「荒ぶる波濤」津本陽

明治の外務大臣として有名な陸奥宗光の波乱万丈の生涯です。
私は、短編で読んだことがあるくらいでこの人のことをあまり知りませんでした。
読み終えてちょっとびっくりしています。変わってるなあ……
司馬遼太郎が書かなかったということは、嫌いだったんだろうな、と思います。
でも、坂本龍馬の舎弟ですし、かなり秀才ですし、荒っぽいこともしてますし、女にももてますし、監獄にも入ってますし、小説やドラマにぴたりの人物だと思いますがねぇ。
この小説自体はそれほど面白みはありません。よくある維新概論的なものにかなり割かれていますし。
しかし、勝麟太郎と知己になってからの龍馬らの行動がこれほどよく理解できる本は滅多にありません。
視点が違うのでしょうね。この作者ならではの維新の描き方、私は好きです。現実に近いと思います。

陸奥陽之助(のちの陸奥宗光、幼名牛麿、以後、伊達小次郎、陸奥源二朗と変名)は、1844年、紀州藩の伊達宗広の第六子として誕生しました。
父の宗広は、紀州藩で寺社奉行、勘定奉行など要職を歴任した優秀な人物でした。
当然、陽之助も大勢の家来にかしずかれるボンボンだったわけですが、紀州藩のお家騒動により、宗広は失脚、陽之助は9歳のころより各地を転々と居候するような生活に落ちぶれます。
この経験が、容易に他人を信用しない氷のような観察眼を持ち、胸のうちに暗い憤怒を燃やす、陽之助という人格を形成したといっていいでしょう。
藩を追われたため、陽之助は武術を習えませんでした。そのため逃げ足をみがいたそうです。
学業優秀のため、15歳で高野山江戸出張所の寺男という名目で、江戸に遊学します。このとき、維新の志士となる桂小五郎、板垣退助、伊藤博文らと交わりをもったようです。また、芸妓のヒモにもなります。
後の話ですが、刃渡り二尺五寸の両刃の直刀(反りがない。柳剛流のすね払い用の刀)を落とし差し、鼻梁が秀で色白、垢抜けた着こなしの陽之助は相当、もてました。勝の海軍塾でも、亀山社中でも陽之助は周りの同輩から嫌われていましたが、土佐らへんの田舎のじゃがいもからすると、生まれのよさからくる雰囲気と外見はしゃくに障ったでしょうね。
坂本龍馬との出会いは、京都において龍馬29歳、陽之助20歳のときでした。
運命の出会いだったのでしょう。龍馬の紹介で陽之助は勝麟太郎の海軍塾に入門します。
以後、蒸気船の操練、他藩との折衝、亀山社中から海援隊での活動、龍馬と陽之助は切っても切れない仲となり、陽之助という人物の一番の理解者は龍馬でした。また、陽之助に好かれる坂本龍馬という人物もやはり大層な人間だったのでしょう。
本作は、龍馬が暗殺され、陽之助ら海援隊が事件の下手人と睨んだ紀州藩士三浦休太郎のもとに斬り込むところまでで大体終わってしまうのですが、その後の陽之助の人生はまた面白そうです。
いろんなことを企んだんですね、この人。明治政府転覆とか(笑)
外務大臣になる前に、5年も禁固刑を受けて監獄でひたすら本を読んでいるというのもすごい。
人間はひたすら難しい性格だったんだと思います。
だけど明治30年、59歳で閉じたその短い人生は、百年以上経った今振り返ると、妙にとらえどころのない不思議な魅力で迫ってくるような気がします。
他の維新の英雄もそうですが、平和な世の中では、このような人間は出来てこないかもしれないですね。





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