「秘密解除 ロッキード事件」奥山俊宏

 今から40年前に発覚したロッキード事件。
 時の総理大臣・田中角栄が米国の諜報機関CIA(中央情報局)と密接な繋がりのある軍需メーカーから5億円の賄賂を受け取ったとされるこの事件は、1976年に発覚し、戦後最大の疑獄と言われています。
 本書は、2009年から7年かけて、著者が米国の国公立図書館や各大統領図書館(米国では各大統領に関係する書類の図書館が建つ)などで粘り強く発掘した新たな文書をもとに、新たな視点(主にアメリカ)からこの事件を見直したものです。

 もう事件から40年も経つので、事件関係者の多くは死亡し、秘密が解除された文書も多いそうです。
 それでも、事件発覚の核心となった米上院のチャーチ委員会の資料がすべて開示されるのは、あと10年かかります。
 何が書いてあるんですか。
 名前が伏せられたままの、カネをもらった6人の日本政府高官ですか。
 まあ、興味がまったくないとは言い切れませんが、6人で10万ドルでしょ。
 田中角栄への180万ドル(5億円)と比べたらねえ、屁のさきっぽみたいなもんですよ。
 事件単体の謎解きとして見ると、その6人の名前ですね、そこに自民党幹事長だった中曽根さんが含まれているかどうかとか(おそらくないような気がする)、1972年8月31日のハワイでの日米首脳会談でニクソン大統領が田中角栄に直接ロッキードをセールスしたのかどうかとか、そんなへんしか興味は残っていないでしょうね。
 むしろこの事件の真相を探るということは、本書の意図もおそらくそうですが、現在にまで至る戦後日本外交史、日米関係史の隠された闇の一端を垣間見ることによって、戦後70年の日本の真の姿を俯瞰することにあるんじゃないでしょうか。
 そういう意味で本書を読むと、ちょっと難解な本ですが、とても有意義で面白いかと思います。
 田中角栄の後の首相である三木武夫さんが、まさか政界刷新を考えていたなんて夢にも思いませんでした。
 私もそうですが、今では多くの方がこの事件をリアルタイムで知らないでしょうけどね、ロッキード事件という名前くらいは聞いたことあるんじゃないかと思うんです。
 これを機会に、今の日本の姿が出来上がったわけを考えてみるのもいいかもしれません。
 思いの外、今よりも戦後30年しか経っていない時のほうが、アメリカの言いなりじゃなくて丁々発止のやり取りをしていることがわかるかと思います。
 田中角栄なんて、中国との国交正常化をアメリカと歩みを同じくせずに6年も先立って成し遂げましたからね。
 今じゃ考えられないと思うんだよなあ。実際、アメリカは失望していたらしいですから。
 日本を主軸の基地にして、アメリカは台湾(日本もアメリカも中国の正統政府は台湾だけであるとして国交を結んでいた)、フィリピン、韓国などの国防を担っていたのですから。それが日本は台湾と断交して敵であった中国と国交を結んだのですからね。
 かといって、アメリカの虎の尾を踏んだばっかりに、田中角栄が罠にハマってロッキード事件が起きた、というのとは違います。
 確かに本書を読む限り、アメリカ、特に大統領補佐官で後に国務長官になるキッシンジャーは蛇蝎のごとく田中角栄を嫌っていました。福田赳夫とか大平正芳が好きだったんだね、アメリカは。
 といっても計算してこんな大仕掛けが、そんな器用なことがアメリカにできるはずがないと思うんですよね。
 ロッキード事件自体の発覚からして、ニクソンが失脚したウォーター・ゲート事件の副産物ですから。
 ウォーター・ゲート事件がなければ、どうなっていたかわかりません。きっと歴史は変わっていたでしょう。

 もっとも、アメリカという国自体が一枚岩ではありませんが・・・
 日本から見るアメリカの本体は、やはりCIAなのかなあ。
 気色悪いんだけど、最悪の流れにはならなかったと言うべきでしょうか。
 これを読むと国益って何なんだろうと思います。
 結局は、戦前の日本もそうですが、セクショナルインタレスト(組織的利害)なんじゃないですか。
 もっとも、100%無私で国益を考えるというのも、なんだか人間臭くない。
 1970年で日本の対米貿易黒字が12億ドルだったのが、翌年には32億ドルもの黒字になった、これはとてつもない貿易不均衡だから、是正のために、日本よ、アメリカの飛行機を買ってくれ、そうかわかった、国産のほうがいいけど買ったる。これは別に悪いことではないと思いますよ、私は。5億円はまずいけどビール券くらいなら許容範囲じゃないですか。
 田中角栄と三木武夫を足して二で割ったような首相が日本の指導者であったならば、40年後の今日は、違った日本が見れたかもしれませんね。



 

 
 
 

 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示