「一私小説書きの弁」西村賢太

先日、新聞で朝吹真理子が藤澤清造の「根津権現裏」の書評をしているのを見、愕然としました。
自分と同じ回の芥川賞をダブル受賞した相手が、自分の作品ならまだしも、自分が世に出ることによって甦った70年以上も前のさして有名でもない作家の書評をしている、これが今の西村賢太ブームというものです。
ちょっとムカっとしますよね
どうしてこの作家にこんなに早く芥川賞を与えたのでしょうか。死ぬ間際でもよかったでしょう(笑)

本書はだいぶ読んでからわかったのですが、西村賢太が芥川賞を受賞する前に編まれたものであり、つまりそれ以前の雑文集というべきもので、地方新聞や文芸誌に掲載されたものを中心に、古いのは平成14年のものもあります。
どうりで、はじめからまたやたらと藤澤清造ばかりどころか、同じような内容が重複しているのには、本当に飽き飽きし、一瞬破りさってケツ拭き紙にでもしてしまおうかと思ったのですが、途中、石川の菩提寺にある藤澤清造の墓の横に「西村賢太之墓」が並んで建立されている写真を発見、思わず吹き出してしまったのです。
まだ生きているのに、その人の横に墓を建てるほど、殉じているのです。
どうしてこれほど煮詰まっているのか、本人の弁では、「非情だが滑稽、野暮なんだがスタイリスト、そしてかたくなまでの正義感をおのれの貫くべき美学と心得、一歩も引かなかった男、社会の底辺で何ひとつとして満たされるものもなく、惨めな雌伏を余儀なくされている男の、この世のすべてに対する呪詛の中、何か一瞬の死に花を咲かせる為だけに今を耐えつつ生きることを願うと云った、自滅の予感を孕んだ内容に、改めて再読してみて、これは自分の救いの神ではないかと思った」らしいのですね。そして、命日どころか月命日も北陸まで出向いて法要を行い、藤澤清造がそのおよそ十年間の作家生活で残した雑文含む二百五十篇程の著作を網羅した全集の個人刊行に邁進しているのです。
まあ、本人が好きでやっているのでいいのでしょう。ただし、本作の内容はちょっとひどいですね。
ようやくエッセイらしくなるのは、175ページくらいから。もうほとんど終わってる(笑)
正月の日記みたいなのは面白かったですが。その作風からしてちゃんと随筆書いたらちゃんと面白いと思います。私は芥川賞を取ってからの書きものだと思っていたので、それからすると本作はまったくの別物でした。
でも奥付見てびっくりですよ。21010年1月29日第一刷発行のこの本、2011年2月25日で三刷です
まさに、西村賢太、いま熱いみたいですね。

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