「ルポ 拉致と人々」青木理

電撃的に行われた日朝首脳会談。
顔が強張った小泉純一郎首相と金正日国防委員長の固い雰囲気の握手。
あの日は2002年9月17日でした。
不思議に、もう8年も過ぎたのかとも思うし、まだ9年も経ってないのかとも思うんです。
懐かしいようで新鮮な歴史的な日。私はテレビにかじりついて観ていましたよ。
「家族会」の記者会見の様子も覚えています。
本書は、あの日以前から日朝首脳会談を経て爆発的にメディアを席巻した「北朝鮮拉致事件問題」の裏側を暴いたルポルタージュです。

著者の青木理(あおきおさむ)はフリージャーナリスト、元共同通信社ソウル特派員です。
冒頭の北朝鮮国内の取材風景などからして相当の北朝鮮通なのでしょう。後の話になりますが、田原総一郎が司会を務める番組のパネリストもしていたようなので、その世界では有名な人なのでしょうが、私は知りませんでした。
読後の感想はまず「おい、これホントかよ?」といった感じです。
こんなこと書いてやばくないのでしょうか。著者に身の危険はないのでしょうか。
国内情勢により、今はめっきりと「拉致事件」関係の報道は減っているし、10年近く前のことが主体なので、こういう暴露ルポも許されるのでしょうか。
少なくとも本書を読むかぎり、あの当時、メディアリテラシーという言葉はまだ恒常的ではなかったですけど、ある方向へある権力に国民全体が引っ張られていたのだなあと思うわけです。もちろん、私もテレビで観て、新聞や雑誌で読んで、あの当時では平均的に怒ったり嘆いたりしていたように思うんです。
それがですね、悲しいかな、本書を読めば個人の欲が絡んだ色々な裏があったようなんですね。
結局、現代コリア研究所という組織が中枢を占めた「拉致被害者を救う会」が思想的に極右翼であり、「拉致被害者家族会」もその思想に多大に影響され、日朝首脳会談の開催によってブレークし、政権やマスコミにまで影響を及ぼすほど権力を持ってしまったのですね。それで問題を起こしてしまった人もいる。
もちろん家族が拉致された被害者の感情が正義であるのは間違いない、ただし、本書はそれ以外のところにも正義はあったのだが被害者問題が大きくなりすぎてしまい、その他がかすんでしまったと。そして被害者の意識の方向性は黒幕に操られていたと述べています。そして北朝鮮との拉致関係の交渉は全く進んでいません。
本当に、報道されていることを鵜呑みにはできないと改めて思いました。
だから本書だって鵜呑みにはできないという論理も成り立つのです。
何が正義で、何が正しい結果なのか、国と個人の価値観は違います。この事件の解決にはあとどれほどの時間が必要なのでしょうか。

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