「凍てつく街角」ミケール・カッツ・クレフェルト

 北欧デンマーク発の犯罪サスペンス。
 外国物特有の気味悪さはありますが、いったん物語に入り込めば抜け出すことは難しいほど面白い作品です。
 主人公は休職中の刑事。ミステリー小説とも冒険小説とも云えるでしょう。
 デンマーク、スウェーデンというあまり馴染みのない国が舞台なので、それらの風俗も興味そそられますね。
 マイナス10度というのだけは、あんまり伝わらなかったけど。
 ちなみに、1デンマーククローネは約17円で、1スウェーデンクローネは約13円です。
 読む前に覚えておくと、便利かと思います。

 さて、あらすじ。
 主人公は、デンマークの警察官で、1年間休職中であるトマス・ラウンスホルト。
 彼は優秀な刑事でしたが、9年間連れ添った最愛の奥さんが自宅で強盗に殺害され、アル中の廃人寸前になっています。この事件は遺留品もなければ目撃者も見つからず、いまだ未解決事件のままです。
 トマスはふたりで暮らしたアパートメントにいるのは辛く、港に係留したオンボロヨットで犬のメルフェと暮らしていました。
 もうそろそろ貯金も尽きる、かといって復職する気はない、ヨットを売らざるをえないかという時、友人でパブを経営しているジョンソンからある頼み事をされます。店の掃除をしてくれているリトアニア移民のおばさんがとてもいい人なのだが、彼女のたったひとりの娘が2年半も前から行方不明だというのです。
 気が乗らないまでも、以前の職場まで出かけて情報を聞いたトマスでしたが、この娘マーシャの手がかりはありませんでした。これで手を引こうとしたトマスですが、母親とジョンソンの懸命の慰留で独自捜査を続行することになります。
 すると、マーシャは実は売春まがいのことをしており、ロシア人のボーイフレンドの借金の肩代わりとして、北欧ギャングのボスのひとりであるスラヴロスに売られ、デンマークから連れ出されてスウェーデンのストックホルムで売春をさせられているらしいということが明らかになりました。
 このとき、ストックホルムでは6人の売春婦が殺害され、死体が剥製にされて町外れのくず鉄置き場に“展示”されるといいう、身の毛のよだつ凄惨な未解決事件が発生していました。殺された売春婦たちは、生きたまま太ももの血管からホルマリンと塩酸と亜鉛を注入されて防腐処理されるという残忍な方法で殺害されていました。
 マーシャの救出は間に合うのか!? そもそも彼女は生きているのか?
 スウェーデンというアウェーで何の権力も武器も持たないトマスの行き当たりばったりな捜査が始まるのですが・・・

 巻末の訳者(長谷川圭さん)あとがきによると、本作はトマスを主人公としたシリーズ物の第一作らしいです。
 続編は今のところ本国では刊行されているようですが、日本ではまだのようですね。
 面白かったので、ぜひとも出してほしいですな。ハヤカワさんお願い(人∀・)タノム
 トマスの殺された奥さんエヴァの事件の真相も気になりますし。
 まあしかし、主人公は弱っちかったね。とてもハードボイルドではない。やられてばっかり。ただのオッサン。
 トマスの齢は正確にわかりませんが、40代後半から50代なかばくらいですかねえ。
 主人公がムチムチ鉄壁というのも、あまり昨今は流行らないか。こういうほうがいいのかも。
 それはともかく、作品全体を暗く覆う北欧の犯罪事情はどうだろう。怖いね。
 やっぱり東欧系の方々が移民としてやってきているのはいいとしても、様々な問題が生じているのでしょうか。
 そこらへん、極東の住民として想像もしていなかった事実が明らかになるというのも社会小説のようで良かったです。
 移民問題というとイギリスやフランスに目が行きがちですが、超福祉国家というイメージしかないデンマークやスウェーデンでも、大規模にブラックマーケットがあると思うと(あとホームレスの記述の多さにびっくり)、生半可なイメージを持つのは無責任だなあと思うわけですね。


 
 
 
 
 
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