「同期」今野敏

 刑事vs公安・組対(っ ` -´ c)

 もはや警察小説のトップランナーと云えるのではないかと思う今野敏の人気シリーズ(全三作)の第一弾。
 私は「隠蔽捜査」シリーズは熱心に読んでいますが、それ以外は数冊しか読んだことがありませんでした。
 単発よりもシリーズ物が多い方なので、一度ハマるとずっと面白いですから、この「同期シリーズ」が最近完結したと聞いたので、ちょうどいいと思ってチャレンジしてみることにしました。
 結果、正解ヾ(⌒▽⌒)ゞ
 期待をはるかに上回る面白さでした。ほとんど一気読みですね。
 若干気になる点(蘇我の意図がわかりにくい)もありましたが、警察小説伝統の刑事対公安という構図に外れはありません。
 そして今回は、新たに組織犯罪対策部(組対)が構図に仲間入り。
 かつては刑事部で捜査課と融通の効いた組対(マル暴)ですが、独立した今はむしろ「対組織」という点で公安に近い性質を持っているそうです。
 事件の実像、真犯人を追う刑事と、事件事案よりも組織の把握、壊滅を担う公安と組対。
 しかも、周知されている通り日本一の捜査能力を誇るのが警視庁捜査一課ですが、日本の諜報機関のなかで最も実績と行動力のあるのも実は警視庁公安部なのです。警察庁の警備局などは情報を集約しているに過ぎません。東京都の警視庁公安部こそ戦前の特別高等警察の流れを汲む日本のCIAなのです。
 この両者が同じ特捜本部に入った日には、同床異夢も仕方ありませんわ。

 簡単にあらすじ。
 主人公は宇田川亮太・32歳の巡査部長。念願だった警視庁刑事部捜査一課に配属されて1年。
 新入りなので「ボン」と呼ばれ、教育係である51歳の警部補・植松義彦に怒鳴られたり雑用をさせられたり目の回る忙しさの中、宇田川の属する5係(名波孝三警部=班長)は、指定暴力団同士の抗争と思われる事件を端緒とした組事務所へのウチコミ(家宅捜索)の助っ人に召集されました、当然ながら主導するのは組対課です。
 このウチコミの途中、突然事務所から逃げ出した組員を追いかけた宇田川は、あろうことか白昼に銃撃されてしまいます。
 この危機を身をていして救ってくれたのが、偶然通りかかったという同期の公安警察官・蘇我和彦でした。
 蘇我が体当たりしてくれたおかげで、発砲者は逃走しましたが、宇田川は間一髪助かったのでした。
 お互いに所轄時代、宇田川は蘇我とたまに飲みに行く仲でしたが、万事にやる気の無かった蘇我がなぜか本庁の公安部に引っ張られて以来、宇田川が本庁勤務になっても滅多に会う機会はなかったのです。
 それがこの奇跡。しかし刑事は偶然という言葉を嫌います。なぜ蘇我はあの場面にいたのか?
 さらにこの事件の3日後、突然蘇我は懲戒免職になり、まったく行方知れずになってしまいました。
 そして捜査の合間を縫って蘇我の行方を追っていた宇田川に、なぜか公安の横槍が入ったのです。
 ひょっとしたら、異例のことではあるが蘇我は潜入捜査をしているのではないか?
 しかも籍を警察から抜いてまで・・・重大で危険な国家の安泰に関わる公安事案。
 真偽を確かめるすべも無いまま、宇田川に発砲した組員が殺害されたことにより特別捜査本部が立ち上がり、5係も招集されることになりました。そしてそこは、公安出身の組対課長が牛耳る、刑事はただの小間使いにされる帳場でした。あくまでも事件を暴力団同士の抗争事件の範疇におさめようとする組対。抗争はともかく殺人の真犯人は組員とは限らないという立場で一から捜査したい刑事。相容れぬまま両者が火花を散らす中、なぜかこの事件の中心に蘇我和彦が重要参考人として浮かび上がったのです・・・

 続編が楽しみ。
 すでに全三作でシリーズは完結しているのですが、もったいない、もっと長くて良かった。
 安保マフィアなんて初めて聞く言葉だったし、蘇我の潜入事案などちょっとややこしいところはあったのですが、水戸黄門的なわかりやすさと、若い刑事の分を超えた活躍のカタルシスは気持ちよかったです。
 この作者の格好をつけないところもいい。けっしてハードボイルドではありませんからね。
 等身大の青年が失敗しながら活躍するというのが、いいんだよ。
 宇田川を囲む面々も渋い。植松の同期で下谷署のベテラン部長刑事土岐達朗がいい味だしてた。
 警視庁のお偉方もだいぶ顔出したし、次はどんな展開が待っているのか、まったく新しい事案が始まるのか、今から読むことが待ち遠しい思いです。


 
 
 
 

 
 


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この記事へのコメント

- ひだまりさん。 - 2017年09月12日 20:03:02

お疲れさまです (*^^*)
私も同期シリーズ好きなんです。
3作目をいま図書館に予約しているのですが、順番待ちでもうしばらくかかりそうです ^_^;
早く読みたい。

今野さんの警察小説はハズレないですよね。
隠蔽捜査の竜崎さんや、このシリーズの植松刑事&土岐刑事とか、渋くてカッコイイなと思ってしまいます (*´`)

Re - 焼酎太郎 - 2017年09月13日 15:08:36

おつかれさまですヾ(⌒▽⌒)ゞ

冒険の世界から無事帰ってこられたようで何よりですね(笑)

私は隠蔽捜査くらいしか知らなかったので、逆にこれからが楽しみです。
読みやすいですわ。またいいのを教えてください |ω・`)ノ|Ю  |

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