「墓標なき街」逢坂剛

 前作から10年ぶりくらいですか?
 根強い人気を誇る百舌シリーズ第6弾。最新です。
 まあ、はっきり言いまして、本巻に限っては大して面白くはありませんでした。
 このシリーズは3か4くらいが最高に面白すぎたので、その反動もあるかと思いますが・・・
 前作の「ノスリの巣」の内容を忘れていれば、これを読んでもなんのこっちゃわからないと思います。
 単体でダメであれば、これまでのシリーズのキャラクターのその後を読むことだけが目的になります。
 事実上主人公になった大杉や美希のその後の様子とか。
 10年ぶりの新作が、単体でダメとは残念ですけどね。
 ストーリー的には、躍動感もドキドキ感もなく、なんら面白みを感じられませんでした。
 百舌という、人間の首の後、盆のくぼという部分を千枚通しで刺し殺す殺し屋の登場がこのシリーズの発端だったのですが、すでに何代目かわからぬほど模倣殺人犯が現れ、すでにこのシリーズにおいて“百舌”とは象徴にすらならないほど意味がなくなってきたように思います。
 百舌と倉木らとのスリリングな死闘と、あっと驚くミステリー性がこのシリーズの醍醐味でしたが、おそらく続編が出るごとに物語に裏を作らなくてはならなくなったからでしょう、現在は検察権力を掌握しようとする政治家のドロドロとした野望だけが目につくようになり、何が敵で百舌は何をしたいのか背景が複雑でわからなくなってきました。
 ただ、仕舞い方から察するにまだ続きそうな気がするので、一応、そちらに期待したいと思います。

 とにかく本作に繋がる流れですね、これがわからないと話になりません。
 長崎の鷲ノ島でしたか? そこでの死闘は読んでいるうちにだんだんと思い出してきました。
 作者も親切にそういう書き方をしています。なんせ10年ぶりですからね。
 大杉も美希も死にかけました。新聞記者の残間というのもいました。
 民政党の幹事長馬渡文平は、美希の上司である警察庁特別監察官の津城俊輔に射殺され、津城俊輔は真犯人だった警察官の紋屋貴彦に殺され、紋屋貴彦は体中に銃弾を撃ち込まれ、喉を串刺しにされて死にました。
 馬渡は、警察を治安警察庁と刑事警察庁に分けようとするなど、警察権力の掌握を狙っていました。
 この日本で警察権力を掌握することは、神に近づくようなものです。独裁者になろうとしていたのですね。
 津城俊輔はそれを阻止しようとしたということになります。
 事件の証拠は警察によってすべて抹殺されました。紋屋の死体すらなくなりました。
 もうひとつ、警察内部の策謀で、州走かりほという美人刑事と朱鷺村琢磨というキャリアが事件を起こしたのですが、残念なことにこちらの記憶が私にはほとんどありません。
 本作は、前作からおそらく10年後くらいですかね。
 大杉の娘でシリーズが始まった当初は不良少女だった東坊めぐみ(離婚により母方の姓。警視庁生活安全部の刑事になっている)が28歳ですから。前作では大学生だったと思います。
 40歳を間近に、東都ヘラルド新聞の編集委員に出世した残間龍之輔が、かつての上司で現在は雑誌の編集長をしている田丸という男から百舌事件の原稿を依頼されることからこの物語は始まるのですが、ここで州走かりほと朱鷺村の密談テープというのが証拠に出てくるんですよねえ。これに関する記憶がないために、私には機微がわかりません。
 極論を言えば背景は政治家同士の足の引っ張り合いなのですが、このテープの行方を巡って田丸は殺されてしまいます。
 そしてもう一筋ありまして、武器輸出三原則に違反した非合法輸出の告発が残間に対してあったこと。
 これは武器そのものではなく、部品という形で製品を北朝鮮なりに輸出している会社があるというものでしたが、これに関して調査事務所の大杉が関与することになり、そこで外為法などを扱う生活経済特捜隊に属する娘の東坊めぐみとバッティングすることになるわけです。
 倉木美希は、死んだ尚武や上司の津城の衣鉢を継いだかたちで警察庁長官官房の特別監察官という地位にいますが、大杉と付き合っているために、自然とこのストーリーにに巻き込まれていくことになります。

 百舌の狙いがわからなかったのは、私に州走かりほの記憶がないためでしょうか。
 彼女(彼)が、姉の復讐のためだけに殺人をおかしているのかどうかまったくわかりません。
 ただ、メキシコ料理店「ソンブレロ」で大杉と相席になった女性は、百舌だったと思います。なんとなく。
 あと気になるところは、美術学校の講師で大杉の手伝いをしている村瀬正彦と、美希を影で助ける警察きっての情報屋・内田明男。このへんは、次作で絶対に出てくるでしょうね。


 
 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (94)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (15)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (15)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (14)
海外SF・FT・ホラー (18)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (31)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (33)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (23)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (20)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (13)
文学アンソロジー (55)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (153)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (38)
アンダーグラウンド (47)
事件・事故 (40)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (25)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示