「ハング」誉田哲也

 ジウ・シリーズで読み残していた一冊を読みました。
 先日、どちらも映像化された人気シリーズである「姫川玲子シリーズ」と「ジウシリーズ」のコラボ作品が二冊同時刊行されました。偉業ですわな。大変面白かったですし、けっこう売れているようです。
 読むにあたり、片方の「姫川玲子シリーズ」しか読んでいなかった私は、急遽それまで手を付けていなかったジウシリーズを一気に読んだわけですが、東弘樹の出ている作品を時系列に追ったつもりが、一応ジウシリーズとして列せられる本作を読みこぼしていたことが、最新作の「硝子の太陽」コラボ二作品を読む直前に明らかになりました。
 ショックでしたが、仕方ありません。泣く泣く、本作を飛ばしたわけです。
 一応、内容の想像はついていました。おそらく、歌舞伎町セブンのジロウの話だろうと。
 伊崎基子と知り合うことになった、彼の登場の仕方がいささか突飛でしたからね。
 おそらく、作者はジロウのことを過去の小説で書いていたのだろうと。それが、たぶん本作じゃないかなと想像していました。
 彼は警視庁捜査一課の刑事だっと基子(ミサキ)に語っています。
 そしてためらいながら、彼が基子に告げた本名「ツハラ・エイタ」。
 彼こそが本作「ハング」の主人公、復讐のために警察組織を飛び出して憤怒の炎となった、津原英太そのひとなのです。
 読み返す形になりましたが、ジウシリーズで殺された仲間の無念を晴らすために真犯人の心臓を生きたまま握りつぶしたジロウの、知られざる過去を振り返ることができて、これはこれで順番としては逆になったものの良かったのではないかと思いました。
 ジウシリーズでは口数が少なく、ほとんどしゃべらないジロウがどうしてそうなったのか。
 彼の秘密は、本作にあったのです。

 少しあらすじ。
 警視庁捜査一課第五強行犯捜査特別捜査第一係は、迷宮入りの事件の再捜査や他の係の応援を任務とする“遊軍”で、俗に特捜と呼ばれる。この中に、56歳のベテラン主任警部補・堀田次郎が率いる『堀田班』がある。
 植草、小沢、津原、大河内。堀田班の4人の巡査部長は、齢が30代で近いせいか、みんな仲がいい。
 およそ警察小説で、みんなで仲良く海水浴の場面から始まる物語を、他に知らない。
 しかし、それは言うならば、後に控える悲しき凶行の反動ともいうべき前触れだったのだ・・・
 きっかけは、昨年に赤坂で発生した宝飾店店主刺殺事件。
 今年の4月、犯人逮捕に至らないまま捜査打ち切りとなったこの事件だが、それから5ヶ月後に遺品から防犯ビデオが見つかり、堀田班が再捜査を行うことになった。
 首尾よく真犯人と思しき人物の自供を取り、一転解決かと思われたが、裁判で突然被疑者が警察の強引な誘導尋問によって嘘の自供をさせられたと告白し、メディアに大きく取り上げられて、堀田班は天国から地獄の苦境に立たされてしまう。
 そして堀田班は、所轄の刑事課に異動になった堀田と津原以外は地域課の交番に飛ばされ解散させられる。
 さらに、被疑者から名指しで告発を受けた植草は交番で首を吊って自殺を遂げた。
 津原英太と警察に嫌気がさして退職しフリーライターになった小沢は、植草の自殺に疑問を感じ、その原因が赤坂事件の真相にあると見て、秘密裏に再捜査を敢行する。
 その結果、“吊るし屋”と呼ばれる、見た目が自殺と全く変わらないように人間を吊るすことのできる謎の殺し屋の存在を嗅ぎつける。しかし、それは警察の上層部の虎の尾を踏む禁忌への入り口だったのだ・・・

 出だしがいつになく牧歌的な雰囲気で、堀田班自体も、ふつう警察小説で書かれるようなギスギスした関係にない仲の良さがあって不思議でしたが、これは後半の落し込みの伏線でした。
 捜査一課というと、必ずデスクに足を投げ出して鼻毛を抜きながら後輩や同輩の失敗をあげへつらう人格が破綻した部長刑事がひとりは描かれるものですが、これはなかったのでね。
 すべて、悲劇に向かっての落とし穴掘りだったのですね。
 単体でもそこそこ面白かったですが、ジウシリーズとの接点は、細かいところ(新聞のSAT隊員死刑判決など)を除けば、東弘樹も出てきませんし、ジロウこと津原英太のみであったように思います。
 このときで津原は33歳なので、歌舞伎町セブンでは、40歳前くらいということになりますか。
 そのまま警察をふけて歌舞伎町で何やらしておるのなら、身元がバレそうなものですけどね・・・



 ジウⅠ
 ジウⅡ
 ジウⅢ
 国境事変
 歌舞伎町セブン
 歌舞伎町ダムド

 
 
 
 
 
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