「絆回廊」大沢在昌

大沢在昌といえばこれ、新宿鮫シリーズ第十弾、最新巻「絆回廊」を読みました。
はやいもので……初作「新宿鮫」が1990年に刊行されてから20年以上経つのですね(遠い目)
映画にもなりまして、観にいった覚えがあります。真田広之が「鮫島」役でした。それ以来、5年前の第九弾「狼花」までずっと読んでいますが、いまだに鮫島のイメージはあのときの真田広之で固定されています。
しかし、前作出てから5年もごぶさただったのですね。むしろそうなると、よく作者が出したなあとも思います。
読者は登場人物忘れていやしませんか?本作では、ところどころ過去を振り返ってくれるので、ああ、そんな話あったなあとか、鑑識の藪は撃たれたんだっけとか、おかげでだんだん思いだしてきます。
なかでもこのシリーズで忘れてはならないのは、鮫島の恋人である青木晶、ことあるごとに衝突してきた警察官僚の香田、ヤクザの真壁、新宿署生活安全課課長であり鮫島の唯一の味方である桃井、の4人じゃないでしょうか。
本作では残念なことになってしまうのですが……一番いなくなっては困るひとがいなくなってしまいます。今後、このシリーズがうまく続いていけるのか非常に心配ですね。

鑑識の藪が負傷から復帰したばかりであるということは、本作の設定は前作の「狼花」から何年も経っているということはないでしょう。少なくとも、「狼花」から「絆回廊」までの5年と云う隔日は作中ではありません。しかし、新宿鮫の世界の変化というか、犯罪の変化によって背景も確実に変化しているようですね。
犯罪集団にしても、暴力団の破壊性が薄れて、本作ではあたかも国際犯罪集団に翻弄されている伝統的な存在、というような扱いで書かれていますね。いまさらヤクザ対警察ではもうネタもないでしょう。
で、本作でクローズアップされる恐るべき犯罪集団は「中国残留孤児二世グループ」です。
この中国人でもない、日本人でもない、はた目も言語も境界が曖昧な存在は、そうであるがゆえにとらえどころのない不気味な敵という描かれ方をしていますし、作者のこのシリーズの新展開の意図もまた垣間見えるような気がします。
そして、22年の刑期を終えて出所したばかりの67歳の大男、この伝説の喧嘩師は、ある警察官を殺害することを生きがいとしており、国際犯罪集団とは正反対の古風な一匹オオカミとして、このサスペンスをさらに強烈に彩っていくことになります。
そして、晶がボーカルをしているバンド「フーズ・ハニー」に薬物使用疑惑がかかり、メンバーが逮捕や家宅捜索を受けるのです。交際相手である鮫島は現職警察官ということで、マスコミにも接触され、辞職もありうるところまで追い込まれてしまいます。また、香田は警察を退職し、内閣情報調査室の下請け機関で怪しげな活動を始めています。
様々な角度からのスペクトルがスパークする作者渾身の一冊で、シリーズ随一の衝撃度がありますが、やはり私的にほっとしたのは、新宿署の署長、副署長はじめ幹部も鮫島擁護でまとまったことでしょうね。
もう彼に最大の庇護者はいなくなってしまいましたから

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