流出した情報には、最も秘匿するべき“協力者(モニター)”の情報が含まれていました。
“協力者”とは前作にもよく出てきた単語ですが、簡単にいえばスパイ、あるいはその情報源みたいなものですね。
松沢陽菜は、倉田の命を受け、「流出者X」の正体を追います。
果たして、彼女の想像のように「流出者X」は、復讐の鬼となり、イスラム過激派と結託した住本健司なのか。
そして、捜査の過程で突き当たった、パキスタンと日本の二重国籍の姉妹。妹の名は英語でジャスミン。
彼女を追うNIS(韓国国家情報院)のリュ・ドヨンと、我が物顔に日本でのさばるFBI。
思いもよらぬ、ラスト前の“重要人物の死”の衝撃も鮮やかな、外事警察シリーズ第2弾です。

前作よりは、よほど読みやすかったですが、まだこの作家はへたくそな部分が多いです。
特に、時系列が本当にわかりにくいですから、難儀しました。
ただ、前作でもそうでしたが、ストーリーは抜群でした。
前作のキャラクターもたくさん登場します。村松官房長官が現職のままなのは不思議ですが……
金沢涼雅はじめ、元外事3課の生き残りメンバーも登場しますが、五十嵐彩音がちょい役だったのは残念。
久野秀真にいたっては、陽菜の回想によると登場しているはずなんですが、読んでいるかぎり存在が確認できませんでした。







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この記事へのコメント

No title - やっくん - 2012年02月19日 23:41:57

こんばんは、初めまして!
私も『外事警察』『外事警察 code ジャスミン』2冊とも読みました♪
渡部篤郎、尾野真千子、真木よう子の映画も期待が持てる!?
よかったら、こちらのブログにもいらしてくださいm(_ _)m

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