「チルドレン」伊坂幸太郎

短編集かと思って読んだんですが、五つの作品が繋がってひとつの物語になっているようです。
それぞれの初出は「バンク」小説現代02年4月・「チルドレン」小説現代02年11月・「レトリーバー」小説現代03年9月・「チルドレンⅡ」小説現代03年12月・「イン」小説現代04年3月、となっています。
ですから2年に渡って創られた物語なのですね。
これはあくまでも私の想像ですが、「バンク」という短編は出来がいいですし、登場人物もしっかりキャラを作っていたので後々話を広げていこうという意図はあったのではないでしょうか。
ただ、第五話の「イン」は、この世界を単行本にするにあたり、これまでの四つの作品ではボリューム的に中途半端なので、これまでのエピソードを踏まえて話をひねり出したのかとも思えました。
まぁ違うでしょうけどね(笑)
面白いといえば面白いんでしょうけど、まったくサスペンス風のスリルがないんですよね。
当然で、それが伊坂幸太郎のリズムなんでしょうが、ぽやんぽやんしてて眠たいんですよ。
陣内、とは五つの物語を通じて登場するメインキャラクターですが、どうにも理解出来ず好きにもなれませんでした。ただ、永瀬という盲目の青年とその盲導犬べスの描き方は巧いです。
この作家の悪い癖である「オシャレめいたウンチク」が少なかったことも良かったと思います。

「バンク」 これは単独でしっかりしてる面白い話です。銀行強盗に人質にされた陣内、鴨居、永瀬。「お面」を被らされます。人質は彼らを含めて12人。犯人は2億円を奪った後、人質を解放して忽然と消えさります。永瀬の謎解きは面白いです。陣内の唄ったビートルズの曲はあとの物語で明かされます。
「チルドレン」 舞台は家庭裁判所。なんと陣内(31歳)は家庭裁判所の調査官になっていました。後輩に武藤という調査官がおり、彼の担当する万引き少年とその父の話です。これもなんというか、伊坂幸太郎ならではの、ぽやんとしたミステリーで面白いのかつまらないのかよくわからない話です。
「レトリーバー」 陣内(22歳)、永瀬、優子(永瀬の恋人)、ベス(永瀬の盲導犬)が高架歩道のベンチで体験する不思議な物語。書き忘れてましたが、本作は仙台が舞台です。高架歩道のベンチとはあまりよく想像できないのですが、この3人と1匹がいるベンチの周りに、時間が止まったかのように2時間ほどほとんど動いていない人々がいました。それが謎です。
「チルドレンⅡ」 再び家庭裁判所です。陣内は32歳、武藤は少年犯罪から離れて家事(離婚など)調停の仕事をしています。「飲みに行こうぜ」「何を飲みにですか?」「そんなこと具体的に言うのかよ」このふたりの会話なかなか面白かったです。武藤の担当する離婚間際の夫婦と、陣内の担当する不良少年のほのぼのとしたミステリー?と云えるのかな。
「イン」 銀行強盗事件より1年後。これはとってつけたような話で、さきに私が推測しましたが、これまでの話で陣内が父親を殴ったエピソードがあったのですが、そのときの話です。盲目の永瀬の描き方は巧いです。ただそれだけの話かと思ってますが、どうも陣内の父が連れていた女子高生が気になります。この女子高生は優子のグッチのバックを盗もうとした娘だと思われます。とすると陣内の父は個人タクシーの運転手ですね。陣内が思っていたように援助交際だったのでしょうか、それとも……
どうも引っ掛かるんですよね、ひょっとしたら私は重大な何かを読み落としているのかもしれません。
ただ、そんなに気の利いたフェイントのない作家だとは思っているのですが。

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