「蠕動で渉れ、汚泥の川を」西村賢太

 作者自身の悲惨極まりない青春時代を投影した私小説、北町貫多17歳の頃の物語。
 貫多20歳の頃の「疒の歌」が面白すぎたので、ハードルが上がったのは気の毒でしたね。
 物語はともかく、ちょっと作者自身の腐りきった本性を反映しすぎているかなあ。
 今回はやたら人間の外見や生まれを馬鹿にする貫多の物言いが目につきますが、以前まではなかったことです。
 それほど、作者の地が出ているといいますか、本性いや馬脚を現したというところでしょうね。
 私小説とはいいながら限りなく創作に近いものが文芸の実態なのですが、本作の場合はむしろ、こうまでして作者の汚い心の中をそのまま世に晒すかという、ある意味主張、随筆ですな(笑)
 青森の方がこれ読んだら怒るんじゃねえの。

 昭和59年の年の瀬。
 北町貫多が母と暮らしたアパートを飛び出して1年半。寛太は17歳になった。
 11歳のとき、父の性犯罪に因って江戸川区の生育の町から夜逃げ同然で母と寛太と姉は町田に越した。
 以来、彼は歪んだ。
 中学時代はクラスの女子の大半を夢想の中で犯しておきつつ、実際の校内では一人超然とした、何者にも眼中にないといった風情で終始無言の不機嫌顔を貫き通し、もって孤高のローンウルフを気取った貫多は、学歴偏重志向が高まりのピークを迎えつつあった昭和58年に、高校を入試することさえせず中卒のまま、母と姉を殴りたおす家庭内暴力の末にマスをかいて逐電した。
 都内でひとり暮らしを始めた貫多であったが、生来の怠け癖と腐った根性はさらに磨きがかかり、やがて日雇い人足のクチにもあぶれるようになり、三畳一間のアパートの家賃を踏み倒したまま二度も追い出されてしまう。
 さらには、生まれて初めてできた恋人の悠美江に、わずか数ヶ月でフラれた。
 後がなくなった貫多。再び鶯谷に舞い戻り、三畳一間一万円で室を得、長続きしそうな仕事を探す。
 まもなく中卒17歳の彼の目にとまった求人は、御徒町の洋食屋。給料は週払い、食事付きである。年齢も問われない。
 浜岡という人のいい中年男性がオーナーコックをしている自芳軒という安洋食屋だ。
 面接にいった貫多は、即採用される。
 経営者の浜岡は、女人渇望の色乞食でしかない貫多という人間の本性を見誤ったのだ。
 最初こそ健気に頭も低く働いていた貫多だったが、新居を家賃滞納で追われ、自芳軒の物置部屋に住み着くに及んで、夜な夜な店のビールをくすね飲んだり、更衣室に残された女子店員の衣類で手淫を試みたりと、乱暴狼藉のかぎりをつくすようになる。

 はい。ほんと最低の野郎ですね。死ねばいいと思いました。
 何度も繰り返される孤狼、ロンリーウルフという表現は、「疒の歌」で生まれたものです。
 おそらく作者も気に入っているのでしょう。
 「疒の歌」でみられた可愛げが、今作の寛太には見られません。年齢的には逆のはずなのになあ。
 小説すばる連載。3回飛んでる(爆笑)
 西村さんのエッセイでは、確かすばるだけ仕事もらってなかったんですが、編集長が変わって仕事を頂いたはずです。それが、これだったんですかね。
 北町貫多モノとしては、中の下の出来だと思います。
 もともと、ストーリーなど関係ない雑文書きですからね。
 同じようなネタの使い回しで、文章に工夫を凝らして面白く読ませるという。吉本の新喜劇と同じです。
 それでも、半分くらいは自身が実際に経験した事実でしょうか。
 ネズミとレストランの話は本当だと思うので、洋食屋で作者がバイトしていたときが事実あったのでしょう。
 登場人物については、おそらく現在作者が日常に接している人間(編集者など)をデフォルメしただけだと思います。
 蓑本や高木なんて、さもありなんでしょう。
 作品を己のストレス解消に使うという、ほんと西村賢太という人間は面白いカス人間ですよ。


 
 
 
 
 
 
 
 
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