「比ぶ者なき」馳星周

 なんだこれ、つまらん。
 上古時代、藤原氏繁栄の基礎をつくった藤原不比等を主人公にした馳星周の歴史小説なんですが・・・
 なんの盛り上がりもないままに終わるんですよ、ボリュームが500ページ近くあるのに。
 まるで、日本史の教科書を読んだ気分。小説じゃないわ、これは。
 つまんねえ。バカじゃねえの。
 もう馳星周はノアールしかできないんだからさ、「はんかくせえ」って鉄砲撃ってやりゃいいんだよ田舎ヤクザが。
 何をトチ狂って歴史小説なんか書いたのかな。利口ぶったのかな。熱でもあったのかな。
 私はまた、藤原不比等の時代がそのままノアール化して馳ワールドになるのかと思って、楽しみでドキドキしながら読み始めたのに、ちっともそういうふうにならない、巻末の参考文献を抜書きにした棒読みの、ただの古代史概論じゃん。
 勉強したら、誰でも書けるわこんなの。
 まあ確かに、あまり馴染みのないマイナーな日本史の勉強にはなりましたが、それでもねえ。
 私は官報でも広告の隅でも知らない学校の卒業アルバムでもなんでも読む活字中毒なので、最後まで文字をひたすら追うことができましたが、これは途中で挫折する方が続出するだろうね。
 はなはだ期待はずれでした。

 それでも勉強になったのは確か。
 知らないことだらけでしたから。
 逆にエンタメ化しないで歴史に忠実であってくれたからこそ、学んだ実は大きいとも云えます。
 小説としてはまったく面白くないですが、歴史の参考書としてはいい。
 続編があったら読みますよ。結局、長屋王は自死するんだよね。そこまでの過程は興味ありますから。
 聖徳太子(厩戸皇子)は実は蘇我馬子の業績を分散させるために英雄化された人物だというのも本当なんでしょうね。
 当時の政争の具として実在の歴史を捏造したのが日本書紀であるというのも、それにずっと携わってきたのが藤原不比等であったならば頷けますなあ。持統天皇が、天照皇大神?
 それくらい、朝飯前でやるでしょ。藤原不比等ならば・・・

 不比等(ふひと)という名前は、比べる者がいないほど傑出したという意味だそうです。
 元は、「史」で「ふひと」だったんですが、文武天皇(軽皇子)が即位に尽力してくれた彼に名を贈ったのです。
 不比等は、中大兄(天智天皇)の右腕であった藤原鎌足の子ですが、天武天皇に疎まれ、31歳になるまで朝堂に出仕できませんでした。その間、ひたすら燃えたぎる怒りと野心をたぎらせていたのです。、天武天皇が崩御し、持統天皇の子息である草壁皇子の舎人をしていたことから「なんとしても草壁皇子を天皇に」ということで持統天皇と結託して頼りにされ、草壁皇子が帝位に就くことなく亡くなってしまってからは、草壁皇子の子息で持統天皇の孫になる軽皇子を帝位に就けることに辣腕を奮ったのです。当時の大王(おおきみ)は、父から子への踏襲が当たり前ではありませんでしたから、日本書紀を編纂することによって天皇は万世一系の世襲であったとする建国神話を創造し、天皇の世襲に根拠を与えようとしました。
 さらに彼は、天皇を生ける神として政(まつりごと)から遠ざけ、実際の国家運営は重臣の合議制とする太政官制度を敷くことによって、己及び藤原氏の栄華繁栄を図ったのです。
 つまり、朝堂の権力者として天皇を補佐しながら、実は己こそがこの国を統べていたのです。
 また父である鎌足が中大兄なきあと一代で失速したため、不比等は自分が亡くなった後も藤原氏が衰退しないように工夫しました。藤原氏は皇族でありませんが、天皇に女子を嫁がせて子供を産ませ、その子供が天皇になればまた藤原氏から女子を嫁がせることを繰り返して、事実上皇統を乗っ取ろうとしました。謀反を起こさずにこの国を盗むのです。その裏では暗殺や政略結婚など様々な権謀術数を駆使したのです。本作はそれがテーマです。藤原不比等一代記ですな。
 天皇でいえば、持統天皇、文武天皇、元明天皇、天正天皇と4代に仕えました。
 天正天皇(氷高皇女)だけには嫌われましたが、それでも表立って排斥されることはありませんでした。天皇が嫌いながらも粗略にできないほどの存在にまで達していたのです。

 まあしかし、昔は女性の天皇が多かったのですねえ。
 元明天皇から天正天皇は、母から娘への踏襲ですよ。今なら信じられない成り行きだなあ。
 それほど時代が荒れていた、定まっていなかったということなんでしょうけども。


 
 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

- 大町阿礼 - 2017年08月23日 02:41:01

WEB小説「北円堂の秘密」が今夏の隠れたベストセラーと知ってますか。
グーグルで「北円堂の秘密」と検索すればヒットするので無料で読めます。世界遺産・古都奈良の興福寺・北円堂を知らずして日本の歴史は語れない。日本文化発祥地の鍵を握る小説なので、ご一読をお薦めします。

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (27)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示