第二級活字中毒者の遊読記

酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

Category: 時代人情小説・ミステリー  1/4

「春山入り」青山文平

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 「約定」(2014年8月刊行)の文庫本化にあたって改題されたものが本書「春山入り」。 江戸時代中後期の武士の暮らしを題材にした人情味豊かな短編が、6篇。 別の著作にも収録されている「半席」がそのまま入っており、不思議でしたが、作者あとがきによると、後に連作小説集となった「半席」の一作目が「約定」に元から入っていたためであるそうです。 そういう作品が生まれた由縁を読者に知っておいてもらいたいという...

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「花を呑む」あさのあつこ

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 弥勒シリーズ第7作目になります。 捻くれ者で剣呑な人物ながら、難事件解決の推理が冴え渡る北定町廻り同心・木暮信次郎。 数え切れぬほどの人を斬った過去を抱えながら、江戸屈指の小間物問屋の主となった遠野屋清之介。 そしてふたりの間で揺れ動く、ベテラン岡っ引き伊佐治と小料理屋梅屋の暖かい家族。 今作も、彼らの前に血塗られた怪事件が・・・ うーん、前作の「地に巣くう」を読んだあと、これからこのシリーズが...

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「励み場」青山文平

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 上り調子の時代小説作家・青山文平の新作です。書き下ろし。 なんとも艶のある出だしは、それもそのはず、今までになかったように思われる女性視点の書き出しです。 いい意味で青臭かったデビュー時とは、趣が違ってきたようにも思います。 人気作家の雰囲気が出てきましたね。 今が一番乗っているかもしれない。増長はご免ですが、辛気くさいのもジリ貧だからねえ。 プロットのひねりは毎度のことですが、今回のはね、格別...

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「かけおちる」青山文平

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 御改革真っ只中の寛政2年(1790)。 幕府言うに及ばず、日の本の各藩の台所は火の車である。 もはや米には頼れない。新しい産業が早急に成り立たなければ、藩が潰れてしまう。 柳沢藩4万石も、ご多分に漏れない。 しかし、北国のこの小藩に、光明が訪れた。 叩き上げの地方巧者(農政実務に強い)である執政・阿部重秀が、頭の固い家老の反対を押し切り、3年越しで、大量の鮭が遡上する河川を人工的に作り上げたのだ...

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「半席」青山文平

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 直木賞受賞後第一作になるのかな? ミステリー仕立て時代小説連作集。 全6篇。後にいくほど面白いです。 読みはじめは「これはちょっと」と思ったんですが、なかなか。さすが直木賞作家。 江戸市井の雰囲気も身近に感じられますし、御公儀の仕組みも「こんなのあったの! へえー」ってビックリさせられるし、やたら詳しいし。人情を背景にしながらも、後のほうの話は展開自体に迫力があって、思わず唸らされました。 事件...

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