「孤独の価値」森博嗣

 担当編集者から「先生の今の隠遁生活について何か書いて下さい」と言われて、出来上がったのが本書。
 森博嗣といえば、「すべてがFになる」がテレビドラマにもなりましたが、国立大学工学部の助教授という立場から一転して人気小説家になり、いまでは執筆のほうも一日一時間と決め(ほぼ引退)、田舎に引きこもって見ようによっては世捨て人のようにひっそりと棲息されている方です。いや、そういう世の中のしがらみを離れた暮らしを楽しんでいる仙人のような方です。
 その森博嗣が解く、「孤独」の価値。人とのつながりを欲しない生き方。
 生きづらいと感じながら人生を送っている方には必読の書かもしれませんね。

 私は決して好かれるタイプの人間ではなく、もちろん友人が救いを求めれてくればできるだけ助力し、人と接する機会も多いほうなんですが、私はみんなでワイワイするよりひとりで本を読んで酒を飲んでいるほうが好きです。
 つい最近、靴下よりズボンを先に履いてしまったことにイラッとし、行く寸前だった飲み会をプイとキャンセルしました。
 気難しい人間です。それを周囲に認知されています。
 だいたい、みんなでいるのも楽しいですけど、ずっと遊んでいられるわけでもなく、疲れますからね。
 楽しい時間には終わりがあります。祭りのあとは寂しいです。
 ですから、本書で著者が言わんとしていることは、だいたいわかります。
 ラインとかは絶対しませんね。
 どうして人間は他者とこれほどまで繋がりたがるのだろうと、不思議で仕方がありません。
 存在を認めてもらいたいのか、生きていることが不安なのか。
 人なんてそれぞれに、他人との距離感が違うもんでしょう。
 学校のクラスメイトだって、そうじゃないですか。人の心に土足で踏み込むのもいれば、神経が細かいのもいますよ。
 それをみんながみんな同じツールでつるみあえば、疲れるのもいるでしょう。
 特に、女子なんて大変だと思いますわ、人付き合いがね。

 著者いわく、孤独というのはイメージ的に悪いだけで本当は価値のあるものだということです。
 孤独とは、人間にとって実に大切で価値のある状態なのだと。
 なぜなら、孤独でなければできない人間活動があるからです。
 芸術的な創作は、孤独でなければできません。
 また、孤独であるからこそ物事を突き詰めて考えることで、自分が囚われている得体のしれない感情を克服し、真の意味で自由になることができます。言い換えるなら、人間的にレベルアップできるということでしょう。
 旅と一緒ですな。友達と一緒の旅は楽しいけど、何も得るものがない。自分一人で旅をすればいろんなことが勉強になるし、自分の能力を量ることもできます。
 たまには一人になって、じっくりと思索にふけってみるのもまたよしということでしょう。
 孤独ほど楽しいものはありませんよ。人間だけが到達できる精神の高みです。

 昔の村社会ならともかく、現代社会は人が孤独に生きることを受容しています。
 ハード面では、科学技術の発展が、社会と共生できる孤独を可能にしました。
 ソフト面では、結婚をして子供を作ってという人生が人の幸せだというきめつけが崩れかかっています。
 人には色々な生き方があるということが、受け入れられてきているのです。
 社会と自分の関係が不明瞭であり、自分が社会に認められていない、あるいはドロップアウトしたという錯覚に陥っている方、得体のしれない孤独感に苛まされている方、引きこもってしまいたい方、人付き合いが苦手な方、堂々と孤独を楽しんで生きるべきでしょうね。
 本当に他者が必要であるとき、あるいは必要とされるときは、自然とそうなるべきものです。
 孤独死という言葉がマスコミで騒がれていますが、死ぬ前は一人生活を謳歌していたかもしれません。
 だいたい、孤独死のどこがいけないのか。
 世間が勝手に作った、孤独=マイナスというイメージに、騙されないことです。


 
 
 
 
 

 
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この記事へのコメント

孤独と個読 - びょうせい - 2016年01月29日 12:57:28

こんにちは。いつも記事を拝読しています。

孤独への想い、自分もまったくそのとおりです。
それを声高には言いませんが、常に違和感を持っています。
森博嗣に限らず、小説家や芸術家などにはそう思っている方が多いのかもしれませんね。
今までもこれからも、自分は孤独に個読が基本です。

Re - 焼酎太郎 - 2016年01月29日 22:19:52

光鋲記のびょうせいさん。
こんにちは。
ちなみに私の愛車はSDRでした。孤高でしょ(笑)

個読とはうまいことをおっしゃる。
私は四国に住んでいるのですが、本当に久しぶりに雪が積もりました。
本来ならそういうときは本を肴に熱燗で一杯、個読最高雪しんしんというところなのですが、
今回はちょっと怖いくらいに雪が降ったので、それどころではなかったですね。
人間とはやはり心持ちでしょうかね。

コメントありがとうございました☆




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